【作品情報】
作品名:勇者は使い捨てられて
著者:右弐 沙節
ページ数:328
ジャンル:ファンタジー、エンタメ
出版社:KADOKAWA
おススメ度 : ★★★★★★★☆☆☆
熱血度 : ★★★★★★★☆☆☆
こういう人におススメ! : 勇者モノの変わった視点の物語を読みたい人
異世界の征服を企む魔王軍と、地球人・異世界人連合軍の『魔王戦争』が終結してから五年。
元エリート勇者の高砂峰秀は、“勇者”を必要としない平和な地球で就活に苦しんでいた。
ある日、峰秀は戦時下の上官・御子柴美玲からテロリスト化した『無貌勇者』を壊滅させる任務に就くよう勧誘される。
任地に赴く峰秀を待っていたのは、かつての戦友・阿知波典華だった。
「ボクたちを忘れた社会なんて、破壊しよう。ボクにはキミが必要だ、峰秀」
――使い捨てられた勇者を突き動かすのは、大義に殉じた勇者を弔う復讐か、勇者が目指した平和そのものか。
中途半端に平和になった世界の勇者。
そういったところに焦点をあてている。
主人公の高砂峰秀はかつて勇者として魔王を倒すため異世界にて幾度も死線をかいくぐってきた。
ところがあと一歩で魔王を倒せるというところで魔王との和平交渉が成立し、平和な世界が訪れる。
平和な世界において、かつて勇者だったことなど優位に働くどころかむしろ役に立たない。
勉強もしてこなかったし、現代の生活にもなじめないし、ようやく馴染んできたところで就活に苦戦するし。
一般の人々は、勇者たちがどのような戦いをしていたのか知ることもなく、平和を享受するだけ。
それが悪いわけではないし、それを望んで戦ってきた。
もし、魔王を倒して平和を手にしたならば、それにも耐えられたのかもしれない。
だけど魔王は生きていて、多くの仲間たちが死んでいった。
仲間たちは何のために死んだのか。
自分達は何のために戦ったのか。
そこまでして戦って戻ってきた世界で、なぜ、こんなにも苦しい思いを味あわなければならないのか。
異世界で戦った多くの勇者たちが平和な世界に馴染めず、切り捨てられ、傷ついていく。
そんな世界を憎み、破壊しようと考えたのが、かつて峰秀と肩を並べて戦った勇者・阿知波典華。
典華に、共に戦おうと誘われる峰秀が選んだのは--
いつ頃からか、魔王を倒したあとの勇者を描く作品が増えましたね。
「フリーレン」のヒットの影響でしょうか。
その中で、独自の色を出すにはということで考えられた作品なのでしょうか。
テーマとしてそこまで変わったものではないとは思います。
戦争があるからこそ英雄になる、戦争に特化した知識や能力を持つ人が平和な世の中では凡人、なんて。
それこそヤン・ウェンリーなどから言われていたわけで。
ただ、そこに納得できない側の視点から描かれた物語。
平和を望んでいたはずなのに、その平和を自らぶち壊したくなるほどの憎悪。
テーマが重くなるだけに、ありそうでなかったのかな。
シリーズとして続くのでしょうか?
この巻である意味綺麗に終わっているといえば終わっており。
ここから更に盛り上げることが出来るのか? というのがちょっと懸念。
