ノーマルCP マリア様がみてる 江利子

【マリみてSS(江利子×祐麒)】メルティング・テンプテーション <その4>

更新日:

~ メルティング・テンプテーション ~
<その4>

 

 このところ、職場での皆の雰囲気が違うように感じていた。なぜか分からないが、祐麒を見る目や、態度といったものがいつもと変わっているような気がするのだ。それでも、仕事は続いていく。
「おかえりなさいませー」
 客を笑顔で迎えることにも慣れてきた。
 人間とは慣れる生き物なのだなと、我ながら感心してしまうというか、呆れてしまうというか。
「ユキちゃーん、ちょっといいかしら」
 麻友に呼ばれ、歩いていく。
 フロアに出ているとき、麻友は眼鏡をかけている。伊達眼鏡だということで、ニセ眼鏡っ娘になっているのだ。
「何、麻友ちゃん」
 とてとてと、歩み寄る。
 フロアから奥まった場所だから、お客さんが気にするような場所じゃないのだが、なぜか視線が注がれるのを感じた。
 不思議に思って顔を動かしてみると、他のバイトの女の子が、さりげなく目をそらすところだった。
 反対方向に顔を向けてみると、またもや同じような態度を取るバイト仲間達。
 明らかに、おかしい。
「……って、ちょっと聞いているの、ユキちゃん?」
 目の前で麻友が、腰に手をあてて怒った様にきいてくる。
「は、はい、ごめんなさい」
 麻友は、何も感じていないのだろうか。視線は、祐麒だけでなく麻友にも注がれているように思える。
「まあいいわ、仕事に戻りましょうか」
 いつまでも油をうっているわけにもいかない。麻友が何を言ったのかよく聞いていなかったが、仕事に戻ろうとする。
「……あ、と、ちょっと待って」
 フロアに出る前に、呼び止められる。
 振り向くと、麻友が頬に手を置き、小声で言ってきた。
「今日、仕事あがったら待っててね」
 その、瞬間。
 今まで以上にざわついた視線と雰囲気が、祐麒と麻友の周囲を包み込んできたような気がした。
「なんか、最近、店の様子、変じゃないですか?」
「そう? よくわかんないけど……ほら仕事仕事、呼んでるよ」
「あ、はい」
 麻友は特に気にした様子もなく、祐麒の気のせいかとも思ったが、やはりどうもチラチラと仲間から見られているように感じる。
 麻友の方を見てみれば、本当に特に何も感じないように、いつもと変わらない動きを見せている。
 不審に思いながらも仕事は忙しく、働いているうちにそんなことも気にならなくなっていく祐麒なのであった。

 

 仕事を終えた後、麻友と待ち合わせをして飲みに行く。祐麒は未成年なので、もちろん、ノンアルコールであるが、麻友が酔って調子に乗ると飲まされるので困る。
 最近はこうして、バイト帰りに麻友と共に食事をしたりすることが多い。一人暮らしで、帰っても誰もいないからつきあえという麻友に対し、特に断る理由もなく、また江利子も高校生で門限があるから、そうそう祐麒を迎えに来ることもできない。だから麻友につきあうことになる。
 加えて、麻友とはとても気があったし、話題もあう。好きな音楽、映画、漫画、ゲーム、スポーツ、その手の趣味が非常によくあい、さっぱりとした性格でもあるので一緒にいて気が楽だというのも大きい。
「よーっし、次いこうか」
 アルコールが入って上機嫌の麻友が、祐麒の肩を抱きながら気勢をあげる。明日は休日、かつ仕事も休みということで、かなり弾けている。なかなか離してくれそうにはない。
 なんだかんだと祐麒もお酒を飲まされ、気がつく頃には日付も変わってしまっていた。さて、これからどうしようかと思うものの、今から走ったところで終電は間に合わなさそうだし、そもそも麻友が逃してくれそうもない。とりあえず家には友達の家に泊まってくると連絡し、それじゃあオールでカラオケでも行くかと麻友を見る。
「祐麒くん、こっち、こっちー」
 麻友は祐麒の腕をがっちり掴み、ぶら下がるようにしながらも祐麒を引っ張っていく。
「ん、いい店でもあるんですか?」
「あるよー、イイお店。お姉さんに任せてー」
 正直、祐麒も少なからず酔っていて思考能力が低下していたから、特に何も考えず麻友に引きずられるままに足を運び、そこに入った。
 あれ、何か変じゃないかと思ったのは、部屋の扉を開けて中に入ってからのこと。大きなベッドと、そこそこに華美な室内の装飾は、一度だけだけれど似たような部屋に入った記憶を思い出させる。
「あれ、ちょっと麻友さん、ここってひょっとして、ラ、ラブホテルじゃ」
 相変わらず酔いはさめないが、それでもどうにか問いかける。
「そうだよ、ホラ、ここならカラオケもゲームもあるし、心置きなく遊べるでしょー」
「あ、そ、そうですね」
 言われて見れば、確かにカラオケもゲームもある。それがメインだったのかと、胸を撫で下ろしかけたところで。
「もちろん、セックスもすぐできるしー」
 あっけらかんと言い放つ麻友。
 冗談だろうと笑って流そうとした祐麒であったが、いつの間にか間近に迫っていた麻友に抱きつかれ、硬直する。
「ま、麻友、さん?」
「素直についてきたってことは、祐麒くんだってその気あったんでしょう? ここまで来て、何もしないって、ないよねー?」
 足を絡められると、祐麒はバランスを崩し、そのまま二人でもつれるようにしてベッドに倒れこむ。
 職場を離れると、ボーイッシュであまり女性を感じさせない麻友だったし、だからこそ気さくに友達感覚でつきあっていたが、やはり間違いなく女だった。
 柔らかな体つきと、甘い匂いに包まれて、たちまちのうちに祐麒の理性は消え去ってゆく。酔っていたことも勢いをつけさせる。こんなにも相手が積極的に誘ってきているのは、またとないチャンスではないかと。
 一瞬、江利子の顔が浮かんだが、すぐに目の前にいる麻友の、引き締まっているけれど肉感的でもある体に、心を奪われる。
「麻友、さん」
「んふ、いいよ、しよう?」
 微笑まれて。
 祐麒は無言で、麻友の服に手をのばすのであった。

 

 そして、気まずい雰囲気が二人の間に漂っていた。
「す、すみません」
 消えてしまいたいと思いながら、祐麒は頭を下げた。
「いいよ、気にしないで」
 麻友は笑っているけれど、果たして内心ではどう思っているか。
 結論を言えば、麻友を抱くことが出来なかった。
 初めてということでの緊張、そしてアルコールを摂取しすぎていたということもあり、機能しなかったのである。
 麻友の身体をぎこちない手の動きで愛撫した挙句、最後までできなかったことは、祐麒にショックを与えていた。
「でも、これでよかったのかもね。まさか祐麒くん、初めてだと思ってなかったから。この前、あたしの部屋に泊まった時もしなかったんだよね?」
 無言で頷く。冷静に思いだしてみて、あの日はやっていない結論に達した。麻友はすぐに寝ていたし、祐麒も睡魔に負けてすぐに寝た筈である。シーツにも汚れがなく、お互いの肌も綺麗なものだったのだ。そして麻友も、身体の上にシーツがかかっていたから祐麒には分からなかったが、ショーツは履いていたらしい。エッチをしてその後にわざわざショーツを穿くなんてことはしないと、麻友は冷静に考えてみて思ったという。しかし、二度も機会がありながら何もしないというのは、ひょっとしたら女性に対しては失礼なことなのだろうかと、そんなことも思う。
「えと、そうだ、あのさ」
 誤魔化すように、麻友は裸のまま祐麒の隣にやってくる。
「お口でしてあげようか? あたし、あまり得意じゃないけれど、元気になるかもしれないし」
「いや、それは」
「あの、さ、ほら、初めてのときにうまくいかないとトラウマになっちゃう男の人もいるらしいし。最初って大切だと思うからさ、ね?」
 言いながら猫のような姿勢になり、祐麒の方に向けて手を伸ばしてくる。慌てて祐麒は、股間を手で隠した。
「ありがとう、麻友さん。でもやっぱり、今日はもう」
「そう……」
 それ以上は、麻友も無理には言ってこなかった。
 正直な気持ちをいえば、物凄く勿体無いという思いはある。麻友は素敵な女性だし、心も身体も魅力的である。
 そんな女性が身体を開き、祐麒を口で愛してくれると言っているのだ、嬉しくないわけもない。
 だけど、心が一度冷えてしまったのだ。
 誰のせいでもない、祐麒自身のせいだ。
 中途半端に流された、祐麒自身の心の弱さのせいだった。
「じゃあさ、気分を変えてゲームする? 結構、ソフト揃っているよここ!」
 明るい口調で麻友が聞いてくるので、祐麒は素直に頷いた。
 はっきりいって、今の状況では悶々として眠ることもできそうになかったから、麻友の申し出はありがたかった。きっと麻友も、分かっているからこそ提案してきたのだろう。
 結局、朝方近くまでゲームをして、疲れ果ててようやく二人は眠りについた。そんなんだったから、目覚めたのは当然のように太陽もとっくに昇りきったお昼ごろで、そんな時間にホテルを出たから、この後また問題になるのであった。

 

 麻友とそんなことがあってから一週間。祐麒は今まで以上に、バイト仲間からの厳しい視線を感じていた。これはもう、確実に気のせいなんかではないと確信する。
 仕事にも差しさわりが出そうなので、祐麒はようやく思い切って皆に尋ねてみることにした。一日の仕事を終えた更衣室で、着替えを始める前に皆に向けて口を開く。
「あの、皆さん。最近、やけに俺のことを見ていたりしません? 態度もなんか変だし、何か俺、悪いことしたでしょうか」
 すると、その場にいた全員がしめしあわせたように顔を見合わせ、やがて歩調をそろえて近寄り祐麒を取り囲んだ。
「自分の胸にきいてみたら? 悪いことだなんて、分かっているでしょう?」と、亜子。
「最近、あやしいと思っていたけれど、やっぱりそうだったのね」と成海。
「麻友さんと江利ちゃんの二股かけるなんて、意外と度胸あるわよね」と、恭子。
「え、ちょ、ちょっと待ってください。あの、どういうこと」
 うろたえながら、皆の顔を見るが、全員、真剣な表情。
「ここのところ、しょっちゅう麻友ちゃんと遊んでいたしね」
「いや、でもそれは」
 確かに麻友とは仕事帰りに食事をしたり、ゲームセンターに行ったり、カラオケに行ったりと行動を共にすることが多いが、それは単に遊び友達の感覚であって、恋愛とかそういうものではないと、説明する。
 しかし、誰一人納得などしない。
「てゆうか、そういう状態って、外から見れば付き合っているようにしか見えないよ。彼女がいるのに、他の女の子と二人だけでデートって、普通しないでしょ」
「でも、俺は」
「ユキちゃんがそういうつもりでも、麻友さんの気持ちだってあるでしょう?」
「麻友さん、ショタだからねー。ユキちゃん思い切りストライクゾーンど真ん中よ」
 言い訳する暇もなく、畳み掛けてくる。
 そしてついに、理於奈がとっておきの爆弾を投げつけてくる。
「友達同士で、ラブホ行く? 見ちゃったんだ、麻友さんとユキちゃんがホテルから出てくるところ」
「え――」
 思わず、言葉をなくす。
 そして、そんな祐麒の様子を見て、理於奈以外の女性陣が口を開く。
「あー、本当だったんだ。話聞いたときは半信半疑だったけれど」
「うわ、マジで? ちょっとユキちゃん、本当にどういうつもりなの? 江利ちゃんと付き合っているんじゃなかったの? 本当に二股?」
「ショックだなー、ユキちゃんは真面目なコだと思ってたのに」
 騒がしくなる更衣室内。
 ホテルに入ったのは事実だが、実際には何もしていない。(というわけではないかもしれないが、最後まで事は至っていない) そう言いたかったが、そんなことを口にしたところで誰も信じたりしないだろう。
 どうすればよいのか、分からない。
 とにかく、この場を収めないといけないと思ったその時。

「――あ、江利ちゃん」

 誰かの言葉に、更衣室内が急に静まり返った。
 そして、顔を入り口の扉に向けてみると、はたしていつからいたのか、江利子が無言で、無表情で立ち尽くしていた。ただ、その視線は祐麒に向けられている。
 雰囲気で、麻友とのホテルの経緯の部分も聞かれてしまったと悟った。
 何をどう言いつくろえば分かってくれるだろうかと、相変わらず混乱したままの頭脳をどうにか回転させようとした祐麒であったが。
 江利子が手にしていたものを、振りかぶって思い切り投げつけてきて、見事に顔面に命中して一瞬、気が遠くなる。
 踏鞴を踏んだもののどうにか踏ん張り、痛む顔面をおさえながらどうにか目を開いたときには、江利子の姿はすでに消えてなくなっていた。
「え……あ、あれ?」
 ひょっとして幻だったのか、などと間抜けなことを考えそうになっていると。
「ちょっと、何ボケッとしているのよ。追いかけなさいよっ」
 理於奈が険しい表情で祐麒の腕を掴んだ。
「ほら、今ならまだ追いつけるかも」
 床に落ちていた、江利子が投げつけてきたものを祐麒に手渡しながら、亜子もまた背を押してくる。
「事情は分からないけれど、きっちりしないと。江利ちゃんにも、麻友ちゃんにも」
 恭子が、真剣な目で見つめてくる。
「は……はい」
 祐麒は頷くと、更衣室を抜けて走り出した。
 自分自身もまだ心の中がぐちゃぐちゃだけれど、間違いなく自分の行動が引き金となって江利子は逃げ出した。実際には恋人でもなんでもない江利子が、はたしてどう思ったのかは分からないけれど、放っておくわけにもいかない。店を飛び出すと、前方に江利子の後ろ姿を見つけ、すぐに追いかける。
 夜の街はまだ人も多いうえに、電気がついていても暗い場所は目が届きにくい。どうにか見失わないように走っていく。
 手に持っているのは、江利子がなげつけてきた本。先日、江利子と会話した際の話題で出てきた作品で、祐麒が何気なく読みたいと言ったら、確か兄が持っているから今度持ってきてあげる、と江利子が応じたのだ。
 門限があるから、江利子はバイトが終わる時間に店に来ることは、あまり出来ない。それでも時々、色々と家族に理由をつけては迎えに来てくれる。今日もまた、こうして本を届けに来てくれた。
 江利子の本当の気持ちなど分からない。
 自分の気持ちだって、よく分からない。
 この後、江利子を捕まえて何を言うべきか、まだ心の中で定まっていなかったけれど、このまま逃してはいけないと思った。
 しかし、なかなか追いつけない。男と女だしすぐに追いつけるかと思っていたが、人の間を縫うように走るし、意外にも江利子は健脚のようで、距離が思うようにつまらない。
 それでも諦めずに追い続け、江利子が通行人にぶつかりそうになってバランスを崩したところで、ようやく捉えることができた。まだ逃げようとする江利子の腕をつかみ、祐麒は離さない。
 二人は向かい合う。
 お互い、ずっと走ってきたせいか息が乱れており、しばらくは荒い呼吸音だけが周囲に響く。
「……江利子さん、あの、話を聞いてください。麻友さんとのことは誤解ですから」
 江利子は無言で、祐麒のことを見ている。その瞳は、物憂げに見えて、でも今までに見たことがない冷たさを抱えていた。
「信じられないかもしれないけれど、本当なんです」
「――何が?」
 聞いたことが無いような冷たい口調で、江利子が言う。
「確かに、麻友さんとホテル入りましたけれど、それは夜遅くまで遊んで帰れなくなったから、朝までゲームしてただけです」
「ホテルでする必要はないでしょう?」
「そ、それは怖いもの見たさというかもあって」
「それより、ホテル以外のこと」
「え?」
「このところしょっちゅう、麻友さんとデートしているんですって?」
「べ、別にデートじゃなくて、ただ遊んでいるだけで」
「同じことよ……私、知らなかった」
 わずかに顔をそらす江利子。セミロングの髪の毛がふわりと揺れ、江利子の横顔を隠すようにする。
「そ、それは」
 祐麒が次の言葉を口にする前に、顔を上げて祐麒のことを見つめ、江利子は口を開いた。寂しい光を瞳に宿して。
「そりゃもちろん、行動の全てを知らせろなんていうつもりはないけれど。本当の恋人じゃないのかもしれないけれど。でも、皆には恋人同士だっていうことになっているじゃない。それなのに、麻友さんとデートしてること知らないなんて、私が凄い惨めじゃない! 麻友さんと付き合うんだったら、ちゃんと私と別れてからにしてよ!!」
 言っているうちに感情が昂ぶってきたのか、江利子は最後には大きな声を出していた。祐麒は言葉を返せない。確かに、なかば強引に江利子と恋人同士という関係になり、皆に公表された。事実とは異なっているけれど、祐麒も否定をしなかった。本当に江利子と付き合う気がないのであれば、あるいは他に本当に好きな人がいるのであれば、きちんと江利子に理由を話し、真実を皆に告げるべきなのだ。江利子に弱みを握られているから、なんていうのは祐麒次第でどうにでもなるはずなのに。
 なんだかんだいって、嘘でも美女とつきあえるということに、喜んでいたのではないか。それでいながら、本当に付き合っているわけではないから、他の女性とちょっと遊ぶくらい良いだろうと、中途半端な状況を利用していたのではないか。今まで目をそらしてきたことが一気に襲い掛かってきて、足元がおぼつかなくなってくる。
「……でも、そうよね。私が勝手に、恋人同士だなんて言っただけだものね。貴方にしてみたら、他の女の子とデートするのに、私の許可なんて必要ないわよね。ごめんなさい」
 しかし、祐麒が自己嫌悪に陥りそうになったとき、江利子の方が先にそう口を開き、視線を逸らした。
 まるで感情が消えてしまったかのような江利子の横顔を目にして、祐麒の胸が疼く。このままで、いいわけがない。
「待って、江利ちゃん。違う、江利ちゃんが謝る必要なんか無いから。悪いのは、こっちだから」
「やめて、離してよ」
「離さないですよ、こんな状態で離せるわけないじゃないですか」
「そうじゃなくて、離してよ。だって」
 そこまで言って、江利子はちらりと居心地の悪そうな表情をして、俯きがちに視線を横に向ける。その先を追いかけてみると。
「あ」
 夜とはいえ、まだまだ遅いとはいえない時間帯、人も多い。そんな街中で、大きな声を出して言いあいをしていたためか、周囲に人が集まり、注目を集めていた。
 しかも、ひそひそと話している声を拾い上げてみれば。
「え、何、痴話喧嘩? 修羅場?」
「二股かけていたみたいよ」
「ってゆうか、女同士でって本当にあるんだ。あたし、始めてみた」
「すげーな、ガチの三角関係かよ」
 そんな会話が聞こえてきてようやく、祐麒はバイトの制服、即ちメイド服で女装した格好のままであることを思い出した。傍から見れば女の子同士の喧嘩だが、内容は明らかに痴話喧嘩だし、さらにもう一人別の女の名前も出ていて、一体どんな関係なんだと興味を煽って仕方ないものだった。
「と、とりあえず行こう、江利子さん」
 一気に恥しくなり、ひとまず江利子の手を引いてこの場を撤退することにした祐麒であったが、途中で隙を突かれて江利子に手を振りほどかれてしまった。

 夜の街に消えていく江利子の背中を、今度は追うこともできず、ただ、立ち尽くして見つめていることしか出来なかった。

 

その5に続く

 

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