書評と主にマリア様がみてるの二次創作(旧:よしのXブレード)

マリア様の愛読書

はやて×ブレード

【はやて×ブレードSS(玲×紅愛)】戸惑いの日

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~ 戸惑いの日 ~

 

 

「それで、問3の証明なんだけど、これが分からなくて」
「ああ、それはまず、このpとqが有理数だと仮定して、式を変形すればいいのよ。これくらい、基本よ」
「いやあ、面目ない。数学はどうも苦手なのよね」
 テーブルを勉強机に見立てての即席勉強会が開催されている。
「……って、だからなんで、あたしの部屋でやるんだよっ」
 ベッドの上で軽いトレーニングをしながら、玲は勉強をしている紗枝と紅愛を睨みつけた。もちろん、そんなことでは全く怯む二人ではない。
「だからぁ、この部屋が一番広々としているって、前にも言ったじゃない」と、紗枝。
「もう忘れたの? 玲、記憶力、大丈夫?」と、これは紅愛。
「だあぁっ、もういいっ!」
 唸るようにしてから、うなだれる玲。
「なんだ玲、腹減ってんのか? ほれ、まんじゅう食え」
 ベッドで寝っ転がり、漫画を読みながらまんじゅうを頬張っていたみのりが、まんじゅうの箱をズガンと玲の横っ腹に突き刺す。
「だから、お前は食ってるだけなら帰れよ……しかもまた、まんじゅうだし」
 言いながらも、箱からまんじゅうを一つ手に取り、かじる。
 食べながらもう一度、机の方に目を向ける。
 相変わらず、紗枝が紅愛に何か教わっている。紗枝も決して頭が悪いわけではないが、剣待生ということで、どうしても学問よりは剣に割く時間の方が多くなる。成績は、余程ひどくなければ問題はないと割り切る者も多い。
 そんな中で、紅愛は剣の腕というよりも頭脳の力で剣待生の資格を取っただけあり、剣待生の中ではずば抜けて成績がよい。さすがに一般生徒には負けるが、それでも学年トップ10には入っていたはずである。
 ついでに言えば、紅愛は頭が良いだけでなく、教え方も上手い。玲自身、何度か教わったことはあるが、非常に分かりやすいのだ。
 頼むと、嫌そうな顔をするのだが、なんだかんだと言いながらも最終的には教えてくれるし、交換条件は昼飯くらいだし、分かるまで教えてくれる面倒見の良さもある。策士ぶっているけれど、基本的に紅愛はとてもいいやつなのだ。
 だから、みのりだってずっと刃友を続けているのだろうし、会長組に負けても一緒にいるし、白服ではなくなっても、こうして玲や紗枝も一緒につるむことをやめない。
 みのりは物事に無頓着だし、紗枝は人当たりが良さそうに見えて心の内を人に見せることはない。玲は玲で、他人と群れるということが苦手だ。四人が四人で一緒にいられているのは、なんだかんだいいつつ紅愛がいるからなのだ。

「ほら紗枝、また同じところ間違っている。あなた、他では抜け目なく頭良いくせに、どうして単純ミス繰り返すのよ」
「うー、すみません星河先生。どうしても苦手意識が」
「ほら、いい? こういうのも覚え方があるのよ。問題によっては応用する必要があるけれど、基本は」
 紅愛が紗枝の方に体を動かし、教えている。紗枝も、真剣に聞いている。
 そんな二人を見て、玲の心がなんとはなしにざわつく。
「んー、なんだ玲、機嫌悪そうだなー」
「か、勝手に人の部屋使われたら、機嫌も悪くなるっつーの」
 みのりの突っ込みに、顔をそらして慌てて誤魔化すようにダンベルを上下させる。みのりは何個目だかわからないまんじゅうを頬張っている。
「ねえ紅愛、ここ、計算がどうしてもあわないんだけど」
「どこかで間違えているんでしょう」
「でも、合っていると思うのよ。ねえ、見てみてよ」
「どれよ、もう」
 言いながら、紅愛が紗枝の計算を確認しようと、紗枝の隣に場所を移り、ノートを覗きこむ。
「えーっと、ちょっと待って。ここが……」
 身を乗り出す紅愛。必然的に、紗枝と肩がくっつくような距離となる。いや、それどころか頬がくっつきそうな勢いである。
 紅愛は問題に集中して気が付いていないが、すぐ隣の紗枝は、そんな紅愛の横顔をじっと熱い視線で見つめている。なんだか、紅愛の匂いを嗅いでいるようにも見える。
「ああ、分かった。ここで間違ってる」
「え、どこどこ?」
「ここよ、ほら単純な計算ミスよ」
「えーっ?」
 紅愛が指さす場所を見ようと、紗枝も顔を前につきだす。

「だーーーーっ!!」
 奇声をあげて、いきなり立ち上がる玲。
 紅愛も紗枝も、そして寝そべっていたみのりも、驚いたように玲を見つめている。
「どうしたのよ、玲。うるさいわよ」
 シャープペンシルで玲をさしながら、紅愛が文句をたれる。
「あー、まあ、玲の気持ちもわかるけどなー」
「ふふ、玲ったら、可愛い」
「なっ、なんだよ、お前らっ」
 みのりと紗枝に、なぜか生温い目で見つめられ、玲は赤面する。
 一人、紅愛だけが訳わからなそうに、三人の顔を順に見て首を傾げる。
「一体、なんのこと?」
「何って、あれだ、えーと」
 ベッドの上に立ち、言葉に困る玲。
 そんな親友の姿を見て、紗枝は小さく息を吐き出す。
「もう、仕方ないわね。みのり、行きましょう」
「んだな」
 教科書とノート、それに筆記用具を片づけ始める紗枝。みのりは、食べ終わったまんじゅうの箱をゴミ箱におしこもうとして、大きすぎて入りきらずに床に落ちる。
「ちょ、ちょっと、どういうことよ。それじゃあ私も」
 続いて腰をあげかけた紅愛を、紗枝が押しとどめる。
「紅愛は悪いけれど、玲の勉強、見てあげてくれる? 玲、怪我と剣で私以上に勉強していないから、マンツーマンで」
「ちゃんと教われよ、玲」
 玲の腰を平手で叩き、ベッドから飛び降りるみのり。そのみのりと並ぶようにして紗枝は部屋を出かけて、部屋を出る前に振り返り、にっこりと微笑む。
「あ、試験範囲終わるまでがノルマだからね」
 軽やかに手を振って、姿を消した。
 部屋に残される二人。
「……いつまでそんなところに突っ立っているのよ」
 ベッドの上の玲を、呆れた目で見上げる紅愛。
「いや、でもよ、そんなこといったって」
「あのね、勉強するの、しないの?」
「――します」
 大人しくベッドから下りて、机に向かう玲。
「で、玲はどの教科?」
「え、えっと、化学を」
「化学ね、どこが分からないの?」
 こうして、玲と紅愛の勉強会は始まった。

 

 玲の部屋を出て、みのりと別れ、紗枝はどこに行こうか思案する。自分の部屋に戻ってもよいのだが、なんとなくすぐには戻りたくない気分。
 それにしても、我が刃友ながらどうしてあそこまでヘタレなのか。ヤキモチだって、もうちょっと素直にすればよいものを、あんな中途半端に。紗枝があれだけ紅愛に接近して、それでようやく我慢できずに反応した、そこまでは良いのだが、その後はグダグダ。玲が何も反応しなかったら、あのまま紅愛の唇をいただいてしまっても良かったかもしれない、なんて思う。
「あ、祈」
「ん? 斗南さん」
 名前を呼ばれて顔を向けると、斗南柊が腕を組んで紗枝のことを見ていた。私服姿の柊を見るのは珍しいが、こうして見るとスタイルが非情に良いことがよく分かる。何より、背が高い。紗枝も決して低い方ではないが、その紗枝より5センチは高い。
「何、勉強?」
 紗枝の手にしている教科書を目にとどめ、聞いてくる。
「試験も近いですから。斗南さんは……大丈夫そうよね。士道さんは平気なの?」
「あー、あのバカ、頭は悪いけど不思議と赤点はとらねんだよね。ま、なんとかなるっしょ」
 こんな話をするなんて珍しいなと思う。生徒会室で顔を合わせるといっても、学内の仕事の話くらしかすることなどない。
 新たな白服の仲間となった斗南・士道の二人と玲の相性は決してよくないが、紗枝自身は別に悪くはない。
 士道は確かに楽器を鳴らしてうるさいが、基本的には子供だ。柊は、言葉づかいこそよくはないが、基本的に大人で落ち着いていて話も通る。紅愛が生徒会活動から離れた今、柊が生徒会活動では頼りになる。
「それじゃあ、また」
 だからといって、プライベートで仲良くおしゃべりしたり、お茶したりするほどの関係でもない。さっくりと挨拶して、柊の前を通り過ぎる紗枝。
「ちょっと待った、祈」
「ん、まだ何か」
 呼びとめられて首をまわして振り返る。
 次の瞬間、肩を掴まれ、強引に体ごと振り向かされると、目の前に柊の顔があった。そして、押し付けられる柊の唇。暖かな唇の感触と同時に、ひんやりとした硬質な感じがあるのはピアスか。
「……えっと」
 離れていく柊の顔を見て、戸惑いつつも声を出さずにいられない。
 一方の柊はといえば、いつも通りの表情で紗枝のことを見ている。
「祈さ、あたしと付き合わない?」
 そして唐突に尋ねてくる。
「どうして、私と?」
「ん? エキシビのときの祈の技が気になってさ、そっから祈のことばっか気にしてたら、いつの間にか祈って結構、いいよなって思えてさ。ま、正直、あたし自身にもよく理解できてないんだけど、そんなもんっしょ?」
「そんなもん、って。そもそも、キスする前に、まず告白でしょう。順番が逆よ」
「仕方ないじゃん、見ていたらキスしたくなっちゃったんだから」
 悪びれもせずにニヤリと笑う柊を見て、紗枝の方が微妙に恥しくなった。自分はそういうキャラじゃないはずなのにと思うが、明らかに不意をつかれ、隙をつかれて、さすがの紗枝も少し動揺したのだ。
「でも、斗南さんには士道さんがいるでしょう?」
「シド? あいつは手のかかる妹みたいなもん。刃友だからって、そうだって決まってるわけじゃないっしょ。あんたんとこのヘタレキングも、星河に首ったけじゃん」
「あはは……」
 柊にはバレていたようだ。まあ、ひつぎも静久も気が付いているだろうし、知らぬは本人ばかりなり、ということか。
「ま、ちと考えといてよ。んじゃっ」
 人差し指と中指をそろえ、ビシッ、と敬礼のようなポーズを決め、紗枝にウィンクを投げ飛ばして柊は去って行った。
 いつも思うことだが、柊は格好いい。
 立ち居振る舞いであったり、ニヒルな表情であったり、思考であったり。紗枝が知りうる限り、剣待生の中で最も男前だ。それでいて、女性らしい美しさを併せ持っている、とても稀有な存在だ。おまけに、頭も切れる。
 言葉の悪さや、刃友の発言などで恐れられている部分も多いが、その本質に注目して見てみれば、全てが高レベルで取り揃えられた才女だと分かる。
「――って、あれ、私、斗南さんのこと意識している?」
 ほんのりと、気持ち、熱くなった頬に指で触れる。
 想像もしていなかったことをされて、紗枝はらしくもなく、困惑していた。

 

 翌日、寝不足気味の目をおさえながら、食堂に向かって寮の部屋を出た。
 柊の行動と言葉が頭に残り、色々なことを考えてしまい、なかなか寝付けなかったのだ。そして一晩たった今も、結論は出ずにいる。
 そんな風にして歩いていると、玲の部屋の扉が開いた。てっきり玲だと思っていたら、出てきたのは紅愛であった。
 これはもしかして、あのヘタレで奥手の玲が、とうとう一念発起して紅愛と一夜を過ごしたのか。
「紅愛、おはよう……って、ひどいクマよ」
「紗枝、あんたのせいでしょうが」
 紅愛の顔は、とてもじゃないけれど、甘い一夜を過ごしたというものではなかった。
「あれだけの範囲を、朝までに教えろって、どんだけ鬼なのよ」
「え、真面目に全部やっていたの?」
 驚く紗枝。
 玲に言い渡したのは、あくまでそれを口実に紅愛を引きとめておけば良いという、刃友を思っての後押しだったのだが。
「玲も、変なところで負けず嫌いなんだから。別に、試験は今日ってわけでもないでしょうに」
 どうやら、紅愛を引きとめはしたものの、正面突破するだけの勇気が持てず、結局のところ朝まで真面目に勉強をしてしまったというところか。
「もう、今日はサボっちゃおうかしら」
 クマをつくり、眠そうな顔はしていていも、紅愛の服装やメイクに抜かりはない。その辺に関しては、決して手を抜かないのだ。
「まあ、それもいいんじゃない。玲と二人で仲良くお休みしちゃえば」
「なんで私が、また玲と……あふ」
 小さな欠伸をする紅愛が可愛らしい。紅愛を見ていると、どうしても悪戯心がむずむずとわいてきてしまう。
 眠気と油断もあって、今の紅愛は隙だらけだ。このまま、ちょっとキスくらいしても良いのではないか、なんて考える。そっと近づき、手を伸ばす。顔を、紅愛の方に寄せていく。

「こら紗枝っ、おまえ、何しようとしている?」
「あらら玲、おはよう」
 部屋から飛び出してきた玲が、凄い目をして睨んできた。
「いやー、玲がいらないなら、私がもらっちゃおうかと」
「いらなくねーよ、紅愛はあたしンだ!」
 紅愛の前に体を割り込ませ、紗枝から防ごうとする。いつもの玲なら、ここまで積極的な行動はしないはずだが、徹夜明けでテンションが上がっていたのだろう、なかなか情熱的な台詞をぶち放つ。
「なっ……い、いつから私が、玲のものになったのよっ!?」
 顔を赤くしながら、玲の背後で紅愛がみじろぎする。
「え、やっ、なんだ、今のは言葉のあやで」
 自分で口にしたにも関わらず、紅愛に突っ込まれて玲も赤面する。
「何よ、言葉のあやって、失礼ねっ」
「いや、そ、それも勢いというか、だな」
「――ただの勢い、だったの?」
 拗ねたように唇を尖らす紅愛を見て、玲はさらに狼狽する。
「ち、ちがっ……とにかく紗枝は危険だから近づくなっ。紅愛は、あ、あたしの傍にいればいいんだから、こっち来いっ」
 戸惑う紅愛の手を引っ張ると、玲は紅愛を伴ってまた部屋に引っ込んでしまった。今の勢いなら、ひょっとしてそのまま紅愛とベッドイン、なんてことにもなるかもしれない、なんて淡い期待を抱きつつ、紗枝は肩をすくめて歩き出した。紅愛を狙っているコは結構多いのだから、早いところ告白でも、力づくでも、なんでもいいから自分のものにしてしまえば良いのにと、内心で吐息をつきながら。
 自分のことではなく、あえて他人のことばかり考えているうちに食堂の手前まで来ると、壁に寄り掛かるようにして柊が待っていた。
「斗南さん、えと」
「分かってると思うけど、祈のこと待ってたんよ。朝飯、食うべ?」
「あったりまえだぜナンシー! オレの胃袋は今にもバーストしそうだぜ!」
「バーストしたら死んでんだろ。てめーはリンゴにはちみつでもかけて食ってろ」
「オレはピーさんかよ!?」
「伏字みたいにいってんじゃねえ、プーだろが。むしろお前はパーだ」
「あン? ピーがプーで、俺がパー? ジーザス! わけわかんねぇよナンシー!」
「知るか」
 いきなり現れたシドとの、流れるような意味不明な会話に、いつもながら入るすきがない。困って立ちすくんでいると、柊がシドの髪の毛を掴みながら、紗枝に向かって口元をわずかに歪めてみせる。
「わりぃ、こいつにエサ、与えないといけないんでさ」
「いいわよ、別に」
「だから今は、ここまでだ」
 柊が首をのばし、素早く紗枝の頬に唇を押し付ける。
「じゃあな、あたしは本気だぜ?」
 シドを引きずるようにして、食堂へと姿を消してゆく柊。
 他の生徒達も見ているかもしれないという、危険な状況の中での大胆な行動。柊の唇が触れた個所が、ほんのりと熱を帯びているかのように感じる。
 自分らしくもなく戸惑った紗枝は、結局その日一日中、柊のことばかり考えてしまい、授業にも修練にも身が入らなかったのであった。

 

☆余談

 ちなみに、一日を終えて寮に戻ると、まずは玲の様子を見に行った。結局、玲も紅愛も今日は欠席していて、本当に二人でイチャイチャしていたのではないかと思い、確認しに行ったのだ。
 だが、玲の表情を見て、また今回も失敗だったのだとすぐに分かった。
「どうしたのよ玲、言って御覧なさい」
「そ……それがよお」
 徹夜明けのテンションを利用して紅愛をベッドに寝かせた。紅愛は、どうせヘタレの玲に何が出来るわけもない、などと憎まれ口を叩き余裕を見せていた。そんな紅愛のブラウスをはだけさせ、ゆっくりと優しく愛撫をする。じっくりと、時間をかけて……
「そしたらさ、その、徹夜明けということもあって、途中で寝ちまって」
「はぁ?」
「いや、だってさ、紅愛の体、あったかくて柔らかくて気持ちいいからさ、うっとりとした一瞬の隙に、もう落ちていたっていうか」
 そして気がついたときには既に昼をとうに過ぎており、紅愛の姿はどこにもなく、残されていたのが一枚の書置き。

 "バカ!!!"

 頭を抱えてうなだれる玲。
 相変わらずの玲だが、それ以上に紅愛が可哀想だと紗枝は思うのであった。

 

 

おしまい

 

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