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SF 書評

【ブックレビュー】アルテミス(上・下)

更新日:

【作品情報】
 作品名:アルテミス(上・下)
 著者:アンディ・ウィアー
 ページ数:上巻 288ページ、下巻 288ページ
 ジャンル:SF
 出版社:早川書房

 おススメ度 : ★★★★★★★☆☆☆
 波乱度   : ★★★★★★★★☆☆
 こういう人におススメ! : 強くてしたたかな女性が活躍するエンタメ活劇が好き

 

■作品について

 著者、アンディ・ウィアーといえば前作『火星の人』が人気を博し一躍有名となった人。『火星の人』は『オデッセイ』とタイトルを変え、マット・デイモン主演で映画化されてヒットもとばした。
 そんな作者の第二作であるから当然、期待もされているし、その期待のあらわれか出版時から映画化が決定している。
 それが本作、『アルテミス』である。

 “アルテミス”とはギリシア神話における狩猟・貞潔の女神であり、また月の女神でもある。そう、今回の舞台は火星から月にうつっているのである。

 主人公のジャズは観光地となった月で小さい頃から暮らし育った運び屋の女性。
 特別なことなど何もない生活を送っているが、自分の目的のためにはお金が欲しい。そのため、人には言えないような大きな仕事を請け負うのだが、それがとんでもない事件に巻き込まれる引き金であった。
 月面世界における経済、利権を巡る陰謀と混乱を果たしてジャズは乗り切れるのか?

■良かった点

 舞台は月に移動したものの、主人公がこれまたとんでもない状況に巻き込まれ、その中でクールに(時にヒートもしつつ)機転をきかせてその場その場を乗り切っていく様は『火星の人』を思わせるが、前回と異なるのは人や社会、経済といったものが相手にもなってくる点。
 そういう異なる点から攻めてくるのは、作者が前作とは別の視点や知見を持っていることを理解させてくれる。

 月の施設や宇宙についてやEVAについてなど、本格SF要素を詰め込んでいるにも関わらず、相変わらず軽いノリの茶化した会話があってハードなものを感じさせないのは著者の得意技のなせるところ。
 そんな月で発生した大きな事件に巻き込まれたジャズ、いきなり立ち向かおうとするのではなく、拗ねて逃げようとしてでも逃げられないことがわかっているからどうにか頑張るのが人間臭い。ただ、すんごく頭がよくて尚且つ頭の回転が速いところは前作のワトニーと同様かそれ以上に感じるくらい。

 月を舞台に、彼女の騒動に巻き込まれたいと思う人もいるのではないでしょうか?
 そう思える魅力のある女性でした。
 ちなみに私は、ついていける自信がないのでお断りさせていただきます(苦笑)

■ここが改善できるともっとよかったかも?

 事件が発生するまでがちょい長いのが玉に瑕、それでも事件発生後は転がるように突き進んでいきます!

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