【作品情報】
作品名:聖女の毒杯 その可能性はすでに考えた
著者:井上 真偽
ページ数:272
ジャンル:ミステリー
出版社:講談社
おススメ度 : ★★★★★★★☆☆☆
どこまで考えているのかと思っちゃう度 : ★★★★★★★★☆☆
こういう人におススメ! : ロジックで証明し納得したい人
聖女伝説が伝わる地方で結婚式中に発生した、毒殺事件。
それは、同じ盃を回し飲みした八人のうち三人(+犬)だけが、しかも飛び石的な感じで殺害されるという不可解なものだった。
その事件に、中国人美女のフーリンと少年探偵・八ツ星が乗り出す。
全ての可能性を考えて潰し込むことで、事件が「奇蹟」でしかないことを証明しようとする探偵・上苙は、今回こそ事件が「奇蹟」のなせる業だと証明できるのか?
シリーズ第二作目。
ちょっと風変わりなミステリー。
発生した事件を解決するというより、存在する可能性を全て否定することで、その事件が人の手には負えない「奇蹟」であることを証明したいというのだから。
とにかく面倒臭い推理になります(笑)
可能性なんて幾らでも挙げられるのに対して、その可能性がないと明確に論破できないといけないのだから。
そのためには色々な条件付けが必要で、本作でもそういう条件が散らばされている。
前半は、というか終盤までは中国人美女のフーリンと、少年探偵八ツ星が事件の起きた村に居合わせることで事件解決に挑む。
八ツ星は、容疑者たちが誰も犯人の決め手がないということを示して長期戦にもつれこませる。
それに対し、真犯人というか、犯人である可能性を提示される。
さあ、いかにして破る?
本来の主人公、上苙が登場するのが本当に終わりの方だけなので、そこをどうとらえるか。
ある意味、そこまではお膳立てというか、条件付け的なところが多いわけで。
でも上苙を先に登場させちゃうと、展開が早くなり過ぎちゃうんですかね。
だって、「その可能性はすでに考えた」にしかならないわけですから。
1作目ではその辺、複数の相手の推理に応える、という方式を採用することで短編ではないけれどそれに似た形にもっていけた。
本作ではそうはいかず、必然的にラストで真打登場となるわけだが。
そっからの方がどうしてもテンポも良いし、解決編という感じで面白くなる。
全体を通して論理で証明していくので、そういうのが好きな人には堪らないのではないか。
小難しい感じの内容ではあるのだが、登場人物がラノベ的な感じで言動もそうなので、その辺で力が抜けて読める。
この方向でシリーズを続けていこうとすると大変だろうなぁ。
と、そんなことが心配になる(笑)
論破していくのが論理的というか、色々と前提やらなにやら置いて説明していくので、本当に理解しようとすると大変かも。
まあ、その辺はある程度読み飛ばしても大丈夫といえば大丈夫ですが。
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