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ミステリー 書評

【ブックレビュー】九度目の十八歳を迎えた君と(著:浅倉 秋成)

更新日:

【作品情報】
 作品名:九度目の十八歳を迎えた君と
 著者:浅倉 秋成
 ページ数:261
 ジャンル:ミステリー
 出版社:東京創元社

 おススメ度 : ★★★★★★★☆☆☆
 青春の苦み度 : ★★★★★★★★★☆
 こういう人におススメ! : 大人になった今を前向きに考えたい人

 

■作品について

通勤途中、駅のホームで反対側のホームに立つ一人の少女。
その少女は、高校生の時の同級生だったが、十八歳の時の姿のままでそこに立っていた。
彼女は、主人公が卒業して大学に入り、そして就職して何年も経っているというのに、ずっと十八のまま高校に通っているという。

なぜ、彼女はずっと高校生のままでいるのだろうか。

追憶と青春のミステリー。

■良かった点

タイトルを見た時は、タイムリープ、ループ系の作品かと思ったが、そうではなかった。
彼女、二和美咲は十八のまま先に進んでいないというなかなか奇抜な設定。
言い張っているだけでなく、見た目も十八のまま、だけど過ごしてきた時の記憶はずっと残っているし、周囲の人も美咲だけが年齢を重ねないことを知っている。
それでいて普通に暮らしている。

「年齢を患っている」

ということらしい。
設定だけみればファンタジーだが、その設定のもと、なぜ美咲は十八のままでいるのかの謎を追うミステリー。
その謎は、主人公である間瀬が美咲と同級生であった高校生時代に遡る。
間瀬が思い出す高校生時代は、なんというか痛い。
それでも、高校生ならそういう思いを抱いてしまうかとも思わせられる感じ。
大人になって思い出すと胸が痛くなるような、切なくビターな時代であり、過ごし方。

謎もやはり、そういった高校生時代の心に大きく関わってくる。

登場人物達は、間瀬の現代の周囲の人と、そして高校時代のかつての同級生や先生たち。
出番はそれぞれさほど多くないものの、皆、なかなか良い味を出している。
もうちょっと登場人物同士の絡みを見たかったなという気もする。

ちなみに個人的には真鍋が良かった。
真鍋に襲われれば良かったのに(笑)

青春とミステリーがうまく融合した一作。
過去は良かったというものではない。
大人になって夢を叶えられたわけでもない。
でも、昔に戻りたいとかではなく、今は今で悪くないと言える、そんな気持ちをもたせてくれるのも良い。

■ここが改善できるともっとよかったかも?

主人公の高校時代の言動はちょっと、痛い。
高校生だからって、そういう行動しちゃうか? うーん、でもありかもしれない。
読みやすいけれど、どこか淡々としているので、圧倒的なパワーがあるわけではない。

 

九度目の十八歳を迎えた君と (ミステリ・フロンティア)

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