【作品情報】
作品名:完全脱獄
著者:ジャック・フィニィ
ページ数:318ページ
ジャンル:ミステリー
出版社: 早川書房
おススメ度 : ★★★★★★★☆☆☆
脱獄ものとしての完成度 : ★★★★★★☆☆☆☆
こういう人におススメ! : ラストにひっくり返されるのが好き
厳重な警備で知られるサンクエンティン刑務所。
ここに投獄された一人の男は、刑務所内でもルールを破り、死刑を免れない状況に陥る。
そんな男を助けるため、男の弟と恋人が動き出す。
巨大刑務所からの脱獄を描いたサスペンス。
脱獄ものといえば色々ある。名作としては「モンテクリスト伯」、「ショーシャンクの空に」などがある。両作品はいずれも無実の罪でとらえられた主人公が、刑務所内で絶望するだけでなく、どうにかして脱獄してやろうというもの。
転じて本作は、恋人に見栄を張ろうとして罪を犯してしまったという、どうしようもない男である。
おまけに、大人しく刑に服していればそのうち出られるのに、刑務所内で看守を殴り倒したため、死刑になりそうになるため脱獄しないといけないという、輪をかけてのどうしようもなさ。
だが、だからこそ人間臭いともいえる。
どうしようもない小悪人が、自分の命の為に脱獄を図る。
それも、自分だけの力ではどうしようもないので、弟と恋人を巻き込んで、である。
この弟と恋人も、よく助けようとするものだ、自業自得の男を。
まあ、家族だから、なのかな。
脱獄ものとしては、物凄い手段で抜けるというわけではない。
むしろ、よくその計画で実行しようと思ったなといいたくなるくらい、かなりな運頼みのところがある。
兄はともかく、弟はよく自分の身を危険にさらしてまで実行に移したと、違う意味で称賛したい。
思うにこの作品は、脱獄の計画や手段を楽しむものではなく、その計画に殉じることとなった弟や恋人の心理を楽しむサスペンスなのだ。
不安になり、緊張し、時に楽観し、叫びそうになり。
脱獄の為の不屈の意思、忍耐、強い精神力、などはない。
人間臭さを感じ、いつ心が折れそうになるか分からない弱い人間ばかりだ。でも、実際はそんなもんだろう。
更にもう一つ、ラストである。
脱獄が終わった後に待ち構えていた意外な展開。
どういう終わり方を見せるのかと思ったら、こうきたか、という感じ。
ここは素直に楽しませてもらった。
脱獄の手法がかなり雑なのは、時代背景的なものもあるのか。
あるいは、人が運用するなら実際にこんなものなのか。
まあ、色々とIT化されているようなところなら、通用しなさそうではある。
[amazonjs asin="4150720541" locale="JP" title="完全脱獄 (ハヤカワ・ミステリ文庫)"]