【作品情報】
作品名:六人の嘘つきな大学生
著者:浅倉秋成
ページ数:368ページ
ジャンル:ミステリ―
出版社:KADOKAWA
おススメ度 : ★★★★★★★★☆☆
就活生の気持を思い出す度 : ★★★★★★★★☆☆
こういう人におススメ! : 気持ちよく騙されたい人
成長著しいIT企業「スピラリンクス」が初めて行う新卒採用。
最終選考に残った六人の就活生に与えられた課題は、一カ月後までにチームを作り上げ、ディスカッションをするというものだった。
全員で内定を得るため、波多野祥吾は五人の学生と交流を深めていくが、本番直前に課題の変更が通達される。
それは、「六人の中から一人の内定者を決める」こと。
仲間だったはずの六人は、ひとつの席を奪い合うライバルになった。
内定を賭けた議論が進む中、六通の封筒が発見される。
個人名が書かれた封筒を空けると「●●は人殺し」だという告発文が入っていた。
彼ら六人の嘘と罪とは。そして「犯人」の目的とは――。
就職活動、懐かしいというかなんといいますか。。。
私の就職活動の時代はまだ個人面接が主で、グループディスカッションなんかは殆ど実施した記憶がありません。
実施したのは一社くらいだったかな・・・
本作では、その就職活動のグループディスカッションを主としたミステリーというかなんというか。
最終選考に残ったのは6人。
6人でグループディスカッションを行い、合格するのにふさわしいのは誰かを話し合い決定するというもの。
その議論の中で出てきた「●●は人殺し」だという告発文。
それまでは誰が相応しいか前向きな議論が出来ていたのに、それが出てきてから一気に風向きは変わり、それぞれを疑い合うように。
皆、色々と嘘で取り繕ってこの場までやってきている。
どんな嘘をつき、どんな罪を抱えてやってきたのか、疑心暗鬼に陥る6人。
そして、そんなものを持ち込んだ真犯人の動機とは。
物語は、就職活動の時代と、それから数年後の現在の双方で描かれる。
現在では、過去を振り返りつつ各人の現状のインタビューをする形式で、過去に何があったのかを追っていく。
それぞれなかなか上手い作りをしている。
グループディスカッションの展開では、「きっとあの人がアレなんだろう」
的なことを考える人も多いと思う。
でも、それこそが作者の術中にはまっている。
現代編で謎を追いかけていき、その真犯人とその意図、そして6人がとった行動、「あの人」のとった行動を知らされて、作者の手のひらの上だったと分かる。
きっとこう考える人がいるだろう。
でも実はそうじゃなくてこうなんだよ。
と、作者が考えたのかは分からないけれど。
うまいことやられたって感じ。
その真相も、ああ、そうだったのねと、良い方向にいってくれるのも良い。
だけど、こんな就職活動、大変だなー。
あの人はああするしかなかったのでしょうか。
そこがちょっと残念だった。