書評と主にマリア様がみてるの二次創作(旧:よしのXブレード)

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【マリみてSS(加東景)】加東景の絶体絶命

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~ 加東景の絶体絶命 ~

 どこかから誰かに見られている。
 ここ数日間、どこからともなく視線のようなものを感じていたが、気のせいだろうと思っていた。
 しかし今は、確信に変わっていた。何物かは分からないが、誰かが自分の行動を見張っている。ストーカーか変質者か、まさか興信所のようなところが自分のことなどを尾行しているとも思えないが。
 さて、どうすればよいかと景は思案した。このまま後をつけられたままでいるわけにはいかない。しばらく、気づいていないフリをしたまま行動を続ける。
 三十分ほどぶらついてみたものの、尾行者はいまだどこかへ消え去る様子も見えない。景は冷静ではあるが、気が長いというわけではない。徐々に苛々が高まってきた景は、とうとう耐えかねて実力行使にうってでた。
「……そこだっ!!」
 不意に振り向きざま、懐に忍ばせていた扇子を投げつける。
「ふぎゃっ!」とかいう断末魔と、確かな手ごたえを感じながら尾行者の姿を確認しようとすると。
 意外なことに尾行者は怪しげな中年男性でもなければ、よれよれのトレンチコートに身をまとった探偵風の男でもなく、社会不適格者っぽい男でもなかった。
「女の子……?」
 額をおさえてうずくまっていたのは、明らかに高校生くらいの女の子だった。
「ええと、貴女……?」
 近づいていって、女の子のことを覗き込むように前かがみになると。いきなり、女の子の目がキラリと光った。
「おおっ、緩やかな胸元から覗くふくよかで柔らかそうな二つの膨らみを連想させる美しい谷間!これはシャッターチャンスだわ。激写、激写。激写ガール」
 首から提げていたカメラを手に構えると、立て続けに何枚もシャッターを切った。カシャカシャとやかましいくらいの音と、突然の状況に目をぱちくりさせていたが、やがて怒りがこみ上げてきた。
 するとなんだ、ここ数日間、この女の子に『盗撮』されていたということか。景は女の子の襟首をつかみ立ち上がらせると、上から下までじっと見つめた。
 特にどうということはない、普通の可愛らしい女子高校生にしか見えない。縁なしメガネとカメラがポイントか。
「あああの、そんなに見つめないでください。私、まだ子供できちゃうのはちょっと」
「待て。なによそれは」
「え、だって貴女に見つめられるとデキちゃうという巷の噂が」
「誰よ、そんな出鱈目吹聴しているのは?!」
 景は吼えた。
「っていうか、あなたは誰?!なんで私をつけていたの?」
「……ふふ、よくぞ聞いてくれました」
 女の子はメガネのフレームをちょいと指であげると、口の端を軽く上げた。
「私の名前は武嶋蔦子と申します。実は、貴女の後を追っていたのにはわけがありまして」
 それはそうだろう。訳も無く尾行されていたのでは気味が悪い。訳があったとしても気分はよくないけれども。
 蔦子と名乗った少女は、肩から提げたバッグに手をいれると得意げに何かを取り出した。
「これです!」
 突きつけられたのは、写真の束。景は写真を手にして、そこに写されているものをぱらぱらと目にして首を傾げる。
「これこそ動かぬ証拠です」
 得意げにメガネを光らせる蔦子。
 手にした写真には確かに景が写っていて。

 最初の何枚かには、江利子と一緒に歩いている自分の姿。

 続いて、蓉子と行動をともにしている写真が何枚か続き。

 さらにその後には、聖と二人の写真。

 江利子と一緒にいるのはおそらく昨日のものだろう。新しい服が欲しいということで、買い物につきあったのだ。蓉子との写真は、その前の日のことだと思う。可愛らしい洋服を着ていたから覚えている。参考書を購入するのに出かけた。そして聖と一緒のものは、さらにその前日ではなかろうか。大学が終わってから、誘われるがまま街をぶらついていた記憶がある。
「……これが、何の証拠ですって?」
「あの前三薔薇様方を好きなように弄んでいるという、明確な事実を写し取った証拠です。噂に違わぬプレイガールぶりです……加東景さま」
「ちょ、ちょっと待って。別に友達と出かけるくらい普通でしょう?」
「友達?これのどこが友達ですか?!」
 さらに懐から写真を取り出す蔦子。そこに写っていたのは
「友達同士が、こんなにべたべたと腕を組んで街中を歩きますか?」
 景の腕に自分の腕を絡ませて、恋人のように寄り添っている江利子。そういえば、昨日は随分と江利子の甘酸っぱい匂いを近くに感じたような気がするし、腕に柔らかくて気持ちの良い感触がずっと押し付けられていたように思う。あの感触は、聖や蓉子からは感じられない江利子独特のもので、景も嫌いではない。
「こんな、指と指を絡ませる恋人同士の手のつなぎ方しますか?!」
 これは確か、蓉子の方から手をつないできたのではなかっただろうか。最初は普通に手をつないでいたような気がするが、人ごみではぐれてしまいそうだからと言われて、つなぎ直した記憶がある。蓉子の細くて柔らかな手と指は、絡ませているとどこか安心感を得られるような気がする。
「友達同士がこんな、人前で抱擁したりしますか?!」
 それは酔っ払った聖を介抱するためにしたことで、好きでやっているわけではない。まあ確かに酔っ払ってふにゃふにゃになった聖は、面倒だけれどもいつものような斜に構えたところがなくてちょっと可愛らしいけれど。それに介抱するとなると必然的に体を色々と触ることになる。意識のあるときに触ると喜ばれるだけだけど、意識のないときなら多少は役得というもので……
「――って、私ったらなんでそんな変なことを自然に考えてっ?!」
 これはまずい。かなり周囲に汚染されて重症になりつつあるような気がする。これが恐るべきリリアン女学園が発生源の『不純性白薔薇高感度山百合症候群』、俗称"ガチ病"といわれているものか。噂によると、今の白薔薇のつぼみとやらも感染し、今ではめっきりトップランナーとして先頭を独走しているという話だ。
「それだけではありません。他にもほら、こんなに」
 ばらばらと、出るわ出るわの大放出。
 一体、いつどこで撮ったのか分からないくらい大量の写真が、蔦子の鞄やら懐やらポケットやらあんなところやらこんなところから出てくる。
 蓉子とドリンクを二本のストローで『恋人飲み』しているところ。聖に後ろから抱きつかれている瞬間。江利子のサラサラの髪の毛の匂いをかいでいるところ。更に加えるならば、祐巳の頭を撫でていたり、令に肩を抱かれていたり、志摩子と乱れたブレザー姿で絡みあってエッチしていたり……って、最後のやつは明らかにアイコラというか合成写真だろう。
「現山百合会の姿を追っていたら景さまのことに突き当たり、さらに景さまを追っていったら現山百合会どころか、前三薔薇さままで既に手篭めにしているという事実に到達したというわけです」
 恐ろしかった。
 何が恐ろしいって、何日間も尾行されて隠し撮りされていたことよりも、自分自身があまり意識しないうちに色んな女性とそのような行動を取っていたという事実が恐ろしい。嘘だと言いたいが、写真として動かぬ事実をつきつけられると否定のしようもない。しかも、記憶をたどってみれば確かに自分としても覚えがあるのだから。
「と、とにかく、盗撮なんて一歩間違えれば犯罪行為よ。写真とこのカメラはひとまず私が預かっておくわよ」
「え、あ、ちょ、ちょっと待ってください。それはちょっと」
「駄目よ。そういうわけにはいかないの」
 カメラがよほど好きなのだろうけれど、ここで甘い顔をするわけにはいかない。景は蔦子の首筋に手をのばし、提げていたカメラを取り上げた。
「うあ、ダメ、首筋弱いのっ……」
 へなへなと腰砕けになる蔦子。
「こ、これが噂の『フィンガーマジックオーケストラ』……?」
「さようなら」
 もはや突っ込む気力すら出てこず、その場に蹲る蔦子を残して、景は帰途についた。

「ふうっ……」
 部屋に帰り着くと、景はトートバッグをひっくり返して蔦子から回収した写真をベッドの上にぶちまけた。
 よくもまあ、ここまで撮ったものだとある意味感心する。
「しかし……」
 改めて写真を見て、ため息をつく。写真だけを見れば、自分が何かと噂されてしまっても仕方ないと思えてくる。だが、これらはみな仕組まれたことなのだ。別に自分から腕を組んだり手をつないだり、カップル用のドリンクを頼んだりしたわけではない。そう、自分は陥れられただけなのだ――
「……って、なんじゃこりゃぁ?!」
 自分の盗撮写真に混ざって、他の写真があった。それらは、テニス部員のパンチラ(アンスコではあるが)であったり、女子更衣室らしき場所での着替えシーンであったり、山百合会らしき人たち(祐巳や志摩子がいるのでそう思った)の少しエッチな瞬間を撮ったものであった。
「……これは本当に犯罪じゃないのかしら?」
 頭が痛かった。
 疲れきった景は、とりあえずその日はさっさと床につくことにしたのであった。

 翌日のこと。
 大学の講義が終わり、聖と一緒に連れ立っての帰宅途中に、蓉子と江利子が合流した。昼休みのうちにメールのやり取りをして、珍しく全員の予定が空いていたので会う約束をしていたらしい。そのこと自体は別に構わないのだが、景の部屋で集合するというのはいかがなものだろうか。知らぬうちに、リリアン生(在校生、卒業生問わず)の溜まり場になりつつあるような気がする。
 そう思いながらも断ることも出来ない景は、結局のところ彼女たちを部屋に上げることになるのだ。
 部屋に入ると、まず蓉子が手馴れた感じでキッチンに足を運び、手際よくお茶のコーヒーの準備をする。いつの間にか、食器や食材などの置き場所も把握しているようだった。聖と江利子は、自分の部屋のようにくつろいでいる。
 特別に何かをするわけでもなく、お喋りに興じたり、途中で買ってきたケーキを食べたりして時間は過ぎていき、夕方から夜になりかけたところで事態は変わった。
「あれー、カトーさんいつのまにデジカメなんて買ったの?」
 机の上に置きっぱなしになっていたカメラを手にした聖が、物珍しそうに眺めながら口にした。
 大きなレンズがついていたから普通のフィルムのカメラかと思っていたが、どうやらデジタル一眼レフだったらしい。
「へー、凄いわね、私にも見せてよ」
「これ、デジカメなの?」
 蓉子、江利子の二人も立ち上がり、興味深そうに覗き込んでいる。
「あ、それは昨日」
 言いかけたところで、玄関のチャイムが鳴った。
 景はカメラに興じている三人に何か言おうとして諦め、玄関に向かった。
「あれっ?」
 扉につけられている覗き穴から外を覗くと、目に入ってきたのは見覚えのある顔。戸惑いながらも扉を開くと。
「えーと、あなた確か、蔦子ちゃん、って言ったかしら?」
 そう、景の後をつけまわし、写真をとりまくっていた女の子だ。昨日と異なりどこか思いつめたような表情である。
 胸の前で手を組み、何かを言おうとして口ごもり、でもやっぱり決意を滲ませた顔を向けてくると、意を決したように口を開いた。
「あの、私の写真、返してくださいっ」
「ああ、あのカメラね。そうね、反省したなら返してあげてもいいけれど……」
 その前に、デジカメだったら中のデータを消去しないといけないな、と考えていると。
「うわっ、何コレっ?!」
 背後で叫び声があがった。
 何事かと思って振り返ろうとしたそのとき。
「ああああっ?!」
 目の前の少女が、この世の終わりでも来たかというような声を出した。
「もう終わりだわっ!!」
 頭を抱え、身悶えする。
 訳がわからなかったが、とりあえずカメラを中心にざわついている三人の側に足早に近寄る。
「ちょっとどうしたの、みんな?」
 しかし、誰も応えようとしない。何かに憑かれたように、デジカメの液晶画面に表示される画像に目を奪われていた。
 そういえば、景とのデートシーンなどが色々と撮られていたから、それらに気をとられているのだろうか。景は手を伸ばしてデジカメを素早く奪い、画面を確認してみた。
「……な、なんじゃこりゃーーーーっ?!」
 画像を見て叫ぶ。
 写っていたのは予想を裏切り、カメラの持ち主、蔦子の姿だった。
 だが、ただ写っていただけではなかった。画像の中の蔦子は恥しそうな表情で肢体をさらしていたのだ。いや、裸というわけではない。脱ぎかけでブラと胸の膨らみが見えている状態とか、スカートの裾を持ち上げて下着が見えそうな格好だとか、どこかのエロいアイドル写真集のようなポーズをとっている。あるいは、チアガールやキャンギャルのようなコスプレ写真であったりして。順々に画像を切り替えていって確認するが、どれもこれも、同様のものだった。
 要するにこれは。
「セルフ撮影した画像ばかりかよ?!」
 しかも恥しい写真ばかり。趣味かどうかは分からないが、確かにこれは他人には見せられないものだろう。
「お願いします、景さまっ!どうかそれを公表するのだけは許してください!もう景さまには逆らいませんから。今日はその、景さまのモノになる決意で来ました……だから、お願いです」
「いや、そう言われても」
「カトーさん、カメラちゃんの恥しい写真撮って、自分のモノにしようと?!」
「なんでそーなるっ?!」
 とはいいつつも、確かに状況だけ見たらそう思われても仕方ないのか?絶対確実に誤解だというのに。
「このコスプレカメラちゃんもカトーさんの趣味?」
 そりゃ可愛いけれど。
 や、そうじゃなくて。
「あーっ、なに、この写真っ?!」
「え」
 新たな叫びに振り返ると。
 写真を手にして固まる蓉子の姿が目に入る。どうやら、昨日蔦子から取り上げた写真の束をどこかから見つけてしまったらしい。
「わ、私の着替え写真?!」
 確かにその写真には、蓉子の着替え中らしき姿が写しだされていたが、そんな写真あっただろうか。量が多すぎたため、昨日のうちに全部を確認できてはいなかった。
「やだ、これこんなのいつの間に?あ、これ水着のパンツの食い込みを直しているとこ……」
 自分自身の姿を見て真っ赤になる蓉子。
「うわ、これ私なんかトイレ?景さんマニアックぅ……あ、私は水着のブラを直している所……微妙に見えている」
 なぜか少し楽しそうな口調の江利子。
「私はシャワーシーンに、これ寝ているところ?い、いつの間に撮ったのカトーさん?」
 驚いている聖。ちなみに寝姿はパンツ一枚だ。
「私たちだけじゃないわよこれ?!令に祐巳ちゃんに志摩子……うわ、凄い、これ、やだ……ふわぁ……」
「カトーさん、あなた……」
「違う!これは全部あの娘が……」
 と、蔦子を指差すと。
「お願いします景さま!何でもしますから、あの写真だけは!」
「何言っているのよ、カメラちゃんが自分であんな写真を?!」
 そうですとも。
 だけど、カメラと写真が景の部屋の中に置いてあったことは事実で。
「そういえば景さん、コスプレ好きよね。ほら、あの喫茶店でバイトしている女の子にもよく色々なコスプレさせているじゃない。もともとお持ち帰りしたのだって、ウェイトレスのコスチュームでのプレイをしたかったからというし」
「だから違うっつーの!あの娘は自分でヤっているのよ!てかお持ち帰りしてないから!」
「じゃあ、志摩子に着せていたセーラー服は?」
「あ、あれは確かに私が着せようとしたけれど……っていやそうじゃねー!」
 なんだかどんどんと泥沼に入り込むようで。
「け、景さんっ。わ、私だったらこんな盗み撮りしなくても、どんな姿でも見せてあげるのに……こ、こすぷれだって……」
 もじもじしながらも、情熱的に迫ってくる水野蓉子。
 その情熱はお願いだからどこか赤道直下あたりで放出してきてほしい。
「ひょっとしてコレ、カトーさんがモノにした女の子コレクション?」
「違うと言っとろーが?!ほら、ちょっと蔦子ちゃん、このカメラは貴女のでしょう?ちゃんと証明してよっ」
 詰め寄るが、蔦子はメガネに涙の光を反射させて。
「で、でもそのカメラ、景さまに取られて……」
「た、確かに私が取ったけど、でも元々は」
「やっぱりカトーさんが撮ったんじゃない?!」
「取ったけれど、そっちの撮ったじゃなくて!」
「カメラちゃん、あんな恥しい格好で……う、羨ましい……」
「アンタは黙っとれ!」
 足にすがり付いてくる蓉子を振りほどく。
「確か、この辺にメイド服置いておいたのよね。着てみようかしら」
 いつの間に人の部屋にメイド服なんて置いたのだ凸ちんは?そして何故今、それを着用しようとしているのか。てゆうか既に脱ぎ始めている?!
「私は、リリアンの制服でいいかな?」
 何がいいのだ聖?!
「わ、私は……?」
 オロオロする蓉子。対抗してコスチュームを模索する必要ないですから!残念!
「私も、何か着替えたほうがよろしいでしょうか?」
 言いながら、既に鞄から何やらゲームキャラっぽい衣装を取り出し、下着姿になりかけている蔦子。
 いつの間にか部屋の中は、怪しげなコスチュームを身にまとった美少女たちによって異空間に転じようとしていた。

 そして、机に上に置かれたデジカメはなぜかタイマー設定がされていて、その不思議空間を写し取っていた。

 それはどこからどう見ても、一人だけ普通の格好をした景が、他の四人とコスチュームプレイを楽しんでいるようにしか見えないもので。

「なんでこーなるのっ?!」
 景の叫び声が虚しく部屋に響き渡る。

 景の桃源郷は確実に現実のものへと近づいているのであった。

 ……ちなみに。
 この話を後日耳にした令が、いそいそと色々な衣装を作りはじめたのは全くの余談である。

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