書評と主にマリア様がみてるの二次創作(旧:よしのXブレード)

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【マリみてSS(乃梨子×笙子×日出実)】暑さなんかぶっ飛ばせ!

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 もうすぐ夏休みである。気分も浮かれそうになる。しかし、夏休みの前には試練が待ち受けている、そう、期末考査という試練が。
 笙子も日出実も、決して成績が悪いというわけではないが、凄くよいというわけでもない。得意な教科もあれば、苦手な教科もある、ごく普通の生徒であった。だからこそ、テストが好きなんてことはないし、苦手な教科に対しては苦しみしか感じない。
「ううぅ、英語って苦手っ! 地理もいやーっ」
「数学なんて……」
 頭を抱えて悲鳴をあげている笙子と、頭をおさえてぶつぶつと呟いている日出実。見せる姿は対照的ながら、思い悩んでいることは共通である。
「でも、ここを乗り切れば楽しい夏休みだよ、日出実ちゃん!」
「そ、そうですよねっ。このヤマさえ乗り切れば、あとは」
「乃梨子ちゃんの水着とか、汗で透けるシャツとか」
「浴衣姿とかもいいですよねぇ……アイスキャンデーをくわえる姿とか」
「よし、頑張ろう、日出実ちゃんっ」
「はい、笙子さんっ」
 二人は力をこめて、腕をクロスさせる。
「何なに、どうしたの二人とも、気合い入っちゃって」
 担当場所の掃除を終えた乃梨子が教室に戻ってきて、向かい合って不思議なオーラを放っている二人を、不思議そうに見つめる。
 笙子と日出実は、同時に顔を乃梨子の方に向ける。
「な……なに?」
 気迫のこもった表情をいきなり向けられて、さすがの乃梨子も少しびっくりする。
「乃梨子ちゃん」
「乃梨子さん」
「「勉強、教えて!!」」
「……は?」

 

 ――こうして、勉強会を開くことになりました。

 

~ 暑さなんかぶっ飛ばせ! ~

 

「さ、さ、遠慮なくあがってくださいな」
「お邪魔します」
 出迎えた笙子に先導されて、内藤家に入る日出実と乃梨子。テスト前の土曜日、三人での勉強会は、笙子の家で開催される運びとなったのである。
「えと、これ、差し入れって言うのも変だけど」
 乃梨子が差し出したのは、来る途中に日出実と一緒に買ったフルーツのゼリーの詰め合わせ。冷やして食べれば、暑い夏には最高の逸品である。
 笙子の母親に簡単に挨拶して、笙子の部屋に入る。室内はエアコンが効いていて、快適に勉強できそうだった。
「うわ、笙子さんの部屋、可愛いですねー」
 日出実が声をあげる。
 笙子の部屋は、『女の子』という形容詞がとてもよくあてはまるような雰囲気だった。カーテンやベッドカバーはキツすぎない柄物で、明るく華やかな感じ。木枠の姿見に、ゆるキャラのティッシュケース、飾られたドライフラワーに、ベッドの上にある数体のぬいぐるみ、壁に貼られたポスター。
 派手すぎず、しつこくならない適度な室内は、居心地もとても良さそうだった。
「あんまりじろじろ見ないでね、実は慌てて綺麗にしたから、細かいところを見られるとボロが出ちゃうの」
「あははっ」
 笑いながら、用意されたクッションに腰を下ろす。
「よし、それじゃあ早速やりましょう。こういうのは、最初の勢いが大事よね」
 テーブルに教科書とノートを広げる笙子。
「どうします? 何の教科から始めますか?」
「ん? 各自、やりたい教科でいいんじゃない。で、分からないところがあったら、乃梨子ちゃんに聞くと」
「そうか、そうですよね。よろしくお願いします、乃梨子さん」
「私は、それ確定か……」
 苦笑いしながら、乃梨子も準備をする。
 とりあえず、笙子は英語、日出実は数学、乃梨子は古文と、バラバラに手をつけ始めた。
「乃梨子ちゃん、ここ分かんないっ!」
「はやっ!? まだ1分も経ってないし!?」
「いいから、ねぇ、ここ教えてよー」
 笙子が乃梨子の腕をつかんで、自分の方に引き寄せる。シャープペンシルのお尻で頭をかきながら、乃梨子は身体を伸ばし、笙子が指し示す問題に目を落とす。
「えっと、このWhatは関係代名詞だから、こっちの文章が――」
「あ、ちょっと待って、ゆっくりお願い」
 二人のやり取りを耳にしながら、日出実は内心で歯ぎしりする。まさか、笙子がこんなにも早く、あからさまに仕掛けてくるとは思わなかったのだ。開始早々に絡め手を使ってくるとは。
 悔しいが、今ここで乃梨子を呼ぶわけにもいかず、かといって問題にも集中できず、日出実はシャープペンシルを強く握りしめる。だが、我慢できなくなって、参考書から乃梨子の方へと目を移す。
 三人は、コの字型になってテーブルに座っていた。乃梨子に教えてもらう手前、日出実と笙子が向かい合う形になり、乃梨子は二人に挟まれるように座っている。
 その乃梨子が、笙子に教えるために、テーブルの上に身体を乗り出していた。そのせいで、シャツの胸元から胸の谷間がほんのりと見えていた。さらに、落ちかかる髪の毛を無意識にかきあげる仕種。
 慌てて目をそらすが、今度は笙子の姿が視界に入る。あまり気にしていなかったのに、乃梨子のことを意識した途端、笙子のことも気になりだした。というか、胸だ。乃梨子の説明を聞いている笙子のおっぱいが、笙子自身の腕の上に「たっぷん」という感じで乗っかっているのだ。
「す、凄い……っ」
 赤面しつつ、思わず声を漏らしてしまう日出実。
「ん、どうかしたの、日出実?」
「な、ななっ、なんでもないですっ。ちょっと、問題に詰まっていて」
 乃梨子に見つめられ、慌てて首を横に振る日出実。
「ん、どの問題? ちょうど笙子の終わったから、見せてみて」
「え、あ、わ、わ……」
 と、今度は日出実の方に身体を寄せてくる乃梨子。
「こ、この問題が」
「んー? ああ、これ引っ掛けなんだよねー。これは、公式を応用して……」
 乃梨子の腕が触れそうになる。
 制服ではない私服姿、夏で露出が多く、近づいてくる首筋や鎖骨が物凄く生々しくて艶めかしくて、思わず唾を飲み込む。
 髪の毛が揺れると伝わってくる香りは、シャンプーか、それとも軽く香水でもしているのか、あるいは乃梨子の汗の匂いか。
 どれであろうとも、日出実は嗅いだだけで、酔ってしまいそうだった。
 ぼーっとしながら、ふと、視線をあげてみると、ギラギラした目つきで乃梨子の胸元を凝視している笙子の姿が映った。
 笙子が、日出実の視線に気がついた。
 グッ、と親指を立てる。日出実も、無言で頷く。
「――で、こうするといいわけ。分かったかな?」
「う、うん、ありがとう、乃梨子さん」
「乃梨子ちゃん、次、私っ!」
 手をあげる笙子。
「えー、また? ちょっと、私はいつになったら勉強できるのよ」
 苦言を呈しながらも、言葉ほど嫌そうな表情を見せない乃梨子。きっと、教えること自体は好きなのだろう。
 結局、笙子と日出実は無言の意思疎通によって交互に乃梨子に質問しあい、お互いの欲望を忠実に満足させていったのであった。

 

 勉強開始して一時間半ほど経ったところで、自然と休憩となった。
「んーーっ、やっぱり持つべきものは、優秀な友達よね」
 伸びをしながら、笙子がそんなことを言う。
「本当、学年首席ですもんね、乃梨子さん」
「なに、笙子も日出実も、私が首席だから友達になったの?」
 ちょっとふざけた口調で、乃梨子が意地悪く問いかけると、笙子と日出実の二人は、ぶんぶんと激しく首を横に振って否定する。
「そんなわけないじゃん、私は乃梨子ちゃんだから、仲良くなりたかったの!」
「そうですよ、私だって、乃梨子さんだからこそ、一緒にいたいんです!」
 予想以上の激しい反応に戸惑いつつも、二人の嘘偽りない言葉を聞いて、乃梨子は少し照れたように顔を赤らめる。
「あ、うん、ありがと……」
 不器用に、ぶっきらぼうに感謝の意を表す乃梨子を見て、笙子と日出実の萌えゲージは急上昇する。
 嘘も偽りもない二人の気持ちだが、その中に邪な欲望が入っていることを、乃梨子は知らない。
「あー、美味しいっ、桃ゼリー!」
「日出実のグレープフルーツの、一口ちょうだい」
「どうぞどうぞ、乃梨子さんのはっさくも美味しそうですね」
「食べる? ん」
 ちょうどスプーンですくい上げたゼリーを、日出実の方に差し向ける乃梨子。
「え、あ、あ……」
 固まる日出実。
「どうしたの? はい、あーん」
「あああああああああああー」
「あはは、何それっ」
 緊張のあまりテンパっている日出実を見て、笑いながらスプーンを日出実の口の中に入れる乃梨子。
「あー、ずるい! 私も、私もあーんっ」
 それを見ていた笙子が、餌を待つひな鳥のように口をあけておねだりする。
「あれ、笙子ははっさく、あまり好きじゃないって言ってなかった?」
「う、嘘だもんっ。乃梨子ちゃんの食べさせてくれるはっさくなら好きだもんっ」
「もー、何なのよ、それ」
 可笑しそうに笑いながら、乃梨子は笙子に食べさせてやる。笙子は幸せそうに、飲みこんで息をつく。
「じゃあ、次は私が乃梨子ちゃんに、あーんしてあげるっ」
「え、なんですか笙子さんそれっ。わ、私もしたいですっ」
「あはは、なんだこれーっ?」
 同時に付きだされた二つのスプーンをみて、声を出して笑いだす乃梨子。
 結局この後、三人でゼリーの食べさせっこ大会になったのであった。

 

 勉強会も、一度休憩に入ると少しダレてくる。なかなか、次の勉強に手が出ていかない。
「笙子も日出実も、そろそろ再開した方がいいんじゃない?」
「うーん、そうだけどさー」
 なかなか、そういう気にはならない。注意している乃梨子だって同じである。もっとも、乃梨子の場合、教えるために呼ばれているわけであり、生徒の二人がやる気を出さない限り、乃梨子自身のやる気などなかなか起きないわけだが。
 微妙な空気が流れている中、部屋の外の気配に変化が訪れた。
「ん、お姉ちゃんが帰って来たのかな?」
 笙子が首を傾げる。
「克巳さま、だよね。挨拶しておいた方がいいかな」
「え、別にいーよ」
「そういうわけにもいかないですよ、先輩なんですし」
 乃梨子と日出実が立ちあがるので、笙子も渋々と立ちあがり、部屋の扉をあけて廊下に出る。
 すると、ちょうど二階に上がってきた克美の姿が目に入るが、克美は一人ではなかった。隣には、見目麗しい美女が立っている。
「あれ、えと、江利子さま……ですよね」
 乃梨子が口を開く。
「わ、ほ、本当だっ! あああの、お邪魔していますっ」
 わたわたと頭を下げる日出実。
「あら、ごきげんよう。ええと、確か貴女は志摩子の妹よね。そちらの子は、お友達かしら?」
「は、はひっ、高知日出実と申します」
「へえ、江利子さまと克美さまって、お友達だった……ん?」
 と、そこで乃梨子の目が一点に注がれる。
 克美と江利子は手をつないでいた。
 笙子も日出実も気が付き、注目する。
「ほ、ほら、もう挨拶はいいでしょうっ。江利子さん、中に入って。笙子達も、テスト勉強で集まったんでしょう? しっかり勉強しなさいよ」
 はっとしたように克美は江利子の手を離すと、微妙に頬を赤らめ、慌ただしく江利子を自室に押し込み、姿を隠してしまった。
 乃梨子、笙子、日出実の三人は、顔を見合わせ無言で部屋に戻る。
 そして。
「え、何っ、ひょっとしてあのお二人、お付き合いされているの?」
「そうそう、お姉ちゃんは隠しているつもりらしいんだけど、バレバレだっての」
「へー、そうなんだ」
 色めき立つ三人。
「でで、でも、お似合いですよね、素敵ですっ」
 頬を染め、瞳をキラキラと輝かせ、まるで夢見る少女のような日出実。一方で笙子は、少しうんざりした表情。
「でもさ、一緒に住んでいる妹の身にもなってよ。しょっちゅう家に遊びに来て、いちゃいちゃされて……時々、声とか漏れ聞こえてくるし」
「こここ、声って、な、何の声ですかっ!?」
 鼻息荒く、聞いてくる日出実。
「え、や、詳しくは分かんないけれど、多分、愛を語らっているような」
「きゃあああっ!」
 両手で頬を抑え、悲鳴のような歓声を上げる日出実。
「あのね、実の姉の、変な声を聞かされる私の身にもなってってばー。あとさ、お茶を持って行ったら、うっかりキスシーンだったり」
「き、き、キスシーンっ!」
「日出実、ちょっと落ち着きなさい」
「ご、ご、ごめんなさい。少し刺激が強くて……」
 口元を手で抑える日出実。
「ああ、でも素敵ですね、恋をして、お付き合いするっていうの」
「まあ確かに、江利子さまと付き合い始めてから、急激にお姉ちゃんが綺麗になったことは認めるけどね」
「二人ともいい加減にして、そろそろ勉強を」
 浮かれている二人をいさめようとした乃梨子だったが。
「何言っているの、乃梨子ちゃん、乙女に恋バナは外せないでしょう!」
「そうですよ、ここまで盛り上がって、止められないですって」
「年頃の女子高校生が三人集まっているんだから、こりゃもう恋バナっきゃないよ!」
「そ、そう?」
 二人の気迫に気圧される乃梨子。
 恋バナの対象が女の子であることに対して、既に疑問は誰も持っていない。
「じゃあ……笙子と日出実は、好きな人、いるの?」
「……え?」
「いや、だから、恋バナでしょ?」
 そこで二人は、ちょっと失敗したことに気がついた。まさかここで、目の前にいる乃梨子の名前を出すほどの度胸はない。かといって、乃梨子以外の女の子の名前を出して誤解されるのも嫌だ。
 進退窮まるとはこのことかと、苦悩する。
「……わっ、私達よりも、乃梨子さんの好きな人のこと、聞きたいなー、なんて」
 苦し紛れに、日出実が矛先を変える発言をした。
「えっ?」
「そうそう、私も乃梨子ちゃんの方がききたーい!」
 咄嗟に、笙子ものってくる。
 多数決になれば、2対1で勝てる。
 乃梨子の好きな女の子の名前が聞けるという、嬉しいような、恐ろしいような展開だが、自爆するよりはマシだ。
「えええ、私? 私はいいでしょ、別に」
「駄目ダメ、乃梨子ちゃんのが聞きたいなー」
「え、あー、その、あ、ほら笙子、携帯、メールじゃない?」
「ん? あ、ホントだ」
 誤魔化すような乃梨子だったが、笙子の携帯が震えており、メールの着信を知らせていた。携帯電話を手に取る笙子。
「はるちゃんからだ」
「はるちゃんって……もしかして、春日?」
「そう、メル友なんだよ。はるちゃんって、マメだよねー、メールとか」
「……いや、そんな話、聞いたことないんだけど」
 乃梨子の呟きなど聞こえないようで、笙子は素早くメールを返信する。
「そういえばさ、お姉さんの声が聞こえてくるって言ってたけど、本当なの? よほど大きな声じゃないと、隣の部屋の声なんて聞こえないよね」
「ふふ、あまーい、日出実っちゃん! こっち来て」
 携帯電話をクッションの上に放り、笙子が立ちあがる。乃梨子と日出実は「はて」という感じで顔を見合わせた後、笙子の後を追うようにして立ちあがる。
「確かに、普通は聞こえないけれど、じゃじゃん! このクローゼット」
 乃梨子と日出実に紹介するように、大げさに手を広げて指し示す、ごく普通のクローゼット。後から購入したものではなく、部屋に作りつけのクローゼットだ。
「このクローゼットの一番奥が、隣の部屋と一番、間が薄い個所なわけなのよ。ついでに私が削って、さらに薄くしてあるし」
「え、でも、中に入れるの?」
「この辺の荷物を出せば、ちょっと狭いけれど……」
「とゆうか笙子、あんたいつも、こんなことしているの?」
「いつもじゃないよ、私が家にいるときに、江利子さまが遊びに来たときだけだよ」
「それって、いつもじゃん……」
 と、なんだかんだ言いつつも興味があるのか、日出実も乃梨子もクローゼットの中に身を押しいれようとする。
「せ、狭い」
「暑いし」
「すぐにエアコンで中も涼しくなるって……ほら、シッ」
 クローゼットの奥に耳と頬っぺたを押し付ける笙子。ならうように、日出実と乃梨子もどうにか耳を押し付ける。
 しばらく押し黙って様子を窺っていると、やがて何やら声が聞こえてくる。明瞭とはいかないが、それでもどうにか聞きとれるか。

『……す、好きよ、江利子さんのこと……』

「おおお、い、いきなりヒット!?」
「しっ、続きがっ」

『――だけど――――美さん――だし―――』
『え、え、江利子さんの、全てが好きよっ』
 江利子の声は聞こえづらいが、克美の声はよくわかる。場所が壁に近いのか、あるいは克美の方が随分と大きな声で話しているようだ。
『じゃあ、どうして――なの――』
『と、隣に妹たち――し―――そんな――』
『――やっぱり―――ね――』
『だ、駄目よ、江利子さんっ! あ、あっ――!』
 克美の声が、高くなる。
 聞いていて、ドキドキしてくる。
「ほ、本当に、このまま聞いていていいんでしょうか?」
 日出実の声が下から聞こえて来て、ふと、笙子は気がつく。
 笙子の脇の下に顔を突きだしてきている日出実は、笙子の腰に抱きつくような格好になっているのだが、その日出実の胸が思いっきり腰の上あたりに押し付けられている。日出実の胸は三人の中でも一番小さいが、薄いTシャツにスポーツブラで、柔らかさが遠慮なく伝わってくる。
 更に乃梨子は、笙子の斜め上くらいに顔が位置していて、必然的に乃梨子の胸は笙子の肩に乗っかるようになっている。標準的サイズの乃梨子の胸だが、日出実同様、夏の薄着で肌の感触が伝わりやすく、乗っかっているのが分かる。それどころか、押されているため、寄せて上げての状態になっていて、いつも以上のボリュームで笙子の後頭部に押し付けられていた。
 ああ、顔を反対方向に向けていれば、顔全体に至福の感触を受けることが出来たのにと、心の中で嘆く笙子。だが待て、今からでも遅くないのではないか。体勢をごく自然に変えるようにして、乃梨子の胸に顔を埋める。
 イクしかないと、首を回しかけたところで、不意に胸を鷲掴みにされた。
「ふにゃああああっ!?」
「あややっ、ご、ごめんなさい笙子さんっ」
「いいからっ、いやぁんっ」
「ちょっと笙子、狭い中で暴れない……うひゃあっ!?」
 笙子に抱きついていた日出実だったが、克美たちの声を聞いて興奮したのか、自然と手が動いて笙子の胸まで辿り着いていて、揉んでしまったのだ。しかも、キャミソールの内側から侵入して、生乳を直に。
 慌てる日出実だが、笙子が身体を壁に押し付けるので、壁と胸の間に手を挟まれて抜くことが出来ないし、汗でしっとりとした肌も、手に吸いつくようで離れない。
 狭いクローゼットに三人で無理に押し入っている格好で、自由に動くこともできず、もがけばもがくほど、三人の手足が絡まっていく。
「ちょっと、やだ、変な所触らないでぇっ」
「わ、私じゃありませんっ、ひ、お尻、撫でられましたっ!?」
「おっぱい揉んじゃいやーーんっ」
「やぁぁっ、首筋、弱いですっ!」
 どたばたと大騒ぎして、クローゼットから床に倒れ、転がる。
「――ちょっと笙子、何騒いでいるのよっ……って、笙子!?」
 さすがに騒ぎに気がついたのか、部屋に目を吊り上げて飛び込んできた克美だが、部屋に入った途端、動きが止まる。
 克美が見たのは。
 床の上で抱き合っている笙子と日出実の姿。上になっている日出実の手は笙子のキャミソールの中に入り込み、豊満な胸を掴んでいる。
 下になっている笙子は、両足でがっちりと日出実の腰に絡みつき、足で日出実のスカートをまくりあげている。手はやっぱり、日出実のシャツの中に侵入している。
「あ――――ご、ごめん、えと、あなた達もするならするで、もうちょっと静かにお願いね……って、失礼っ」
 頬を紅潮させると、克美は素早く外に出ていってしまった。
「……イタタタ、頭、打っちゃった」
 そこへ、クローゼットからよろよろと出てくる乃梨子。顔をしかめ、頭を手で抑えている。
「あれ、二人とも何しているの? パンツ丸見えだよ」
「うあああ、ご、ごめんっ、笙子さんっ」
「いやっ、私こそっ!」
 慌てて離れる二人だが、なぜか正座して向かい合い、お互いを見て顔を赤らめる。
 日出実はいまだ手の平に残る、生々しい笙子の胸の手触りを思い。
 笙子は、ささやかな日出実の乳房の膨らみの触り心地を思い。
 そして乃梨子は、どさくさにまぎれて揉んだ笙子と日出実、二人の乳と、お尻の感触を思い。
 三者三様の表情を浮かべるのであった。

 

 そして。
「うわーーん! テスト範囲、まだ終わってないよー!」
「結局、勉強会だってあんま勉強しなかったからでしょうが、まったく」
 テスト当日、嘆き顔の笙子、あきれ顔の乃梨子、諦め顔の日出実がいた。
「さ、最後の悪あがきをっ」
 テスト開始前の僅かの時間、必死に教科書にヤマを張って覚えようとする笙子。
「自分で悪あがきって言っているし」
 苦笑する乃梨子は、もう教科書などしまって余裕の様相。
「とりあえず、平均点を目指します。一応、重要な所は乃梨子さんに教えてもらって、抑えたつもりですから」
「えーっ、何それっ!? 日出実ちゃんの裏切り者ーーっ!」
「裏切ってませんよ、笙子さんあの時、漫画読んでいたんじゃないですかっ」
「あ、私が休憩している隙に教えてもらっていたんだ! ひどいっ!」
「休憩ばっかりだったじゃないですかっ。もうっ」
 頬をぷくーっと膨らませる日出実。
「まあまあ、とにかく、精一杯頑張ろうよ。そうすればすぐに、夏休みだよ」
 机に突っ伏す笙子の頭を撫でる乃梨子。
 笙子は途端に、幸せそうなふやけた顔になる。
「そうだね、ま、赤点さえとらなければ、もういーやっ」
「そんな、あっさりと……」
「テスト終わったら、カラオケ行こうっ! あと、夏休みになったら――」
 嫌なことを忘れようとしているのか、嬉々としてテスト後のことを笙子が話し始めた時、教室の扉が開いて教師が入ってきた。
「はいみんな、席について――――」
 ドタドタと、各自が席に戻っていく中。
「よし、二人とも、頑張ろう。私から、パワーを」
 言った乃梨子が、席に戻りかけた笙子と日出実、二人の腕を掴んで引きとめる。そして、二人が何事かと思う前に、二人の手の甲に素早く唇を触れさせた。
「――――っ!?」
「の、のりっ!」
「こら、そこの二人、早く席につきなさい」
 教師に注意され、ぎくしゃくと自席に座る笙子と日出実。
 席に着いた二人に向けて、乃梨子は「頑張れ」という意味を込めて、ウィンクを送った。途端、乃梨子の熱光線を受けて、真っ赤に茹だる笙子と日出実。

 結局二人とも、初日のテスト教科については、赤点ギリギリという出来だった。

 

「何はともあれ、これで心おきなく、夏休みに突入よっ!」
 テスト最終日を終え、帰り道で笙子が跳ねる。
「しょ、笙子さん、スカートが、裾がっ」
 はしゃぐ笙子を、わたわたと追いかける日出実。
「うーんっ、夏休みかぁっ」
 伸びをしながら、前を行く二人を見て、軽く微笑む乃梨子。
「ほらーっ、乃梨子ちゃん、早く帰って駅前集合だよっ?」
「今日は、カラオケですからねっ!」
 前方で、二人が手をあげて乃梨子を呼んでいる。
「はいはーいっ、今行くってばっ!」
 乃梨子も手を上げ、軽く足を速める。

 梅雨も、もうすぐ明ける。

 空には、既に真夏のような威力を持った太陽。

 

 だけど三人娘のパワーは、そんな太陽の熱ささえも吹き飛ばすようだった。

 

おしまい

 

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