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エンタメ 書評

【ブックレビュー】本のエンドロール(著:安藤 祐介)

更新日:

【作品情報】
 作品名:本のエンドロール
 著者:安藤 祐介
 ページ数:381ページ
 ジャンル:エンタメ
 出版社:講談社

 おススメ度 : ★★★★★★★★★☆
 本好き度 : ★★★★★★★★★★
 こういう人におススメ! : 本を愛する全ての人に

 

■作品について

今の時代、斜陽産業ともいわれる印刷・出版業界。
電子化の波にもまれようとも、この世に本がある限り、彼らは動き、働き続ける。
そんな世界で生きる営業、工業作業員、デザイナー、DTPオペレーター、彼らの奮闘を描くお仕事小説。

この時代だからこそ、この本を。

■良かった点

ヤバい、めっちゃ面白い!
まず印刷会社で働く営業マンを主役に、本離れや電子書籍化が進み厳しい世界で奮闘する人達の姿を描く。
もうね、これだけでも読みたくなるってものですよ。

本書は五章立てになっていて、それぞれで、それぞれ本が出来上がるまでの苦闘を、奮戦を描く。
本を作るなんて、皆同じじゃないの? なんで5パターンもあるの?
そう思わなくもないけれど、読めば分かります。

1.期日との戦い
本にも当然、発売日があってそこにめがけて関係者は皆動く。
ギリギリのスケジュール、想定外の事態・トラブル。営業マンは調整に走る。
なんとか間に合ったと思ったらまたアクシデントがあり、発売日を延ばせないか関係者調整に入るが、どうしても延期できない。さあ、どうする・・・?

2.美しさとの戦い
凝った装丁ってありますよね。カバーに凝った作品。
そこにはデザイナーやイラストレーターといった人とそれを表現する印刷会社の職人とのせめぎあい。
良い本を出したい、それは装丁含めて一つの作品であるという強い意志がある。

3.値段との戦い
凝った装丁にすれば当然、それだけ費用もかかって高くなる。でも、見た目が良い方が人の目を引く。
だけど、値段を抑えて手に取りやすくするという戦略も確かにある。

4.電子化との共存
電子化は避けて通れない流れ。そんな中、大御所さんが紙と電子を同時発売、それも電子は無料化!?
紙は紙の本だけがえられる良さを出さないといけない。
さて?

5.作者とのせめぎあい
作者の想いのこもった作品だけど、作者の言うことばかり聞いているだけじゃ割に合わない。
それでも互いに引くことなく、作者に納得してもらえる素敵な本を作るため奮戦する!

ということで、そうだよな、本を作るといっても色々な人が関わるよなと。
そしてそんな人々を繋ぐ役割をつなぐ営業マンを主人公に据えたのが良いですね。

本を作りたくて印刷会社の営業に転職した主人公。「印刷会社はメーカーだ」と言い、関係者と共に良い本を作るのこそ理想だと考える一方、先輩社員は「言われた通りに言われた通りのものを期限内に作る」ことこそ信頼を得る大切なことであると説く。
理想と現実、そのはざまで、でも理想を求め走り続ける。

また本作はお仕事小説でもあり、作品内で仕事に関する示唆などもちょくちょく出てくる。
自分でどうにかしたいと問題を抱え続けてしまったり、周囲に助けを求めるのが遅れて怒られたり、実は仕事のやり方や進め方、段取りなどに関しても分かりやすく諭してくれている作品でもある。
主人公がやらかす失敗は現実世界でもありがちで、身につまされる人も多いのではなかろうか。
私はつまされた(苦笑)

また、なんでこの仕事をしているのだろう?
自分にとって今の仕事とは?
そんなことも常に問いかけており、職についている人はその問いかけに対し、改めて自分はどうなのだろうと考える。

一人ではなく、冒頭にあげたように工場の作業員に職人、デザイナー、DTPオペレーターなど、本づくりに関与する様々な人たちに光を当てているのが良い。
本の奥付に記載されている印刷会社、その向こうには本制作に携わった人たち全ての名前が刻まれている。
エンドロール、即ち奥付がまた小粋だ。
最初に見ること無く、是非、素直に読んで奥付までたどり着いて欲しい。

本を愛する全ての人に送りたい、一級エンターテインメント作品!

■ここが改善できるともっとよかったかも?

これは電子書籍ではなく、紙で読んでおきたい!

いやー、面白くて一気読み。
なんかもう、途中とか泣きそうになった・・・・

 

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感想(0件)

 

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