【作品情報】
作品名:スタートボタンを押してください
著者:ケン・リュウ,桜坂 洋 他
ページ数:384ページ
ジャンル:SF
出版社:東京創元社
おススメ度 : ★★★★★★★☆☆☆
ゲーム度 : ★★★★★★★☆☆☆
こういう人におススメ! : ゲーム好きな人
ゲームをテーマとしたSFアンソロジー。
ゲームと小説というのは相性が良く、昔からそういった作品は多く生まれてきているが、ゲームが世間的に認知された頃の世代が成長し、更にゲーム自体も市場が大きくなってSFと更に融合しやすくなった。
執筆陣は、ケン・リュウ(紙の動物園)、桜坂 洋(All You Need Is Kill)、アンディ・ウィアー(火星の人)をはじめとする面々で全12編が集められている。
作者も作品もバラエティに富んでいる。
ゲームの世界に入っちゃうパターンもあれば、ゲームを物語のガジェットとして扱う作品もあり、また左記のくくりでは同じでも内容は全く異なる作品ばかりであり、必ず好みの作品が見つかるだろう。
個人的に幾つか紹介など。
■救助よろ
恋人がゲームにのめり込んでしまい別れることになった女性が、どうにか恋人と話そうと自分もMMORPGにログインする。ここまで読むと、その女性もゲームにはまってしまうのかとか思うが展開は全く異なる。ゲームと現実世界が入り混じり、やがて女性は全く違う意味でそのゲームの深みに引きずり込まれていく。
この作品で感じたのは、SFホラーテイスト。もし、こんな技術が進化して本当に現実化したら? そういうのもSFの醍醐味だが、ゲーム世界に当てはめた感じ。
美しくも恐ろしさを感じるラストだった。
■1アップ
ネットゲームの友人が死亡し、その葬儀に向かった3人が見つけたのは、故人が残した謎の自作ゲーム。
そのテキストアドベンチャーゲームに導かれるようにして3人が向かう先は?
ゲームを進めるうちに、なぜその友人がこのゲームを残したのか分かり、終わり方が心地よい。
■キャラクター選択
夫のFPSゲームをプレイする彼女のプレイは一風変わっている。
敵を倒さず、ミッションをクリアせず、そのFPSゲームで誰も気にしないようなことをプレイヤーにさせていくと思わぬ展開が繰り広げられる。
自由度の広いゲームでも、人は大抵与えられたミッションをこなすし、そうでなくてもゲームの雰囲気というものがある。それを無視して人それぞれの楽しみを見つけるのもゲームの醍醐味だが、今回の彼女の行動が最後にどうなるのか読んでいて先を気にさせられる。
更に最後、思いがけない結末は、更なる先を読みたいと切に思わされる。
本当にこの後、どうなるのか読みたいのだが!?
■時計仕掛けの兵隊
女性バウンティ・ハンターは、せっかく捕まえた若者を逃がそうとしている。その理由は、若者が作ったゲームをプレイしたことにある。
ゲームを進めることによってゲーム内の謎はもちろん、捕まえた若者の謎というか人生というかも判明していくという、そのリンクのさせ方がさすがケン・リュウと思わせる。
切なく、哀愁さえおびるその謎は、確かに女性バウンティ・ハンターが若者を逃すことになったと納得させられるものだ。
他の作品も様々に魅力的で、ゲーム好きな人、ゲームが好きだった人、そういった人たちなら間違いなく楽しめるアンソロジー集に仕上がっております。
ゲームとかプレイしない人に対しては、当たり前だけど訴求力は弱いかもしれませんが、そういうアンソロジー集なのでそこを改善しろと言うのはお門違いですね。
SFを読む人なら、ゲームしなくても大丈夫かな?
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