【作品情報】
作品名:ドクター・デスの遺産
著者:中山 七里
ページ数:296
ジャンル:ミステリー
出版社:KADOKAWA
おススメ度 : ★★★★★★★☆☆☆
安楽死について考えてしまう度 : ★★★★★★★★☆☆
こういう人におススメ! : このテーマを考えてみたい人
命の尊厳とは?
安楽死をテーマにして連作ミステリー。
警視庁に一人の少年から、「悪い医者が来てお父さんが殺された」という電話がかかる。
連絡を受けて現地に向かった犬養と高千穂。
子供のたわごとと思っていたが、事態は思わぬ方向に進んでいき・・・・?
安楽死ですか!
読むと考えさせられますね。
日本では当然、認められているわけではありませんので、安楽死を施すと罪に問われる。
でも、回復の見えない状況に絶望し苦しみ続ける本人、介護で疲れ果てる家族、治療費もかかり、ただ辛い日々だけが積み重なっていく。
となれば安楽死を考えるのも致し方ないと思えてくる。
だって、どうしろと?
そこに一石を投じたドクター・デス。
依頼を受けて安楽死を施すわけですが、その存在を知った警察、そして犬養達との対決。
果たしてドクター・デスとは何者で、どこにいるのか?
それはそれで読まされるが、直接的な対決というよりは思想の対決ではなかろうか。
死を望み、死しか先のない人に対し、警察は、法は、何をしてくれるというのか。
本人も家族も望み、むしろ喜んでさえくれる。
重い病気を抱える娘を持つ犬養もまた、苦しめられる。
なぜ、ドクター・デスは安楽死に手をつけるようになったのか。
そういった過去も最後には明らかにしつつ、犬養との対決は「そうなるか」という結末を迎える。
どっちが勝ちとか負けとかではない。
やはり、どう思うかなのだろう。
自分が絶望的な病に侵され、痛み、苦しみに日々襲われるなら、やはり安楽死を望んでしまうかも。
一方で親しい人がそういう状態に陥ったらどう考えるだろう。
正解がないだけに、考えは巡る。
どんでん返しというほどではないかな。そこを強く望んでいた人にとっては少し弱いかも。
でも本作は、そこが本筋ではないとも思う。