【作品情報】
作品名:討ち入りたくない内蔵助
著者:白蔵 盈太
ページ数:260
ジャンル:時代小説
出版社:文芸社
おススメ度 : ★★★★★★★★☆☆
内蔵助の気持ちが分かる度 : ★★★★★★★★☆☆
こういう人におススメ! : エンタメ忠臣蔵を読んでみたい
松の廊下での刃傷事件の情報がもたらされると、籠城だ仇討ちだといきり立つ藩士たち。
内蔵助は彼らをのらりくらりとかわしながら、「藩士どもを殺してたまるか! 」とお家再興に向け画策する。
しかし、精一杯やっているのに四面楚歌。
やってられるか、こんなこと! 筆頭家老の責任なんて投げ出せたら楽になれるのに……。
既存のイメージを覆す、人間・内蔵助を等身大で描く新たな忠臣蔵。
新解釈の忠臣蔵。
大石内蔵助は昼行燈などと言われながら、心の内に本当の思いを秘めて討ち入りに向けては用意周到に進めてきて、いざ討ち入りも完璧に果たした忠義の男。
そんな風にとらえられているのが一般的な感じでしょうか?
しかし今作の内蔵助はちょいと違う。
筆頭家老の立場に生まれてしまったばかりに、討ち入りたくなんかない、死にたくなんかない、藩士たちも死なせたくないのに、逃げ出すこともできず責任を全うする。
急進派をなだめつつ、どうにかお家再興することで討ち入りをしなくて済むように進めようとするが、誰もその苦労を解ってくれない。
ただ自分たちの思いを言うだけで、具体的なことは何も考えられていない他の藩士たち。
責任だけを内蔵助に投げて、やりたいことを口にするだけ。
うーん、そりゃ確かに内蔵助も泣き言の一つも言いたくなりますね。
あくまで一人の人間くさい男として内蔵助を描いている。
実際に内蔵助がどのように心の内で考えていたかなんて誰も分からないわけで、本作のように考えていたとしても全く不思議ではない。
むしろ、普通の男として気持ちがわかるくらいではなかろうか。
内蔵助中心で登場人物たちもあまり多くは出さず、だからこそ読み進めやすくもある。
本当は四十七士でもそれなりに逸話があったりするのだけれど、その辺はスッパリ省いて内蔵助の心の内メイン。
コミカルであり、歴史が苦手な人でも楽しく読めるのではないかと思います。
この作品はこれで良いと思いますけれど。
こういう中で四十七士の他の人の思いとかももう少し読めると楽しかったかも。
堀部安兵衛と高田郡兵衛、あとは大高源吾くらいでしたもんね、目立ったの。
※郡兵衛は討ち入り参加していないので四十七士ではないですが
