【作品情報】
作品名:ヒトリコ
著者:額賀 澪
ページ数:277
ジャンル:エンタメ
出版社:小学館
おススメ度 : ★★★★★★★☆☆☆
読後の青春小説っぽい爽快度 : ★★★★★★☆☆☆☆
こういう人におススメ! : 苦い青春系小説を好む
小学生時代、とある事件をきっかけにしてクラスで孤立してしまう日都子。
その事件以来、心を閉ざし、他の子との関わりを避け、やがていつも一人の「ヒトリコ」と呼ばれるようになる。
そのまま中学生となり、やがて高校生となった時。
小学生時代の事件が起きる直前に転向していった冬希が再び町に戻ってきた。
冬希が現れたことで動き出す時間。
苦い、青春小説。
小学生というか、子供って残酷ですね。
クラスの金魚が死んでしまった。金魚を世話していた日都子が殺したのではないかと疑われ、教師も決めつける。
それだけのことで、日都子の学校生活は一変。
しかも、田舎の小学校で1クラスしかないような狭いコミュニティでそんなことあったら、もうどうしようもない。
とにかく序盤から苦くて重苦しい、閉塞感に満ちた展開が続く。
ただ、主人公の日都子が一人でいることを早々に認め、むしろ積極的に人との関わりを捨てており、その態度はある意味清々しい。
孤高ではあるのだが、それを自ら望んでいるような。
だから、重苦しい展開なのに不思議とすらすら読めてしまう。
日都子と対にいるのが冬希である。
冬希の場合、母親がいわゆるモンスターペアレントであり、母親が常にのしかかってくる存在。
それを切り捨てられれば良いのだが、そういうわけにもいかない。
そんな冬希は、人との関わりをばっさり切り捨てている日都子の姿に、ある意味憧れる。
高校生となった二人が出会うことで化学反応のようなものを起こし、二人の心境に変化が起こる。
小学生時代で止まっていた時間が動き出す。
ただ重い展開で終わるのではなく、最後は変わっていく日都子の様子が見えて、ちょっと明るい気持ちになれる。
まだ高校生、この先、どんなことが起こるか分からない。
青春っぽさを感じさせる終わり方はよかった。
日都子だけでなく、冬希や、日都子をハブにする原因を作った人物視点でも書かれていたりして、それが楽しいわけではないけれど、子供たちの様々な思いを見ることが出来る。
明るく楽しいだけが青春ではない。
辛く、苦く、理不尽なことも沢山ある。
でも、冷たいだけじゃない。
そんな青春小説。
まあ、とにかく前半というか後半まで決して読んでいて気持ちの良い展開ではない。
それを越えられるように。
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価格:702円 |