【作品情報】
作品名:生贄のジレンマ 上巻・中巻・下巻
著者:土橋真二郎
上巻342ページ、中巻317ページ、下巻318ページ
ジャンル:エンタメ
出版社:アスキーメディアワークス
おススメ度 : ★★★★★★★★☆☆
生存確率 : ★★☆☆☆☆☆☆☆☆
こういう人におススメ! : デスゲームものってなんだかんだで好きなんだよね、という人
「今から三時間後にあなたたちは全員死にます。ただし生き残る方法もあります、それは生贄を捧げることです」
こんなことを告げられた、とある高校の卒業を控えた三年生。
最初は信じていなかった生徒達も、やがて『犠牲』が出ると否応なしにこのろくでなしゲームに巻き込まれていく。
校庭に作られた底の見えない穴に落ちて自らを『犠牲』ことで、同じクラスのクラスメイトを助けることが出来る。
逆にいえば、誰かを『生贄』に捧げることで自分たちは助かることが出来る。
だけどそう簡単に自己犠牲できるわけもない。そんなクラスには『生贄投票』というシステムが与えられ、生徒達の手で自ら投票することで『生贄』、即ち『犠牲者』を選ぶことが出来る。
皆を助けるため自ら進んで『犠牲』となるもの。
投票で『犠牲』を選ぶクラス。
脱走を試みるもの。
果たしてこのゲームの結末は?
土橋真二郎といえばデスゲーム。
そんな氏の作品の中でも個人的なお気に入り作品がコレ。
いやー、自分が同じ立場に立ったらおそらく何もできないでしょうね。
『犠牲』になんてなりたくないし、だからといってクラスメイトを『生贄』にもしたくない。
そんな人間は生き残れなさそうですね(笑)
同一のデスゲームを上中下と続けていくと読み手としても飽きてきそうなものですが、この作品はうまいこと変化をつけてきています。
最初は団体戦です。クラス対抗戦といってもよいかもしれません。『生贄』となる生徒を投票で選ぶクラス、逆に投票などせず自分たちの矜持を第一とするクラス、紛糾するクラス、生き残るために各クラスは必然的に戦略を求められる。
しかも『生贄』は1回で終わりというわけではない。時間ごとに定期的に『生贄』は必要となり、どうするのかクラスの方針によりゲームが進む。
途中から個人戦へと移っていく。徐々に少なくなる残された生徒達、個々の行動、発言でまた分かれていく。
そのまま個人戦で終わるはずなのだが、その後に展開がまた変わり、個人なんだけどそれだけではなくなっていく。
巻ごとにそのような変化をもたせて飽きがこないようにしているのは展開的にも良かった。
個人的ベストシーンは上巻のラスト。
ここ読んだときは、そのシーンが瞼の裏に浮かびました。
これはエグイけれど、それがイイ! みたいな。
そしてラストはもやっとして終わる、読後感よくない系。そんなのも好きです。
で、結局このゲームは誰が何のための目的でやっていたんでしょうね。
って、デスゲーム系でそんなこと訊くのはタブーってことなんでしょうけれど、その辺はぼかされていたというか。
まあ、なんでもかんでも明確にすればよいわけでもないので、この作品においては、もやっとして読後感が良いとは言えないのが良いところでもあるのでしょうけれど。
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