【作品情報】
作品名:トギオ
著者:太朗 想史郎
ページ数:309
ジャンル:SF、エンタメ
出版社:宝島社
おススメ度 : ★★★★★☆☆☆☆☆
物語のよくわからない混沌度 : ★★★★★★★★☆☆
こういう人におススメ! : 退廃した世界感の物語とか好き
日本に似ているけれど日本ではない架空の世界、架空の都市を舞台にした、一人の男の物語。
捨て子の「白」を拾ったことから狂い始める男の人生。
やがて男は故郷を捨てて「東暁」へと出ていく。
破滅に向かって突き進むかのような生活。
暴力と退廃のまじりあった近未来において、男はどこへ向かうのか。
オリジナルの世界観を持って作り上げ、物語の始まりからなんの説明もなく始まっていく。
どういう世界なのか、どういう文化なのか、どういう技術なのか。
それらは皆、記載されている情報から読者が想像するしかない。
懇切丁寧に説明するのではなく、ある意味突き放した感のあるところも、手法としては存在するものだ。
そこに引き込まれ、入り込んでいけるかどうか、だろう。
とにかく独特な世界を、作者独自の感性で描写しており、そこにハマることが出来れば物語に酔いしれることが出来る。
ただ逆に言えば、ハマれない人は全くハマれないと思われる。
おそらく作者もそれは分かっていて、潔く割り切って描いたのだろう。
良い点と悪い点というのは背中合わせになるものだが、これはそれが極端に出た作品。
だから、好きな人は好きだし、駄目な人は全く受け付けないはず。
ある意味、手に取るのはギャンブル的な作品。
SFでありファンタジーであり、そこに実は政治的な思想や社会背景、そういったものを組み合わせている。
異なるものを弾き出そうとする社会。
上流と下流。
怪しげな薬や快楽に溺れる人々。
世界を正そうとする人、見て見ぬふりをする人、気付いていない人。
そんな、ごたまぜの世界。
人にお薦めできるかといえば出来ない。
でも、ピンポイントでハマる人には堪らない。
そういう、作品。
「このミステリーがすごい」大賞の作品だけにミステリーを期待すると思いますが、ミステリーではありません。
近未来を舞台にしたSFといった方が近い。
さらにクライムというかノワールというか、そういう雰囲気もある。
第二部までを読んであわない、駄目だと感じたら、素直にギブアップしてもよい。
それくらい、読み手によって分かれる作品。