【作品情報】
作品名:オオルリ流星群
著者:伊与原 新
ページ数:296
ジャンル:エンタメ
出版社:KADOKAWA
おススメ度 : ★★★★★★★☆☆☆
大人の青春を感じられる度 : ★★★★★★★☆☆☆
こういう人におススメ! : 今の生活に疲れている大人たち
大人の青春を感じられる度 : ★★★★★★★☆☆☆
こういう人におススメ! : 今の生活に疲れている大人たち
見えない星が、人生の幸せを教えてくれる。
「あのときのメンツ、今みんなこっちにいるみたいだぜ」
「まさか、スイ子か? なんでまた?」
スイ子こと、山際彗子が秦野市に帰ってきた。
手作りで太陽系の果てを観測する天文台を建てるというのだ。
28年ぶりの再会を果たした高校時代の同級生・種村久志は、かつての仲間たちと共に、彗子の計画に力を貸すことに。
高校最後の夏、協力して巨大なタペストリーを制作した日々に思いを馳せるが、天文台作りをきっかけに、あの夏に起きたことの真実が明らかになっていく。
それは決して、美しいだけの時間ではなかった。そして久志たちは、屈託多き「いま」を自らの手で変えることができるのか。
行き詰まった人生の中で隠された幸せに気付かせてくれる、静かな感動の物語。
主人公たちは40代も半ばとなった中年のおっさんとおばさんたち。
高校時代、協力して巨大なタペストリー制作を行い青春の日を送ったことも今や過去の話。
現実の中に生き、現実の中に流され、それぞれが思うままにならないながらも現在の生活を続けるしかないという、どこかどんよりとした状況。
きっとそれは、多くの同世代の人たちが同じような状況にあることでしょう。
そんなところに、高校時代のタペストリー制作の仲間の一人、スイ子こと山際彗子が久しぶりに地元に戻ってきた。
しかも単に帰郷したわけではなく、この何もないような故郷で天文台を作ろうというのである。
なぜ、こんなところに天文台を?
そういう思いを抱えながらも、かつての仲間たちは彗子の天文台作りを手伝うことに。
そして手伝っていく中で、色々なことを思い、思い出し、思いを変えていく。
高校時代の夏に何があったのか。
今、なぜ、天文台を作るのか。
その制作にかかわることで自分は何をしたいのか。
明確な答えがあるわけではない。
物凄い結末が訪れるわけでもない。
天文台が完成しても、現実の生活が大きく変わるわけではない。
それでも、確実に変わったものはある。
今の人生に閉塞した中年たちが、かつての思いを思い出し、そしてまた再び今を少しでも前向きに歩き出そうとする。
そんな、中年たちの静かな青春物語。
劇的な感動がある、とかいう物語ではない。
でも現実ってこんなものだよね、それでも少し前向きになれるといいね。
そう思えるくらいで良いという人に。