【作品情報】
作品名:書店員と二つの罪
著者:碧野 圭
ページ数:288
ジャンル:ミステリー
出版社:PHP研究所
おススメ度 : ★★★★★★★☆☆☆
書店にまた敬意を表する度 : ★★★★★★★★☆☆
こういう人におススメ! : 書店ミステリーが好き
書店員の椎野正和は、ある朝届いた積荷の中に、少年犯罪者の告白本があるのを知って驚く。
それは、女子中学生が惨殺され、通っている中学に放置された事件で、正和の同級生の友人が起こしたものだった。
しかも正和は、犯人の共犯と疑われてしまい、無実が証明された後も、いわれなき中傷を受けたことがあったのだ。
書店業界が「売るべきか売らないべきか」と騒然とする中、その本を読んだ正和は、ある違和感を覚える・・・
かつて世間を騒がす猟奇的な殺人を起こした犯人が、出所したのちに自分の犯罪の告白本を出版する。
当然ながら話題になり、多くの反響を呼ぶことになる。
出せば売れる。
それが分かっている中で、書店はそのような本を売りに出さないわけにはいかない。
もっと良い本、読んでほしい本があるけれど、本が売れなくなってきているこのご時世、売れるものは売らなければならない。
書店が売りたいものを売るのではなく、読者が、世間が求めているものを売る。
書店員は、そのようなジレンマは常に抱えているのでしょうね。
と、物語の事件そのものよりも、書店の方の姿に思わず注意を向けてしまうのは本好きだからなのか。
事件の方は、かつて高校生時代に発生した殺人事件の犯人の親友でもあった正和を主人公に展開される。
自分の友人が犯した罪により、自分や自分の家族もいわれない中傷などを受け、逃げるように地元を離れた正和。
忘れられた今になって急に蒸し返される過去の事件。
それを契機に、正和の、そしてその家族、さらに犯人であり友人だった創とその家族の時間が再び動き出す。
そして忘れていた記憶を思い出す正和。
ミステリーの仕掛けがどうこうというよりは、その事件を通して描かれる関係者たち、とでもいうものか。
色々と抱えたものがあり、それぞれが思いを抱いてその事件を終えた今も生きている。
重いというか、なんというか。
すっきりするような終わりではない。
様々な思いを、そして罪を抱えて、生きていかなければならない。
そういうことか。