【作品情報】
作品名:不実在探偵の推理
著者:井上 悠宇
ページ数:264
ジャンル:ミステリ―
出版社:講談社
おススメ度 : ★★★★★★★☆☆☆
新たな探偵の面白さ度 : ★★★★★★★☆☆☆
こういう人におススメ! : 特殊設定ミステリー好き
「彼女は実在してる。存在が不確かなだけで、ずっと僕の傍にいるんだ」
大学生の菊理現(くくり・うつつ)が思い出のダイスに触れた途端、長い黒髪に白いワンピースの美しい女性が見えるようになった。
現にしか見えない彼女はしかし、ずば抜けた推理力を持つ名探偵。
藍の花を握りしめて死んだ女性、宗教施設で血を流す大きな眼球のオブジェ。
二人に降りかかるすべての謎は解けている。
あとは、言葉を持たない「不実在探偵の推理」を推理するだけ。
水平思考を巡らせて、「はい」か「いいえ」の答えで真実にたどり着け。
ミステリ―もなんだかんだで色々と新たなものが出てきますね。
本作の探偵役は、大学生の現にしか見えないという、本当には存在していない(?)女性。
現にしか見ることのできない彼女は、当然ながら他人らは見えないし、現とだって話すことはできない。
できることはただ一つ、ダイスを動かしてその目を変えることで質問に答える、ということ。
但し、その答えは必ず正しいものである。
ということで、水平思考を巡らせて質問を行い、彼女からの回答「はい」か「いいえ」から真実を探し出していくというもの。
即ち特殊設定ミステリーである。
通常の本格ミステリーはなかなか出尽くした感がありますが、特殊設定ミステリーはその設定さえ考えればまだ出てきそう・・・かな?
結論は出ているけれど、なぜ、その結論に辿り着くのかは思考しないと分からない。
相手は人間だけに、なんの理由もなく犯人と決めつけたり、逮捕したりはできないですからね。
結論はわかっているけれど、その途中過程を明らかにしていくということでは、
「僕が答える君の謎解き」
なんかも少し近いかもと感じた。
特殊設定だけでなく、事件を追いかける刑事の百鬼と烏丸のコンビのキャラクターが良いから物語を読み進めやすい。
ちょっとやさぐれた感じだけれどキレ者でもある百鬼。
ミステリ―オタクでもあり、ちょっと変わり者の烏丸。
二人のやり取り、かけあいが楽しいので物語のテンポがよくなる。
現も、そして謎の彼女・マリアの正体も謎だし。
シリーズとして続いていきそうな感じですね。
帯に書かれていることはちょっと大げさかな。
まあ、楽しめましたけれど。