【作品情報】
作品名:この恋が壊れるまで夏が終わらない
著者:杉井光
ページ数:278
ジャンル:SF、エンタメ
出版社:新潮社
おススメ度 : ★★★★★★★☆☆☆
事件の真相に驚く度 : ★★★★★★★☆☆☆
こういう人におススメ! : タイムリープものが好きな人
時を遡ることができたなら。誰でも夢見る力を僕は生まれつき持っていた。
そんな能力もさして活用せずにひっそりと過ごしてきたけれど、高校に入り初めて恋をする。
相手は図書委員の純香先輩。
放課後は司書室に入り浸り、僕の青春は色づいていった。けれど夏休み最後の日、先輩は凄惨な死体で発見される。
先輩を救うため、僕は時を遡る――
タイムリープと青春もの。
主人公は、自分の意思で12時間だけ時間をさかのぼることができるタイムリープの能力の持ち主。
ただ、タイムリープをすると肉体的ダメージもあるため、しょっちゅう使うわけでもない。
むしろ12時間の努力が無駄になってしまうので、あまり活用しないようにしている。
そんな主人公が恋をしたのが、図書委員の先輩、純香。
ところが夏休みの最後の日に純香が無残な死体で発見されたことから、主人公は能力を活かしてタイムリープし純香の死を回避しようとする。
しかし、何度繰り返しても必ず純香は死んでしまう。
しかも毎回、場所も異なり、主人公がいないところで死んでしまう。
悲劇を繰り返さないためタイムリープを繰り返す主人公をあざ笑うかのように、純香の死は繰り返され・・・
ということで、タイムリープなら定番の悲劇を回避するために主人公が繰り返し苦闘するもの。
あらかじめ定められた運命だから回避できない、というのともちょっと異なる。
というのも、純香の死を止めようとしても、純香に会うことができないから。
殺人現場で張り込んでいたら異なる場所で発見され、そこを注意したらまた元の場所で死体が見つかり。
主人公の行動がなんらかの影響を及ぼしているのか?
そういうところを予測するのもこの手の作品の楽しみの一つだが、なかなか分からない。
どうすれば回避できるのか、犯人は誰なのか、どうして主人公の先回りをするかのように事件が起きるのか。
その真実、そしてそれを回避した手段とは。
うまいこと展開、設定が考えられていて、それらも作品中に伏線として描かれている。
最後に明かされる真相で、頷けるものでもある。
ハッピーエンドとはいかないけれど、タイトル通り、恋が壊れて夏が終わる。
ちょっと切なくビターな感じが、青春ぽくて良いね。
タイムリープして事件解決!
とスッキリするような作品を求めている人はご注意を。