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ギャグ・その他 マリア様がみてる

【マリみてSS(色々・ネタ)】小ネタ集39 <りりあん荘2-1>

更新日:

 

~ りりあん荘へようこそ! 2 ~

<一号室>

頭が痛い。ガンガンする。気分も悪い。いうなれば最悪だ。
一体何があったのかと考えて思い出す。昨夜、一号室に連れ込まれ、夜明け近くまで酒につきあわされたのだ。
未成年だというのに、平気で酒を飲ませるなんて、何を考えているのだか、まったく。
「そんなつれないこと言わないでいいじゃん、結構、高いワインだったんだからー」
「んなこと言っても駄目です……って、うわーーっ!? せ、聖さんっ!」
「何さー、いきなり大声出さないでよ、頭に響くー」
うーっ、と、唸るようにして顔をしかめる聖は。
チューブのトップスにボクサーパンツと、まあ要するに下着姿なわけだった。
しかも、そんな格好で祐麒に寄り添うようにして寝ている。
即ち、その、当たっているわけだ。
「ちょ、な、何しているんですかっ、聖さんっ!?」
「えー、何って、まさか祐麒、昨夜のこと覚えていないの……?」
しなを作る聖に、思わずどきっとする。
「祐麒が強引に迫ってきたク・セ・に」
もじもじしながら、人差し指で祐麒の胸をつついてくる。痺れるような快感が抜けると思ったら、祐麒も裸だった。
「やーだ、祐麒ったら乳首たってるー」
「ややや、やめてくださいっ! そ、それより朝ですよ、お、起きましょうっ」
「あ、それなら大丈夫、そろそろ蓉子が起こしに来る時間だから」
え、と思う間もなかった。聖が言い終わるか終らないかのタイミングで、部屋の扉が開いたのだ。
「聖、そろそろ起きないと学校に……」
固まる蓉子。その視界に映っているのは、一つの寝床で、半裸で抱き合う格好で寝ている聖と祐麒。
「な、ななっ、何しているの貴方達、破廉恥なっ! はっ、離れなさいっ!!」
蓉子の悲鳴が響く。今日も、りりあん荘は朝から賑やかだった。

 

~ りりあん荘へようこそ! 2 ~

<二号室>

「可南子ーっ、遊びにきたよーっ」
「可南子さん、いるのは分かっていましてよ」
二号室の前に、二人の女子高校生の姿。一人はおかっぱみたいに切りそろえられた髪型、一人は縦ロール。
「やっぱりちょっと、来るのが早すぎたんではありませんの? 乃梨子さんたら、せっかちだから」
「いやー、もっと並ぶと思ったんだよね、人気店だからさ、『幸嶋ロール』は」
「一時間も早く到着してしまいましたからね……とはいえ一時間前、そんな遠くに出掛けているとも思えません」
「どうする瞳子? ちょっとその辺でも散歩してこようか?」
「そうですわね、それくらいでちょうど良いかもしれませんわね」
二人はそう言いながら、りりあん荘の敷地から出ようとして。
ちょうど外から帰ってきた可南子とばったり出くわした。
乃梨子と瞳子の二人は可南子を見て、ついで、隣に立っている祐麒に目を向ける。
「……あらあら、もしかしてそちらのお方が、可南子さんのかねてよりお話になっている祐麒様かしら?」
「へーっ、二人で仲良く買い物だなんて、可南子もやるもんだねー、このこのっ」
「なっ……ななななんで二人とも、こんなに早くっ!? って、ちち、違うからっ!」
顔を赤くしながら、わたわたと可南子は言い訳をする。
だが二人の手には、同じスーパーのビニール袋があり、どう考えても乃梨子が言った通りにしか見えない。
「お、重いものがあるから、荷物持ちにしただけよっ! へ、変に勘繰らないでよねっ!」
ビニール袋には、ジュースのペットボトルやらお菓子やら、色々な物が詰め込まれている。
「いえいえ、でも可南子さんの腕力でしたらそれくらい造作もないはず。それをわざわざとは……おほほ」
「恥しがらなくてもいいじゃん、うんうん、なかなかお似合いだって」
「ば、ば、馬鹿なこと言わないでっ! なんでこんな奴とお似合いなんて、冗談じゃないわっ」
「そーんな赤い顔をして言ったところで説得力、全くありませんわ、おーっほっほっ」
休日、女子高校生三人のなんともかしましい会話。
そんな中で祐麒は、幾つかの部屋から冷たい視線を感じ、この先を想像して嫌な汗をかいていた。

 

~ りりあん荘へようこそ! 2 ~

<三号室>

「こちら取材結果をまとめたレポートです、確認お願いします。それから頼まれていた件ですが……」
テキパキと仕事をこなしていく、揺れるポニーテールはもはやこの職場で知らぬものはいない。
「はい、そちらも問題なく終わっています。では、私は今日は失礼しまーすっ!」
疲れも見せず元気よく、笑顔を振りまいて帰っていく三奈子は、職場ではマジ天使扱いだった。
「いやー、三奈子ちゃんは本当、しっかりしていて仕事もできて、明るくて元気で可愛くて、しっかりしているよな」
「大当たりでしたよね、うちには勿体ないくらい。あー、つきあっている彼氏とかいるんですかねー?」
「いるんじゃないか、あれだけの器量じゃあ。しっかりしているし、年下のちょっとだらしない男の世話とか見ていたり」
「あー、ハマりそうですよね、『もう、○○くんったら本当だらしないんだから。私がいないと駄目ね』とか言って」
「いいよなー、くそ、それよか俺達も仕事だ、ほれほれ」
とまあ、三奈子の職場ではそんな会話がしばしば行われていたりするのだが。

「ああもう、三奈子さんったら本当にだらしないんだからっ、着替えないで寝たら皺になるって言っているでしょうがっ」
部屋に入るなり祐麒は、顔をしかめてあたまをぼりぼり掻く。乱れに乱れた室内は、まるで魔境のよう。
とはいっても、ゴミだらけで臭いとか、汚らしいとか、そういうわけではない。
衣類やら本や雑誌やらアクセサリー類やらお菓子やらがそこらじゅうに散乱している。
部屋の主は、おそらく仕事用のブラウスとスカートのまま、ベッドでだらしなく寝ている。
「もう、三日前に俺が掃除したばっかなのに、なんでこんなになるんですか……うっ」
散乱しているものを拾っていたが、それが三奈子の下着だと気づき顔を赤らめる。しかも、ほんのりと温いのだ。ショーツが。
「あーうー、だってお掃除していたら何でかもっと汚れちゃったんだもーん。あ、それさっき脱いだぱんつ……欲しいの?」
「そりゃ欲し……って、なんで脱いでんですかっ! 本当、三奈子さんは駄目駄目だなぁ」
「さっきトイレ言った時に脱いで……うぅ、お腹すいた、コンビニ弁当飽きちゃった。ねぇ祐麒くん、そのパンツあげるからご飯作ってぇ」
「あぁもうっ、よく社会人できてますよね。俺が見てないと心配で仕方ないなぁ」祐麒が言うと、三奈子はなぜかにっこり笑い。
「……えへへ、うん、私、祐麒くんに見ていてもらわないと駄目駄目人間かも」と、背中から抱きついてくる。
仕方ないなとため息をつきつつ、背中にあたる感触に頬が緩みそうになる。ちなみに先ほどのぱんつはポケットの中に収めていた。

 

~ りりあん荘へようこそ! 2 ~

<四号室>

りりあん荘にて、蓉子は一つの使命感に燃えていた。それは、管理人の祐麒のことである。
管理人とはいえまだ学生、いや正確には学生ですらない、浪人生だ。管理人をしながら受験勉強など、大変なことだ。
教師である蓉子は、やはり祐麒には頑張って受験に成功してもらいたかった。
だがそれには、このアパートには障壁が多すぎる。悪戯好きで祐麒をからかう住人、騒がしい住人、問題を起こす住人。
ならば自分は、少しでも祐麒のために動いてあげようではないか。幸い、祐麒は教え子というわけではない。
多少、世話を焼いたり、勉強を教えたりするくらいは問題ない。
「と、いうことで祐麒くん、遠慮しないでねっ」
「はぁ……え、ええと、あの」
祐麒は、張り切って部屋にやってきた蓉子を目の前にして、きょとんとする。
「大丈夫、祐麒くんは気にせずに勉強していて。私はお掃除とお洗濯と、あとお料理してあげるから」
と、言われたものの。動きやすい格好だからと、ショートパンツに二ーハイソックスで動きまわる蓉子は目に毒だ。
四つん這いになって床を拭いていると、つんと突き出されたお尻が目に入る。
お尻を持ち上げると、ショートパンツが少し食い込むような感じになって、太腿とお尻の中間くらいまで見えたりするし。
洗濯ではパンツを手に広げて祐麒も蓉子も赤面するし、料理ではエプロン姿に萌える。
「よっし、それじゃあ、少し勉強を教えてあげようかしら? 分からないことがあったら聞いてちょうだい」
この世話焼き体質はどうしたものか。まあ、由乃のように暴走したりしない分、遥かにましだが。
「ええと、それじゃあ、ここがちょっと難しくて」現役教師ということもあり、遠慮なく訊いてみる。
「んーと、どれどれ? ええっと、これは……」
ぎょっとする。
蓉子が横にすり寄って来て、問題集に目を落としたのだが、近い、近すぎる。蓉子から良い香りが届き、うっとりする。
綺麗な髪、整った横顔が、真横にきてどぎまぎする。だけならばまだしも、左の腕にあたる、柔らかな感触。
ちらりと視線を動かすと目に飛び込んでくる、胸の谷間。
なんでそんな格好で来るのか、全く勉強に集中が出来ないではないか。むしろ、違う個所に違うものが集中したりして。
「こら祐麒くん、ちゃんと聞いている? もう、そんなんじゃ駄目よ。よし、今日はたーっぷり、教えてあげるんだから」
「た……たっぷり、ですか」
心臓をばくばくさせながら、問い返す祐麒。もちろん、たっぷり教わってもほとんど頭に入らなかったのであったが……

 

~ りりあん荘へようこそ! 2 ~

<五号室>

やけに暑い日だった。地球温暖化が叫ばれて久しいが、その影響だろうか。
管理人室には幸い、エアコンがついているので祐麒はそれで暑さをしのいでいる。
仕事を終え、そろそろ勉強をしようかと思った矢先、扉をノックする控えめな音が響いてきた。
誰だろうかと思いながらドアを開けると、そこには地味ーな女性が、地味ーに立っていた。
色気もない眼鏡に、野暮ったいお下げ、お洒落とは程遠いシャツにパンツ。五号室に住んでいる、内藤克美だった。
「どうかしましたか、克美さん?」克美が自らやってくるなど珍しい。大抵、ひきこもりなのだ。
「管理人さん、あの……へ、部屋のエアコンが、動かなくなって」
ということで、五号室にエアコンの具合を見るためにやってきた。本来なら電器屋の仕事の気もするが、見るくらいならと。
克美の部屋は、入るのは初めてであったが、意外なことに乙女ちっくな感じだった。
ちらちらと見ていると、気がついたのか、克美が恥しそうに口を開く。
「あ、あの、カーテンとか、シーツとか、ぬいぐるみとか、全部妹がやったもので、わ、私は別に」
「へえ、妹さんがいるんですね、っと、それよりエアコンですね、確かにこの暑さじゃあ勉強もはかどりませんよね」
自分でわかるかどうかは怪しいと、先に断ったうえでエアコンの様子を見るために脚立の上に乗る。
「……うーん、やっぱりちょっと、俺じゃあ分からないですね、すみません」
「そ、そうですか……」しゅん、とした克美に申し訳ないと思いつつ、脚立から下りかけたところで、目を見張る。
脚立を克美に抑えてもらっていたのだが、上からだと、シャツの緩い胸元から中が見えたのだ。その、先っちょとかまで。
幾ら暑くて、自分の部屋だからって、ノーブラで男を部屋にあげますか! と、焦った祐麒は脚立を踏み外す。
「きゃっ……あっ!?」お約束のように、床に克美を押し倒す。
「あ、ご、ごめんなさいっ!」
「い、いえ、大丈夫ですか?」
きょとん、と問い返す克美。シャツは乱れておへそが見えていて、布が張り付いた胸の形はよく分かるくらい。
克美は地味だが、不細工ではない。むしろ、きちんとすれば祐麒的には好みのタイプであり、この状況は非常にマズイわけで……
「こんにちはーっ、お姉ちゃんっ、遊びにきたよーーーっ!!」
いきなり、扉が勢いよく開かれ、元気よくとびこんできた一人の女の子。どうやらこの娘が、克美の妹らしいが。
「って、ぎゃーーーーーっ!! 何、誰っ、この痴漢っ! あ、あたしのお姉ちゃんに何してんだーーーっ!!」
走り込んできた女の子の水平飛びひざ蹴りをくらい、祐麒は意識を失いつつ、克美の胸に顔を伏せるのであった。

 

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