【作品情報】
作品名:オリンピックの身代金(上)
著者:奥田 英朗
ページ数:480
ジャンル:エンタメ
出版社:講談社
おススメ度 : ★★★★★★★☆☆☆
下巻が気になる度 : ★★★★★★★★☆☆
こういう人におススメ! : スリルとサスペンスに満ちたエンタメ作品を読みたい
小生、東京オリンピックのカイサイをボウガイします――
兄の死を契機に、社会の底辺というべき過酷な労働現場を知った東大生・島崎国男。
彼にとって、五輪開催に沸く東京は、富と繁栄を独占する諸悪の根源でしかなかった。
爆破テロをほのめかし、国家に挑んだ青年の行き着く先は?
時は昭和39年。
東京オリンピックを直前に控えて日本が沸き立っている頃。
戦争の傷から復興し、このオリンピックで日本の国というものを世界に見せてやろうじゃないかと日本全体が盛り上がっている。
当然、東京はすさまじい勢いで成長をしている。
一方で、地方の村などは前までと同じ貧しいままだし、東京だって現場労働者といえば地方からの出稼ぎなど貧しい人ばかり。
富めるものと、社会の底辺ともいうべき現実を目にしたのが、東大生の島崎国男。
これが本当に正しい姿なのか。
資本主義とはいえ、貧しい人は貧しいままなのか。
東京の表と裏を知った国男は、まるで流されるようにテロへと向かって行く。
いつの世にもある、富めるものと、貧しい者たちの立場の差。
金持ちは、それはそれで努力をして至ったのかもしれないけれど、貧しい者はそもそも努力もできない。
貧しい農村に生まれ、勉強することもできず幼い頃から働かされ、一定の年齢になれば勝手に結婚も決まり、出稼ぎに。
活きていくことに精一杯で、なんのために生きているのかも分からなくなるような人生だけど、どうすればよいのかも分からない。
そういう人たちの存在を知った国男は、決して熱く憤るわけではない。
ただ冷静に、これが本当にこの国なのか。
この人たちはこのままでよいのか。
そういう疑問が首をもたげ、少しずつ行動が変わっていく。
そういう人たちにとって東京オリンピックは、晴れがましいものであると同時に憎らしくも感じる。
もし、威信をかけたオリンピックが失敗に終わったら?
この上巻では、国男が現実を知って考えや行動が変わるところが淡々と描かれていく感じ。
それが逆に下巻でどうなるかという思いをおこさせる。
さあ、その勢いをもって下巻にいきましょう。
最初は時系列がいったりきたりするので、読んでいて今が何でどこなのか少し分かりづらくかんじるかも。
でも、あまり気にしないでも楽しめる。