【作品情報】
作品名:アンドロイドは電気羊の夢を見るか?
著者:フィリップ・K.ディック
ページ数:294
ジャンル:SF
出版社:早川書房
おススメ度 : ★★★★★★★★☆☆
人間について考えさせられる度 : ★★★★★★★★☆☆
こういう人におススメ! : 世界観に浸りたい
長く続いた戦争により放射能汚染された地球では、動物を飼うことがステータスとなっていた。
そんななか、火星で植民奴隷として使役されていたアンドロイド8体が地球に逃走してきたとの情報が入る。
バウンティ・ハンターのクリス・デッカードは、逃走アンドロイドを倒すために動き出すが・・・・
映画「ブレードランナー」の原作として有名な本作。
もっとも、映画と内容はかなり異なっていて、あくまで原型といったところか。
放射能汚染された地球。
多くの動物が死滅し、本物の動物を飼うことが何よりのステータスとなっている状況。
異星への植民とアンドロイドの奴隷。
荒廃した地球でありながら、技術は先に進んでいる、この世界観が心に沁み込む。
映画のブレードランナーの世界は後のSF作品に大きな影響を与えたと思いますが、小説の世界は映画とはまたちょっと違う。
あそこまでサイバーな感じはしない。
だけど、実に世界を頭の中でイメージしやすいのだ。
おそらく描かれる世界は読み手によって違いはあるだろうが、しっかりした世界があるからこそ物語に入り込んでいける。
近未来であり、想像しやすいというのも実に上手い。
そんな世界で展開されるのは「アンドロイド狩り」である。
だが、アクション要素は薄い。
重点を置かれているのは、人間とは何か? アンドロイドとは何か? 両者の違いは何なのか? というところだ。
作品内で、アンドロイドを識別するための機械が出てくるが、そのために重要なのが「質問」だというのがまた凄い。
なんとまあ、人間的なものだ。
質問に対する反応は、人間は無意識のうちにしてしまうもの。
アンドロイドには感情がない、だから分かる、そういう理屈だ。
しかし、アンドロイドが自分は人間だと思い込んだらどうなるのか。
そこまでアンドロイドが行きつくと、今度は逆に人の方が自分はアンドロイドではないかと疑問を抱くようになる。
何をもってして人とアンドロイドを分けるのか、これは他の作品でもあるかもしれないが、本作の登場により、その思索が本格的に始まったのではなかろうか。
ディックらしい、登場人物達が物語を進めていくうえで、現実なのか夢なのか、虚実がないまぜになっていく点も勿論すばらしい。
人間、アンドロイド、それぞれの視点で描かれる物語は、読み手をも惑わせる。
まさに、めくるめく白昼夢の世界に酔いしれよう。
改善というか、映画版を期待して読むと違いますよ?
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