【作品情報】
作品名:ベルリンは晴れているか
著者:深緑 野分
ページ数:480ページ
ジャンル:ミステリー
出版社: 筑摩書房
おススメ度 : ★★★★★★★★☆☆
ベルリンの空気の濃密度 : ★★★★★★★★☆☆
こういう人におススメ! : 歴史小説とミステリーの融合
ナチスが支配したドイツ、ヒトラーが死んで戦争に敗れた後、ベルリンで一人の男が死んだ。
ドイツ人少女、アウグステの恩人だった男の死。その死を男の甥に伝えるため、甥を探しに旅立つ少女。
荒廃した街を進む少女を待ち受けている真実とは?
戦後のドイツを舞台にした、歴史ミステリー。
ミステリーではあるが、それ以上に歴史モノである。
描かれるのは、ナチスドイツが戦争に敗れた後のこと。
当たり前だが敗戦が国に及ぼす影響は大きい。貧困、差別、戦勝国と敗戦国。そういったものがこれでもかと濃密に描かれている。
当たり前だが負けた国の民は苦しい立場に陥る。
そこに、アーリア人、ユダヤ人といったナチスがとった政策も絡んでくるわけで。
物語の進め方も、現在におけるアウグステの甥探しと、過去に遡って戦前から戦中のことが交互に描かれる。
迫害されていくユダヤ人、どんどん勢力を増していくハーケンクロイツ、ナチスの一党。
ナチスを批判するようなこと、態度をとればそれだけで引き立てられていって処刑される。
ナチスにあらずば人にあらず、まさにそんなことが物語内でこれでもかと示される。
主人公がごく普通の家庭に生まれた民間人の少女なので、普通の人がどうなっていくかが分かりやすい。
幼い少女から少しずつ成長し、成長につれて状況は酷くなっていくのが読んでいて辛いとさえ思わせる。
とにかく、容赦ない迫害だ。
ミステリーとしての部分も、トリック云々というのではなく、なぜそうなったのか。
なぜ、そういう行動をとったのか。
人間の心理を描いたミステリーだと思った。
少女だけだと重苦しくなってしまいそうなところだが、旅の相棒となるカフカが道化的な部分あり、そこで少し明るくなる。
この組み合わせにしたのは良かった。
もちろん、このカフカにだって色々な過去はあるわけだが。
濃厚な歴史小説。
読み終えた感想はコレですね。
殺人の謎を追いかけるわけだが、終戦後のドタバタしている中で、なぜ一人の男の死をおいかけるのか。
もちろん、その理由も示されはするのだが、ちょっと個人的に納得感が低かった。
でも、そうせざるをえなかったのかのかなぁ、とも思った。
価格:1,782円 |