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SF 書評

【ブックレビュー】僕が愛したすべての君へ(著:乙野四方字)

更新日:

【作品情報】
 作品名:僕が愛したすべての君へ
 著者:乙野四方字
 ページ数:253
 ジャンル:SF
 出版社:早川書房

 おススメ度 : ★★★★★★★★☆☆
 恋愛モノ度 : ★★★★★★★★☆☆
 こういう人におススメ! : ちょっと変わった並行世界ものを読みたい

■作品について

人々が少しだけ違う並行世界間で日常的に揺れ動いていることが実証された時代――
両親の離婚を経て母親と暮らす高崎暦(たかさき・こよみ)は、地元の進学校に入学した。
勉強一色の雰囲気と元からの不器用さで友人をつくれない暦だが、突然クラスメイトの瀧川和音(たきがわ・かずね)に声をかけられる。
彼女は85番目の世界から移動してきており、そこでの暦と和音は恋人同士だというのだが……
並行世界の自分は自分なのか?

■良かった点

並行世界、パラレルワールドは色々な作品でテーマに描かれていますが、本作は少し毛色が異なる。
並行世界があるのが当たり前の世界。
しかも人々は日常的にその並行世界を行き来しているという。
ただ、近い並行世界だと殆ど変わりがないので、行き来しても気が付いていないだけだというのである。

そんな時代を生きる高崎暦。
進学した高校で、いきなりクラスメイトの瀧川和音から、自分は並行世界から移動してきてその世界で二人は恋人同士だと告げられる。
そんなところから始まる、二人の物語。
ここで描かれるのは、並行世界の自分もまた自分なのか?
また、自分がいる世界の自分にとって大事な人は、並行世界でも変わらず大事な人なのか?
そういう関係性はどうなるのか。
自分の気持ちは。
ということを描いている。

例えば、大好きな相手と初めての夜を迎えようとしたとき、その相手が並行世界から来ていた場合、それはどういうことになるのか。
SFでありつつ、人の心のありようを描いたような作品。
そういう意味ではあまりSFらしくはないので読みやすいともいえる。
最後はちょっと切なさとほっこりするようなところがありつつ。
本作だけだと謎も残る。
その謎は、「君を愛したひとりの僕へ」で分かる。

■ここが改善できるともっとよかったかも?

同時刊行の「君を愛したひとりの僕へ」を読むとまた違った印象になるのでしょうかね。
※本作を先に読みました

 

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