書評と主にマリア様がみてるの二次創作(旧:よしのXブレード)

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【マリみてSS(色々・ネタ)】小ネタ集17 ノーマルCPショート8

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<1>

教会の裏手、人気のないベンチから声は聞こえてくる。
「俺、好きな人ができたんです」
その声を聞いて、私の心臓がわずかに動きを速める。聞いたことのある声だったから。
ここ最近、知り合って、たまに話をするようになった。
やさしくて、おだやかで、落ち着いている、一つ年下の男性。
私は声を出さない。ただ、聞くだけ。
きっと彼は、私がいることを知らない。誰かが聞いていることは知っているけれど、それが誰かは分からないはず。
やさしい、春の風が吹く。
「その人は静かで、その場に溶け込んでいるようで、でもいなくなるとすぐに分かる、俺にはそんな人で」
どうして、私はこんなに落ち着かないのだろう。
久しく、私の心は穏やかな水面だったのに、わずかに波立っている。
「でも……彼女は」
心なしか、声が沈む。彼の表情は分からない。
「彼女は……シスターを目指しているんです」
私の心の中を、雷が貫いた。
それでも、私はどこか落ち着いている。ある程度、無意識に予想をしていたのかもしれない。
「彼女は応えてくれないかもしれない……でも、それでも俺は、彼女のことをおもっているんです。これは、許されますよね?」
胸の前で手を組む。わずかに、力が入る。私は声を出すことができない。伝えることはできない。
それでも。
春の風は、私と彼の間を、温かく包むようにそよいでいた。

 

<2>

「キェーーーーーーーーッ!!!」
館内を貫くような鋭い声とともに、鋭い面がきまる。歓声にわく味方の選手たち。
一礼をすませて戻ると、仲間たちに囲まれる。
……そんな光景を目に焼きつけながら、私は自陣に戻る。
「惜しかったね」、「いい試合だったよ!」という声に頷きながら、面をとって汗をぬぐう。
公式戦の初勝利は、ならなかった。

小手を打たれた手首が痛むといって、皆に断って場を外す。
歓声が背後の方で小さくなっていく。私はうつむきながら、早足になって逃げるように進んでいく。
どこに向かっているのか自分でもわからないけれど、とにかく動く。
悔しい、悔しい、悔しい、悔しいっ。汗に交じって、目からも滴が流れ落ちそうになる。
泣いてたまるかと思っても、自然と溢れそうになる。剣道を始めたのが遅いから、そう簡単に勝てるわけないとは分かっているけれど。
悔しいものは悔しいのだ。
情けない顔を誰にも見せたくなく、下を向いていたので前方をよく見ていなかった。曲がり角から現れた人に、正面からぶつかってしまった。
「あ、ご、ごめんなさいっ」

顔を上げた女の子の表情は、美しかった。美人とか、そういう一般的な意味合いではない。
汗を流し、悔しさをにじませ、輝く瞳からこぼれおちる涙。女の子の涙は真珠だとか言われるけれど、それ以上に生命力に溢れた表情に惹かれる。
女の子の背後から、後輩の子らしき生徒がやってくる。
「ちさとさま、大丈夫ですか? 私も一緒に救護室についていきます」
「あ、うん、あの、それじゃ、どうもすみませんでした」
手拭いで汗と一緒に涙をごしごしと拭う。後輩に、見せたくないのだろう。気丈さがよくわかる。
彼女が歩く後ろ姿を見つめながら。
家に帰ったら、「ちさと」という女の子を知らないか、祐巳に聞いてみようと思った。

 

<3>

小笠原家はもちろんお金持ちで、家もそれに恥じないくらい豪勢だというのは知っていたが、邸内にプールまであるとは知らなかった。
プール自体はさほど大きいものではないけれど、十分に泳げるだけの広さはあるし、何よりセンスよくまとめられている。
初夏のある日、祐麒は小笠原家のプールに身を沈めていた。
だけど、驚いていたのはプールそのものにではない。プールサイドに存在している、彼女の姿にである。
「祐麒さん、少し休みませんか? 美味しいオレンジジュースがあるんです」
プールサイドから膝に手をついて、プールにいる祐麒に向かって声をかけてくれる。
すると、ボリュームのある胸が、さらに迫力を増して、水の中にいても顔が熱くなってしまう。
パーカはかけているけれど、前は閉めていないから、そのスタイルのよさがとてもよくわかる。
とても、女子高校生の娘を持つとは思えないほど、くびれがあって、肌のはりもよい。水を弾く、みずみずしさだ。
他の家人は出かけており、二人しかいない貸切状態のプール。
プールサイドからは、引き続き彼女が「さ」と言って、手を差し出してきている。祐麒はその手をつかみ、プールサイドに上がろうとした。
しかし、彼女の力は思っていた以上に弱かった。ほんのちょっと力をいれただけで、バランスを崩してそのままプールに飛び込んでしまった。
水音を立てて落ちた体を受け止め、水中に沈む。あわててもがいて水面に顔を出す。せき込みながら、前を向くと。
水を滴らせ、太陽の光に水滴を光らせた彼女が、目の前で笑っていた。
「ごめんなさい、祐麒さん。私ったら抜けていて……大丈夫ですか?」
胸が押しつぶされるような形で、祐麒に押しつけられている。彼女の手は祐麒の肩に置かれ、抱きつくような格好。
「だだだ、大丈夫、です、おおおれより、清子さんの方こそっ」体が熱くなる。柔らかく、温かな肌を直接に感じて。
「私は、祐麒さんが受け止めてくれましたから……」微笑む清子だが、どこか微妙に困ったような表情で、わずかに頬が赤い。
「……はっ!」気がついた。受け止めた祐麒は、清子のお尻を掴むようにして抱いていた。指先に、手のひらに、伝わってくる感触。
「いえ、あの、私はともかく、祐麒さんは私みたいなの触っても、楽しくないでしょう?」
「とととととんでもないっ! む、むしろいつまでも触っていたいというか……あわわっ! 俺は何を言ってすみません!」
「ふふっ、本当なら嬉しいですわ。でも……これ以上はダメ、ですからね」
悪戯っぽく笑って見せる清子。『ダメ☆』と言われたところで、余計にダメになる祐麒なのであった。

 

<4>

「ちょっと祐麒、もうへばったの? だらしないわよー?」
五歩ほど前方で、祐巳が元気よく手を振っている。
ここは、とある遊園地。父親が仕事の関係でチケットをもらったので、こうして二人で遊びにきたわけであるが。
「……なんで、そんなに元気があるんだよ」
絶叫ものにのって、あれだけ叫んで、それを何度も繰り返して、それでも元気いっぱいって、どういうことだと思う。
祐麒は正直、相当にへたっていた。絶叫ものが苦手というわけではないが、ここまで繰り返されると正直、疲れる。
「もう、しようがないなー、それじゃあ、次は落ち着いたのにしようか」
戻ってきた祐巳の提案に、祐麒は素直にうなずいた。
そしてやってきたのは、ホラーハウス。自分で歩くのではなく、乗り物に乗ってコースを流れていくものだ。
途中で色々な仕掛けがあって、客を驚かせてくる。よく出来たCGや作り物、演出に、祐麒も何度となく驚かされたが、さすがに声は出さない。
「きゃーっ! うわっ、びっくりしたーっ!」
祐巳は遠慮なく声をあげて、かなり怖がりつつも、楽しんでいる。そして密かに祐麒も楽しんでいた。
驚き怖がるたびに抱きついてくる祐巳。その胸が遠慮なく押し付けられてくるのだ。
最近、それなりに育ってきた祐巳の胸は、十分に柔らかさを感じられる。
アトラクションを出ると、祐巳は満足したように背伸びをする。
「楽しかったねー、祐麒も面白かったでしょう?」
「隣で祐巳がぎゃーぎゃー叫んでばっかりだったからなー。本当、怖がりだよな、まったく」
「何よー、祐麒だって随分と楽しんでいたくせにー」
「そんなことないよ、子供だましだって、あんなの」
「そう? その割には鼻の下のばしていたけどー? 私がこうするたびに」言いながら、祐巳は腕を組んで胸を押し付けてきた。
「ばっ……!? ゆ、祐巳、お前っ!?」顔が赤くなる。祐巳は、悪戯っぽく笑う。
「へへ、今日、つきあってくれたお礼」さらに、強くしがみついてくる。
「ばーか、そんなんでお礼になるわけないだろ、祐巳程度の胸でさ」
「なんだとーっ?」
腕を組みながら二人、仲良く遊園地デート。こんな休日もまたよいものだなと思う祐麒なのであった。

 

<5>

日出実は悩んでいた。
何に悩んでいたかというと、部活動のことである。はっきりいって、プレッシャーに悩まされていた。
日出実の姉である真美、真美の姉であった三奈子、二人ともとても優秀だった。
オリジナリティーにあふれ読者を惹きつける記事を書く三奈子、構成・内容ともに隙がなくきっちりした記事を作る真美。
そんな優秀な二人の後を継いだ日出実は、自分の実力のなさに泣きそうになる。
それまではそれなりに日出実だって自信はあった。実際、同学年の中ではもっとも優秀だといわれている。
だけど、それだけではダメなのだ。先達をこえていかなければならないのだ。しかし、それが難しい。
「君、いつもそんな怖い顔しているの?」
言われたのは、そんな風に思い悩んでいる時期だった。顔をあげると、取材対象がいた。
花寺学院の前生徒会長である福沢祐麒。すでに生徒会長を退いたというのに、いまだ取材するのは、福沢祐巳の弟だから。
やはり紅薔薇さまである祐巳と姉弟というのは、記事のネタにはなりやすい。
「あ、す、すみませんっ、そんな、わ」そこまで厳しい表情をしていただろうかと、思わず赤面する。
「そうそう、そんな顔をしている方が可愛いよ」
「か、かわっ!?」
思いもよらないことを言われて、日出実は戸惑う。今まで、生意気とか後輩らしくないとか言われたことはあるが、可愛いなんて。
しかも、相手は男だ。日出実は当然のように、男性に対する免疫はなかった。
祐麒は、単に相手が緊張しているようにみえたから、なごませるように口にしたつもりなのだが。
「うん、やっぱり笑ってくれた方が、取材される方としても嬉しいな」
「わ、わ、笑って……ですか。えと、あ、はは」無理やりに笑って見せるが、実は笑うのは得意ではなかった。
日出実の強引な笑い顔を見て、だけど祐麒は笑いだした。
「うん、そう、その方がずっと魅力的だよ、日出実ちゃんは」
そんな風に言われて。
取材だということも忘れて、日出実は首まで赤くなるのであった。

 

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