【マリみてSS(由乃、祐麒他)】ぱられる! 10<笙子・乃梨子ー3>

 

 バランスを崩した祐麒は、無意識のうちに掴むものを求め、もがいた手が偶然に乃梨子の腕をつかんだ。乃梨子は咄嗟に、その祐麒の手を振り払った。支えを失った祐麒はそのまま転倒しそうになったが、前のめりになる格好のそのまま、生存本能に導かれるままに今度は乃梨子の太腿にしがみついた。
「ぎゃっ! な、何するのっ!」
 いきなりの破廉恥行為に、乃梨子は身をよじって振りほどこうとする。祐麒の体が左右に大きく振られ、その勢いでスライダーに足がかかり、水で濡れて滑りやすくなっているので当然のように足を滑らせる。
「うわっ、あ、ああぁぁあっぁっ!??」
 しがみつかれた格好のままの乃梨子も、尻餅をつく。そして、抱きついてきた祐麒もろともスライダーに引きずり込まれていく。
「ちょっと、え、やだっ、うそっ、ああああっ!!」
「あ、の、乃梨ちゃん、祐麒お兄ちゃんっ!?」
 笙子の声が遠ざかる。完全にスライダーに入って滑り落ち始めたのだ。
 いや、問題はそれではない。太腿に抱きついてきた祐麒は、乃梨子にタックルをするような格好になったのだが、倒れた拍子に乃梨子の下腹部に顔を埋める形になっていた。
「ぎゃああああっ! へ、変態っ! どこ触っているのよ!!」
 叫ぶ乃梨子であったが、乃梨子自身の太腿で祐麒の顔を挟み込んでおり、またウォータースライダーをその状態のまま滑り落ちていることもあり、祐麒にもどうしようもない。というよりも、息ができなくて苦しい。どうにか顔を脱出させようとするのだが。
「あ、や、変なとこ触っちゃ……くはっ!」
 乃梨子の太腿による挟み込みの力がさらに増し、抜け出すこともままならない。そして、苦しいのだけれど、柔らかくて熱くてどこか幸せな気分にすらなってくる。
「あ、あ、ああああああっ!!!」
 激しい衝撃と派手な音、そして跳ねるプールの水。着水すると、乃梨子に挟まれたままお尻に押されるようにして水没する。危うく窒息死しかけたところで、ほうほうの体で脱出する。
「ぶはあぁっ!!! はあっ、はっ、はっ」
 新鮮な空気を肺いっぱいに吸い込み、文字通り一息つく。
「……あ、あんた、ねえ」
 やはりプールから立ち上がった乃梨子が、体を震わせながら睨んできている。
「乃梨ちゃん、祐麒お兄ちゃん、大丈夫?」
 後を追って滑ってきた笙子も、声をかけてくる。
「わ、悪い。わざとじゃないんだ」
 さすがに申し訳ないと思い、謝るが、乃梨子はそれでも怒りがおさまらないのか、眉をあげて見つめてきている。
「いや、でも、ほら、なんだ。二条さん、胸はともかく太腿とお尻はバッチリ弾力があったよ、うん」
 どうにかしようと、乃梨子を褒めようと思い、褒め言葉を脳裏に浮かべようとしたが、実際に口をついて出たのは今しがた感じたこと。
 祐麒の言葉を聞いて、乃梨子、笙子ともに動きが止まる。そして、二人ほぼ同時に顔を朱に染め、怒りのオーラを体から放ってくる。
「待って、落ち着いてくれ二人とも。今のは事故だろう? なあ、その」
 言い訳が耳に入っているのかいないのか、二人はじりじりと迫り寄ってくる。
 そして。
「この、ド変態のスケベ!!」
「お、お兄ちゃんのエッチ!!」
 二人から立て続けに平手打ちをくらい。
 プールの中に崩れ落ちるのであった。

 プールでの遊びを終えての帰り道、楽しいことには楽しかったけれど、憤懣やるかたない思いも同時にあるわけで。思いだすだけで腹が立つ、祐麒の言葉、行動。
「楽しかったねぇ、今日は」
 隣で無邪気な笑いを浮かべている笙子は、いったい、何でそんなに祐麒を気に入っているのだろうか。それこそ、単に幼いころのすりこみではないかと思うのだが、口にしたら笙子の機嫌が悪くなるだろうから言わないが。
 途中、お腹が空いたこともあり、ファーストフードに寄り道する。ポテトとナゲット、そしてアイスティーを注文して席につき、お喋り開始。必然的にプールでの話が多くなり、乃梨子もやはり、プールでの出来事を思い出してしまう。
「ああもう、本当に変態エロね、あいつ」
 笙子が目の前にいるが、やっぱり遠慮していられず、素直な考えを口にする。ミルクとガムシロップをいれたアイスティーを、ストローでやや雑にかきまわしながら、ポテトを一口。
 あんな恥辱、生まれて初めてである。太腿に抱きつかれ、そのまま股間に顔を押し付けられ、お尻を撫でられ、お尻に顔を埋められるなんて。変態以外、なんと表現したらよいものか。
 さんざん、祐麒のことをこき下ろしていると、先ほどから笙子が黙っていることにようやく気がついた。さすがに言いすぎて気分を悪くしてしまったのだろうか、と思って笙子のことを見てみると、やはりどこか不機嫌そうな顔をしている。
「言いすぎたかな? ごめん笙子。でも私、それくらいのことをされたわけだし」
「違う。乃梨ちゃん、本当にそう思っている?」
「えー、当り前でしょう、あんなコトされて、もう最悪。平手一発なんて、甘かったと思ってるくらいなんだから。それに何、人のこと、胸はないけどお尻と太腿はむちむちしているような、下半身デブみたいなこと言って。失礼よね、そりゃ笙子には敵わないけれど、それなりにあるんだから。ふんだ、今に見ていなさいよ、いつかびっくりさせてやるんだから」
 鼻息荒く、そんなことを宣言していると。
「……なんか、祐麒お兄ちゃんのことを話すときの乃梨ちゃんの顔、生き生きとしている」
「えっ?? 何よ、そんなことないでしょう」
 意表をついた笙子の言葉に、本当にびっくりする。
 しかし笙子は続ける。
「それに、今に見ていなさいって、それってスタイルを良くして、そうなった素敵な乃梨ちゃんのカラダを見せてアピールするってこと?」
「えええっ、なにそれっ!?」
 大きな声をあげてしまい、慌てて口元をおさえるが、あくまで笙子は真剣な表情で見つめてきている。
 なんだ、ナイスバディになって乃梨子が祐麒に迫るとでも思っているのか、そんなのありえないというのに。
「やだなー笙子、やめてよ。そんなの、ないって」
「本当に?」
「当り前でしょう、もう」
 大体、想像できないではないか。頭の中で思い浮かべてみようとする。今より少し大人になり、胸が大きくなった乃梨子が、胸元の大きく広がった服で胸の谷間を強調しながら、祐麒に色っぽく迫る。
「…………」
「ちょっと乃梨ちゃん、何、真っ赤になっているの!?」
「な、なんでもないわよっ!!」
 急いで横を向き、熱くなった頬を手のひらでおさえる。
 馬鹿な想像をしてしまったというか、シーンが思い浮かんでしまったというか。アイスティーを吸い込み、心を冷ます。
「と、とにかく。そんな心配は無用だから、この話はおしまい」
「本当かなぁ……」
 疑わしそうな笙子の視線を受けながら、乃梨子はポテトをもう一本、口にくわえるのであった。

 

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