【作品情報】
作品名:転がる検事に苔むさず
著者:直島 翔
ページ数:320
ジャンル:ミステリー
出版社:小学館
おススメ度 : ★★★★★★★☆☆☆
検察の捜査を知れる度 : ★★★★★★★☆☆☆
こういう人におススメ! : 検事モノがすき
夏の夜、若い男が鉄道の高架から転落し、猛スピードで走る車に衝突した。
自殺か、他殺か。
戸惑う所轄署の刑事課長は、飲み仲間である検事・久我周平に手助けしてほしいと相談を持ちかける。
自殺の線で遺書探しに専念するが、このセールスマンの周辺には灰色の影がちらついた。
ペーパーカンパニーを利用した輸入外車取引、ロッカーから見つかった麻薬と現金――死んだ男は何者なのか。
交番巡査、新人の女性検事とともに真相に迫る。
検事を主役に据えた作品です。
検察庁内の派閥争いの中で、冷遇を受けているけれど力のある検事の久我。
久我のもとで学んでいる新人の倉沢。
事件に関与してともに事件解決に向けて動く警察官の有沢。
主にこの3人を主として物語は動いていく。
一人の遺体がみつかったことから、地道な捜査でその事件の背景や、関係者たち含めた過去のことなどが浮かび上がってくる。
そこをじりじりと読み進ませていく筆致はなかなか。
主人公の久我は既に良い年をしているわけで、淡々としている感じではあるが熱がないわけではない。
じっくりと獲物に近づいていく感じではあるけれど、肩の力も抜けている、そんなバランス感がなかなか。
そこに、事件をかきまわすというか、空回り感はあるけれど若くて勢いのある倉沢がいて。
貧乏くじを引きがちだけど真面目で実直な有沢がいて。
そんな3人のバランスもちょうど良いのかもしれない。
文章自体も読みやすく、物語展開やキャラクターの良さもあって、ラストまで一気に読み進められる。
待ち受ける真相は悲しいものではあったけれど、真実が隠されたままよりは良いのだろう。
続編もあるということらしいので、そこでどのような形になっているのか、また読みたいと思わせるだけのものはある作品。
作者さんのデビュー作ということもあるのか、物語の転換というか、視点の転換というかが、イマイチなところも見受けられる。
あと、新人検事の倉沢の考えなしの行動は、読んでいてちょっとばかしイラつかせられた。