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【マリみてSS(蓉子・聖・江利子・景)】DISASTER SISTERS! 2-2

更新日:

 

 仲間探しも順調にはいかず、蓉子はため息をついていた。
「……やっぱり、簡単には見つからないわね。そろそろ宿に泊まるのも懐が厳しくなってきたし、明日には諦めて出発しましょうか」
「じゃ、じゃあ今夜こそ。最後の夜こそ、奴隷としてしばいて、蓉子様ぁ」
「あーもう、気色悪いわね。もう二度とあんなこと言わないんだから」
「そんな、蓉子ぉ。つれないわぁ」
 しなだれかかってくる江利子を押し返し、もう一度街に出てこようかと立ち上がったところで、聖が息せき切って駆け込んできた。
「―――見つけた、いい人見つけたよっ!!」
 飛び込んでくるなり、そう叫ぶ。
 顔が輝いている。よほど、良い人を見つけたのだろうか。
「落ち着いて、聖。まずはどんな人なのか説明して」
「っていうか、もう決めちゃった」
「は?」
「だから、もう彼女に決めちゃった。てへっ」
 可愛らしく舌を出して、片目を瞑る聖。
 ふふ、可愛らしいほどに憎たらしい。
「―――どういうこと、聖? 私たちに相談も無く決めたとは?」
「わ、わ、待って蓉子。本当に、逸材だって。蓉子も会ったら、絶対にノーとは言えないってば」
 そこまで自信を持って聖に言われると、少し気になる。まあ、聖が口だけなのはいつものことだから、話半分くらいに聞くけれど。
「ふーん。で、その人は」
「お、オーケー、オーケイ、今から会いにいきましょう」
 聖の後について、蓉子と江利子は宿屋を出る。通りに出て、歩き出しかけた聖の足が止まり、視点が一点をとらえる。
「あ、いた。ほら、彼女」
 指差す方を見ると、そちらの人物も聖のことに気がついたのか、こちらの方に向かって歩いてくる。
 徐々に、輪郭が明らかになっていく姿。
 黒く美しい髪は肩から背中にかけて軽く流れ、涼やかな目は理知的な光をともしている。眼鏡をかけた表情は引き締まり、薄い唇は赤瑪瑙のような艶。引き締まった細い体は、出ているところは出て、引っ込むところは引っ込んでいる大人の女性そのもので。
 思わず蓉子は息を呑み、ちょっとばかりドキドキしてしまった胸をそっとおさえる。
「ほら、ね」
「あー、なるほどねー。聖の好みのタイプだわね」
 知的美人という言葉がぴったりと当てはまる。そうか、聖はこういうタイプが好きなのか……って、それはとりあえず置いておいて。
「彼女は、景さん。おーい、景さん、景さん。紹介するね、こっちの二人が」
 と、聖が景さんという女性に近づいたとき。
 彼女は動いた。手にしていた棒切れを、神速のごとき捌きで突き出した。聖は咄嗟に上半身を弓なりに反らしてかわすが、聖の髪の毛が数本、はらりと宙に舞う。
 まともに当たっていれば、胸当てごと体を貫かんばかりの、凄まじい突き。音が、後から聞こえてくる。
「え……と、景さん? ちょっといきなりの挨拶じゃないかな~。冗談にしても、ねえ」
「ふふ……冗談に、見える?」
 ゆらり、と棒を左右に揺らす。
 持っているのは明らかにただの棒切れなのに、蓉子の目にはそれが、業物の剣に見えた。達人が手にすれば、どんなガラクタでも名刀になるといわれるが、まさか。
「あ、あの、景……さん?」
 冷や汗を手ぬぐいで拭きながら、聖は薄ら笑いを浮かべて腰砕け。目の前の景さんから迸るオーラに、完全に圧倒されている。
 ここまで聖を威圧するとは、どれほどの達人なのだろうかと、蓉子は息をするのも忘れて見つめていた。
「ちょっとちょっと聖。何、彼女を怒らせたのよ?」
 江利子が小声で問いただす。
「え、別に、心当たりは」
 否定する聖だが。
「そう……そんなことをまだ言うのね、貴女」
 棒切れを中段に構える。
 身を裂かれそうな殺気が、周囲に充満する。確かに、これほどの人物だったら仲間にすると心強い。
 しかしその前にまず、よく分からないが彼女の怒りをどうにかしなくては―――
「聖、とりあえず謝って……」
 声をかけようとしたが、景さんが動く方が早かった。
 踏み込み、剣を振り下ろしながら、彼女は叫ぶ。

「人の下着、返しなさい―――っ!!!」

「…………はいぃ?」
 思わず蓉子も江利子も、間抜けな声を出してしまった。
 ちなみに聖は、紙一重で彼女の放つ必殺の一撃をかわしていた。とりあえず、逃げることに関しては天才的なのだ。
 いや、そんなことよりも彼女は今、何と言ったのか?
「え、ええと……あ、ひょっとして、それってコレ?」
 言いながら聖が広げたのは、先ほど汗を拭っていた布。
 うん、見事なまでに下着だ。なかなか可愛らしいデザイン。聖め、変態が。
「広げるなっ!!」
「うわっ、ごめん、純粋に手ぬぐいと間違えたんだって! 同じポケットに入れていたからさ」
 そもそも、なぜポケットに下着が、しかも他人の下着が入っていたのか。
 顔を赤くして、連続して切りかかる景さん。しかし、下着を見せられて動揺しているのか、動きは速いが、隙が大きい。聖は楽々とかわす。
 数撃、かわしたところで、聖は棒切れの間合いから離れた。空振りをし続けた景さんは、怒りもあるのだろうが、肩で息をしている。一方の聖も、呼吸は荒い。隙が大きかったとはいえ、それぞれが必殺の一撃。精神的には疲労する。
「ご、ごめん。思わず下着を手にしちゃったのは謝るから! ごめんなさい」
 深々と頭を下げる聖。
 それでようやく、景さんは棒の先端を地面に向けた。
 許したというより、呆れて疲れたのだろう。表情が物語っている。
「ね、ねえ景さん、許してよ。ほら、これから一緒に旅する仲間なんだし」
「―――は? 何よソレ、旅って何のこと。何で、私が貴女の仲間なんかに」
 素っ気無く言い放つ景さん。どうも、下着の件で怒って言っているわけではなく、本当に何のことだか分かっていないようだった。
「聖、どういうことよ。話が違うじゃない。彼女、全然承知していないじゃない」
「あれえ? ちょっと景さん、約束が違うじゃない」
 首を捻る聖。
 一方の景さんも、不満げな表情。
「そんな約束、した覚えないわよ」
「えー、したよー、確かに」
「いつよ」
「ほら、さっきベッドの上で。景さん、何度も、『行く、行く、お願いだから行かせて、一緒に行かせて、一緒に行っちゃう』って、お願いしてきたじゃない」
「な、な、なっ―――!!!」
「だから私も、『うん、一緒に行こう、約束ね。一緒に行くよ、ほら―――』って」
「○♪△×@%っ―――?!」
 声にならない叫び声をあげる景さん。見る見るうちに首から上が真っ赤になってゆく。いや、腕とか足とか、他の部位もほんのりと赤くなっている。
「あんなに可愛らしくおねだり……いやいや、お願いしてきたじゃない。『駄目、そんな、お願い行かせて――』」
「ややややや、やめいっ!!!」
 棒を振り回す景さんだけと、出鱈目だから当たるわけもなく。
 それにしても聖ときたら、得意の喉を使って景さんの声色まで真似するものだから、余計に景さんは顔を赤くして―――
「……ってゆうか聖、あなた、一体ナニしていたのよ」
 ジト目で睨む。
「いや、ほら、流れとかあるじゃない。いい雰囲気になってきたからさ、そのまま」
「な、何が流れよっ! お酒飲ませて、酔った所を連れ込んだんじゃないっ」
「え、でも意識はあったでしょ。抵抗だって出来たはず……」
「抵抗する力を奪うようなこと、してきたんじゃないっ! だっ、だからそのまま、あんな……あんな……ことに……」
 自分で言いながら、恥しくなったのか尻すぼみになってゆく。
 そうか、聖は景さんに対し、あーしてこうして、そんなことをしていたというのか。ふふ、なんだろう、この胸に去来する未知の鼓動は。遥かなる故郷への憧憬のように押し寄せてくる、満ち満ちてくる不思議な感覚。

 そうか、これが――――――殺意。

 蓉子は生まれて初めて、殺意の衝動を覚えた。
 どこからともなく、脳内でおどろおどろしい音楽が鳴り響く。

"蓉子はレベルアップしなかったが、新たなスキルを習得した! スキル『殺意の波動』を会得。消費精神力12、怒りゲージMAXで使用可能。"

 どうでもいいアナウンスが蓉子の頭の中で流れている間も、聖と景さんの恥しい話は続いている。
「だから、一緒に旅するでしょう?」
「しないわよっ! 大体、私が言ったその『行く』は『旅に一緒に行く』の『行く』じゃなくて、イ……」
 言いかけて、慌てて口をつぐむ。
 見ているのが可愛そうになるくらい、耳まで真っ赤にしている景さんは、悪いけれども物凄く可愛かった。
 隣にいる江利子も、頬を染め、瞳を潤ませ、体をくねらせ、うっとりとした表情で景さんのことを見つめている。
「なに、一緒に行く、の行くじゃなくて、何かなぁ?」
 分かっているくせに、意地悪く言う聖。
「くっ……だ、大体私はノーマルだったのに……」
「えー、嘘ー、あんなに悦んでいたじゃない。ねえねえ、どうだった?」
「ま、まあ……女の子も悪くはないかも……って、何言わせるのよっ?!」
「女の子『も』って、それは違―う! 女の子『だから』いいんじゃない! あの柔らかくてすべすべしたお肌、女の子独特の弾力に飛んだ体。それはさながら、揺りかごに揺られる赤子のように全てを忘れさせてくれる、母の優しさ。胸の双丘が作り出す谷間は魅惑のエルドラド、お尻の肉感はまさに桃源郷、そして清らかなる秘裂から蕩けるようなむせかえるような果汁。ああ、世の可憐なる乙女はまさに至宝の宝石―――」
 悦に入ったように一人、熱のこもった語りをする聖を、冷ややかな目で一瞥。
「相変わらず、意味不明ね、聖」
「吟遊詩人のくせに、詩的センスゼロだからね。だから、いくら甘い音楽をバックに口説いても失敗するのよね」
 江利子も呆れ顔。
 しかし、景さんは。
「そ、そりゃあ、確かに柔らかくて気持ち良いとは思うけれど……でで、でも、それとコレとは話が別というか」
 混乱しているのか、もうグダグダだった。
 このままでは埒があかないと思い、蓉子は彼女に向かって歩き出した。聖をまともに相手しようと思うからいけないのだ。落ち着かせなくてはならない。
「あの、ええと、景、さん? ここはひとつ頭を冷やして……」
 柔らかな微笑みとともに、彼女に歩み寄る。
 神官である蓉子が、冷静にこの場をおさめなくて誰がおさめる。
「―――あ、蓉子」
「何?」
 声をかけてきた聖の方に軽く首を捻る。
「足元……ってもう遅いか」
「えっ、きゃっ?!」
 先ほどの聖と景さんの乱闘(?)のせいで、道の石畳の一部が壊れていた。気づかずに足をとられ、前のめりに倒れる蓉子。体勢を立て直そうにも、ブーツが凹みにはまりこんで足が動かず、どうにもならない。
 咄嗟に、目の前にいた景さんに抱きついた。

「―――きゃっ?!」

「―――あら」

「―――まあ」

 

 しがみついた甲斐も無く、蓉子は地面に倒れてしまった。しかしはて、転んだだけにしては、何か周りの空気がやけに冷たいような。
 そういえば、しっかりとしがみついて、今でもぎゅっと景さんの服を手で握っている。しかし蓉子の体は地面に倒れている。ということは、今手にしているこの、彼女の衣服はどういう状態なのか。
 ようやく、悟った。
 蓉子は彼女の服を握ったまま倒れてしまい、その勢いでずり下ろしてしまったのだ。そう、彼女のスカートを。足首まで見事に。
 ということは、彼女は今、とても破廉恥な格好に?! そう、ぱんつ丸出しではないだろうか。
「―――あ、ご、ごめんなさっ」
 慌てて顔を上げ、見上げてみると。
 目に入ってくる、景さんの真っ赤な顔。目をもうちょっと下に向ける。頭の中が真っ白になる。目が、吸い付いて離れない。
 蓉子の目に飛び込んできたのは、そう、景さんの女性自身。
 すなわち。
「……えーと……のーぱんつ?」
 これは江利子の呟きか。
「あ~……」
 気まずそうに、手にしていた景さんの下着をポケットに隠す聖。
 時の止まった空間に、風だけが吹き込む。風が景さんの上着をはためかせると、ほぼ真下から見上げる格好の蓉子の目に、上着の裾の隙間から形の良い胸の下部、いわゆる『下チチ』が見えて。
「あ―――」
 次の瞬間。
 景さんが大声をあげる前に、蓉子は大量の鼻血を噴出して気を失ってしまったのであった。

 

2-3へつづく

 

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