【作品情報】
作品名:大岩壁
著者:笹本 稜平
ページ数:361
ジャンル:エンタメ
出版社:文藝春秋
おススメ度 : ★★★★★★☆☆☆☆
山に対する描写の見事度 : ★★★★★★★★☆☆
こういう人におススメ! : ちょっと不穏な山岳小説でも好き
「魔の山」、ナンガ・パルバット。
ヒマラヤ、8000メートル級の山のなかで、多くの犠牲者を出し、通称「人食い山」の異名で恐れられてきた。
立原祐二、48歳。
5年前に、3名のパーティで登攀に挑むも、頂上目前にして断念。しかも、自身の指だけでなく、大事な友人・倉本を失った。
が、クライマー人生を締めくくるにあたって、生還した木塚とともに、「魔の山」に挑むことを決意する。
緻密な計画を積み重ねているうちに、予期せぬ参加希望者があらわれた。倉本の弟、春彦だ。
卓抜たる技術を持つもまだまだ経験に欠け、高度順応も未知数。
しかも、協調性をふくめて人間性に問題があるばかりか、兄の死に不審を抱いている気配がある。
さらに、同じく冬期初登頂をめざすらしいロシアのパーティにも不穏な動きがある。
さまざまな不安要素を抱えながらも、登攀は開始された。
笹本さんお得意の山岳モノ。
なんか久しぶりに手を出しました。
山岳モノはやはり燃えるものがありますよね。
人の力の及ばない、雄大な大自然に挑み、そこで苦労しながら、運とも戦いながら、ただひたすらに目指していく。
そこに、どんなドラマを入れ込むかが山岳小説の妙になるでしょう。
本作では、ベテランのクライマー、立原を主役に。
数年前に挑戦した登攀では途中で断念しただけでなく、パーティの一人倉本を失った。
それから時がたち、クライマー人生の集大成としてナンガ・パルバットに挑むことにしたのだが、そこに倉本の弟・春彦が一緒に上りたいと声をかけてくる。
以前のこともあるのと、春彦の実力もあってパーティを組むことになったが、この春彦というのが協調性がない。
また、兄が死んだことに対して疑念も抱いているようで・・・
という、一筋縄ではいかない登攀になりそうな感じなわけですが。
山岳に、サスペンスとか犯罪や事件をからめてくるというのはしばしば見ます。
しかしこの春彦という男の行動がまあ、酷い!
よく、パーティから追い出そうとしないなぁ。。。と、思ったりも。
登攀が始まったら無理なんだろうけれど、それまでに彼の人間性はかなりわかったと思うんだけど。
山岳に関する、登攀に関する描写は流石。
そこに呑み込まれて一気に読み進めていける。
ストーリーは、春彦の存在をどのように受け入れられるかで評価がかわるかも。
やっぱり春彦という存在ね。
個人的には、読んでいて不快になっちゃう。
まあ、そういうキャラクターとして描いたのかもしれないから、そういう意味では成功かも?