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ミステリー 書評

【ブックレビュー】アポロンの嘲笑(著:中山 七里)

更新日:

【作品情報】
 作品名:アポロンの嘲笑
 著者:中山 七里
 ページ数:352ページ
 ジャンル:エンタメ
 出版社:集英社

 おススメ度 : ★★★★★★☆☆☆☆
 偉い人に読んでもらいたい度 : ★★★★★★★★☆☆
 こういう人におススメ! : 重いテーマと向き合いたい人

 

■作品について

未曽有の大災害となった東日本大震災から5日後、原発作業員の殺害事件が発生した。
被疑者もその場ですぐに逮捕され、本人も事実として認めており、すんなり事件も解決と思われたが、連行中にパトカーから脱走。
なぜ、そのような状況で今さら逃走したのか。
そしてまた、殺人事件の真相は?
彼が命をかけてまで守りたいと思ったのは何だったのか・・・・

■良かった点

やはり作者の筆力は読者を読ませるだけのものがある。
逃亡する加瀬、そして加瀬を追う刑事の仁科。
二人の視点から交互に描き、加瀬はなぜ逃げてどこに向かっていくのか。
仁科は過去から現代に至る加瀬の足跡を追い、その中で加瀬の目的に追いついていく。
震災とそれにともなう様々な被害、原発、それら色々な要素を絡み合わせてグイグイと読ませていくのはさすが。

あの震災の時、自分は偶々仕事で休みを取っており、地元で地震を体感し、そしてテレビで衝撃の映像を見た。
あの映像はその後のニュースとかでも使用されたのを見た記憶がなく、本当にリアルタイムで流された衝撃的なもので、見ていながら本当に声が出てしまったくらい。
そのような大規模災害の後でも、体はもちろん、家族や親しい人の被害で心に傷を抱えても、目の前の業務に携わる人たちはどのような思いだったのだろうか。

中山さんといえば、物語終盤での「どんでん返し」というイメージが強いが、本作に関してはそこに力を置いておらず、あくまで作者の思いを乗せた作品だったようだ。
あのような状況下でも無責任な言動しか繰り返さず、保身のことばかり考えていたような人たち。
一方で、献身的に働く人達。
非常時にこそ、人の本性ってのは見ることが出来るんでしょうね。

本書を通して、色々問いかけたかったのか。
そういう思いが伝わってきた作品だ。

■ここが改善できるともっとよかったかも?

加瀬が逃げていた理由。そして、殺人事件の真相。
この辺はちょっと「おいおい」と思わなくもない。というか、さすがに荒唐無稽すぎないだろうか。
あと加瀬の逃避行行程があまりに痛々しくて辛い・・・・

 

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