【作品情報】
作品名:嘘をつく器 死の曜変天目
著者:一色 さゆり
ページ数:297ページ
ジャンル:ミステリー
出版社:宝島社
おススメ度 : ★★★★★★☆☆☆☆
芸術理解度 : ★★★★★★★☆☆☆
こういう人におススメ! : アートとミステリの融合を読みたい
陶芸家のもとに弟子入りした早瀬町子だが、その師匠である西村世外が殺されてしまう。
その世外が作り上げた、日本に数点しかないという、瑠璃色の光彩を放つ「曜変天目」。
なぜ、どのようにして作り上げたのか。それを誰にも口外しないのはなぜなのか。
陶芸の世界を舞台に、人間関係と芸術、そして宗教のからみあったアートミステリー。
芸術の世界、その中でも陶芸の世界を舞台にしているという時点で、今まで触れたことがないわけで。
陶芸界に関する豆知識とでもいうのでしょうか、どのような種類があるのかとか、どのような焼き方をするのかとか。
どういう土があるのかとか、そういった情報がなかなか分かりやすく説明されている。
小難しいことなく、さらっとそういう専門知識を読ませてくれるのは良いですね。
内容が正しいのかは分かりませんが、作者の略歴を読む限り間違ってないでしょう。
殺人事件が起きるミステリーではあるのですが、トリック、謎解きに重点を置いているのではない。
陶芸という世界を舞台にした人間関係を主としており、そういう意味ではミステリーというよりサスペンスかも。
犯人をつきとめることになる契機は、当然ながら陶芸、作り上げた作品から結びついてくるのだが、その辺はさすがに専門知識がないと分からないですね。
でも前述したように、トリックに挑むというより、人間関係から犯人あてをしていくように感じられる。あくまでトリックはそれを補完するためといったところ。
芸術の世界ということで、そこを解決に導くのは警察ではなく、町子の先輩である馬酔木という保存科学を専門分野とする大学の教授。
なかなかキャラもたっており、もしかしたらこの人でシリーズものにしていくのか? そうとも感じ取れる。
曜変天目、そういうものがあるのですね。
この本を読まない限り知ることもなかったと思うので、こういう何かしらの分野に特化したミステリーってのもアリですね。
むしろ、ミステリーよりも伝統工芸や保存科学といった部分の薀蓄の方が読んでいて楽しいかも。
ミステリーとしては弱いってところと、人間関係も、読んでいるとなんとなく予想が付きやすいものだと思う。
あやしい人はあやしい。
まあ、分かりやすいというのを良い方にとらえることもできますけどね。
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