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ギャグ・その他 マリア様がみてる

【マリみてSS(加東景)】加東景の衝撃

更新日:

 

~ 加東景の衝撃 ~

 

 

 加東景は頭を抱えていた。
 いや、比喩でなく本気で頭を抱えていた。
 いつの間に、知らぬ間に、景の人生は捻じ曲がり、方向転換し、錯綜し、どこへ向かうとも分からない状態になっていた。
 そりゃ、父親が入院して留年すると決まったときも少しは同じようなことを考えたりもしたけれど、今現在とは比が異なるというか、比べる方向性も異なるが。
 高校を卒業するまでの景は、ごく普通の、どこにでもいるありふれた女子だった。成績は良かったけれど首席になるほどではないし、容姿は悪くないけれど誰もが振り向くほどの超絶美人というワケでもない。
 ところが今やどうだ。
 なぜか知らないけれど、我先にと争うように女の子たちが寄ってくる。そしていつの間にか少女キラーの名を世間(主にリリアン界隈)に広めているってものだ。
 そんな状態をどうにかしたいと思いつつも、どうしたらよいのかさっぱり分からない。噂なんてものは、本人の意思を無視して、しかも勝手に内容を増幅させながら広がっていくものなのだから。
「ちょっと景さん、暗いわねー。大丈夫?」
「え、あ、うん大丈夫」
 話しかけてきた鳥居さんに、頷き返す。
「本当? 結構、体力勝負的なところもあるからね、今日は」
 心配そうな表情をしてくる鳥居さんに対し、安心させるように笑ってみせる。
 今日は実は、鳥居さんの紹介でアルバイトをすることになっていた。急な依頼だったけれど、予定の人が入れなくなって、都合がつかないかといきなり連絡があったのが昨日。色々とあって鳥居さんの頼みを無下に断ることもできず、今日は特に予定がなかったことともあわせて、アルバイトを引き受けることにした。
 仕事の詳細は聞かされていないが、イベントスタッフということで、会場の設営やらパンフレットの配布やら、その手の仕事でも割り振られるのだろうかと想像を働かせていた。
 鳥居さんに連れられて電車に乗り、実際のイベント会場へと向かう。イベントスタッフということで朝の集合も早いから、まだ少し眠い。
「で、結局イベントスタッフって、何をするの?」
「商品の説明とか、そういうのかな。マニュアルはあるし、分からなければ正式な社員さんも近くにいるから、そっちにふっていいみたいだけれど」
「ふーん」
 欠伸を噛み殺しながら、気のない返事をする。元々する予定のないアルバイトだったし、朝も眠いということでいまいち気合いがのってこない。
 それなりの時間、電車に揺られた後にイベント会場に到着した。場所を聞くのを忘れていたが、いざ到着してみると会場の有名さ、広さにびっくりする。どこかの商店街とかショッピングモールとかでのイベントを想像していたから、尚更だ。
 思わず、「本当にここでやるの?」と会場を指さしてしまったが、鳥居さんはすました顔で頷く。
 このあたりから、何か嫌な予感は漂っていたのだが、睡魔で頭が働いていなかったこともあり、景はあっさりと納得して、仕事の説明を受けるべく中に足を進めるのであった。

 

 そして、今。
「な、なんなのよこれは。どういうつもりなのっ?」
 景は怒りと羞恥に顔を赤く染めながら、少し大き目の声で吠える。
 景が文句をいいたいのは、支給されたユニフォームについてであった。
 ホルターネックのような感じで、首まわりが覆われて背中が大きく開いたトップスは、なぜか胸の真ん中あたりがハート型に穴があいていて、そこから胸の谷間が見える。おへそは丸出しで、スカートは当然のようにミニスカートで脚には白いブーツ。オレンジ、ブラック、シルバーで構成されたその衣装は、明らかに女性としての魅力やフェロモンを出すためにデザインされたようなもの。
 今日のアルバイトはイベントスタッフというか、コンパニオンの仕事であった。というか、ユニフォームの各サイズが自分にぴったりだというのが、何とも腑に落ちないが。
「ちょっと鳥居さん、こんなの聞いてないわよ。私、コンパニオンだなんていったって、何を喋っていいのやら。それどころか、何の企業のコンパニオンになるわけ?」
「落ち着いて、マニュアルがあるって言ったでしょう。景さんならすぐに覚えられるし、いざとなったら周囲の人に聞いて大丈夫だって言ったでしょう」
 宥めてくる鳥居さんも景と同じ恰好で、だけど強調される胸の谷間は明らかに景より大きくて、思わずちらちらと見てしまう。
 鳥居さんだけではない、同じユニフォームを着ているのが、他にも三人ほど。コンパニオンということのためか、みんな美人でスタイルが良い。これもまた、想定外に得られた美味しい副産物か。
 ちなみに、渡されたマニュアルには、説明すべき文章が載っていて、さらにはお客との想定問答集もが掲載されていた。読んでみると確かにそれほど難しい内容ではないし、大体は覚えることもできそうだった。それに、喋るべき内容部分については手元に持っていて、いざとなったら見ても構わないとのこと。それならば確かに、何とかなりそうな気はした。
「……ねえ鳥居さん。これって、テレビゲームのイベントなの?」
「そうよ。各メーカーの新作、予定作発表の場、みたいな感じかしら」
 広い会場、そして会場前に並んでいた人の姿を見て、こんなにも人が集まるイベントなのかと感嘆する景なのであった。

 

 いざ、イベントが始まると、考えが甘かったかと思い始めた。何がって、写真に撮られまくるということである。
 ゲーム雑誌社なんかのカメラはともかくといて、いわゆる『カメラ小僧』というのが存在して、ちょっといやらしい目をレンズ越しに向けてくるわけで。シャッター音とフラッシュが間断なく実行されているのがわかる。撮影禁止場所も多いのだが、その辺を縫って撮っているようだ。
 もちろん、景たちばかりが移されるというわけではなく、他の企業のブースでも同じことは起きているわけなのだが、それで心が慰められるわけでもない。人前でこんな恰好をして、写真に撮られているなんて、今の姿、様子を考えただけで恥ずかしい。
「ほら景さん、そんな顔していないで、サービスしてあげなさいよ」
「きゃあっ」
 いきなり鳥居さんに後ろから背中を押された。
 バランスをくずして前につんのめり、ちょうど景の前方に立っていたコンパニオンの谷村古都さん(21)(推定スリーサイズ 84・59・83)に抱きついてしまった。古都さんの柔らかいおっぱいが押し付けられ、小ぶりなお尻に手が触れる。セミロングの髪を横で束ねた、垂れ気味の目が可愛らしい女性である。
 思わぬハプニングに、一斉にシャッターが押されフラッシュが光る。
「ご、ごめんなさい」
「い、いえ」
 顔を真っ赤にして伏せる古都さんが、猛烈に可愛らしい。
「はいみなさん、申し訳ありませんが許可なく撮影はご遠慮願います」
 企業の人が、カメラを持った人に注意を与えていく。今いる場所は撮影禁止というわけではないが、ルールもなく撮影されてはそもそものイベントに支障があるため、マナーある撮影を求めているというわけだ。
 そうは言いつつも、カメラを持った人たちは撮影機会をうかがっているわけで、先ほどのようなアクシデントがあれば、それこそ目をギラギラ輝かせてカメラを向けてくるわけで。そう、ちょうど正面の女の子のようにギラギラと眼鏡を光らせて。
「……って、蔦子ちゃん!?」
 自慢のカメラを構えた蔦子が、鼻にティッシュをつめながらシャッターを押していた。驚きつつも見つめていると、やがて近づいてきた。
「こんなところにどうしたの、蔦子ちゃん。ゲーム好きだったの?」
「ごきげんよう、景さま。いえ、ちょっとカメラマンとして芸術魂に火がつきまして」
「鼻にティッシュつめて、目を血走らせてコンパニオン見ながら言っても、まったく説得力ないわよ」
 こうして話している間も、あっちの短パンむっちりコンパニオンをパチリ、そっちのコスプレメイドコンパニオンをパシャっ、と落ち着きない。明らかにエロスなのだが、なまじ可愛らしい女の子だということで、撮られるコンパニオンのお姉さんも油断している。
 写真に夢中になっているあまり、しゃがみこんでミニスカートの奥からパンツが見えていることにも気が付いていない。せっかくなので可愛らしいパンツを心行くまで堪能する。
「景さま、とても似合っていて素敵ですけれど、他の人にも見られてしまうのがちょっと、残念です」
 レンズをこちらに向けながら、そんなことを言ってくる。
 そこで気がついた。
 よくよく周囲を見てみると、なぜかこの一角はやけにギャラリーに女の子が多い。というか、ほぼすべてが女の子だ。カメラ小僧も、みんなカメラ小娘だ。
「どうしたのかしら、今日は女の子ばっかりね」
「まあ、スケベな男ばかり押し寄せるより、全然いいけれど」
 近くのコンパニオンのお姉さんも、ひそひそとそんなことを話している。
「さすが、景さん。で、今日はどの娘をお持ち帰りするのかしら?」
 鳥居さんも寄ってきて、囁くように言う。
「そうねー、私的にはあっちのブースのショートカットのコンパニオンが……って、だから違うっつの!」
「あははー、そんなこと言っても説得力ないわよ」
 鳥居さんの声を振り切るように、頬を軽く叩いて自分を叱咤する。今日は仕事で来たのだ。望まないものとはいえ、引き受けたからには最後まできちんとヤりきるのが、スジというものだ。
 景は気を切り替えて、仕事の方に専念することにした。

 

 ブースを訪れる女の子たちに説明して、時には写真の撮影に応じて、その際に思わずお尻を撫でてしまったり、乳を揉んでしまったり、ほっぺにチュウをしてしまったりと、いくつかのアクシデントもあったが、とりあえずイベントは無事に進行している。
 異変が訪れたのは、お昼を過ぎてしばらくしてから。
「うっ……!」
 しばらくは、どうにかやり過ごそうとした。しかし、どうにもおさまりそうになかった。
 こんなおへそ丸出しの恰好で働いてきてお腹が冷えたのか、急に調子が悪くなってきたのだ。我慢していれば落ち着くかとも思ったが、そういう感じではなさそうで、額に冷や汗が浮かびそうになってくる。
 仲間に、ちょっと外すと断りをいれてそそくさとブースを離れる。
 お手洗いはどこかと探すが、人が多くてよくわからないし、お腹が痛くて思うように歩くこともできない。
 背に腹は代えられないと、恥ずかしいのを我慢して、ちょうど前を歩いていたコンパニオンらしきお姉さんを呼び止めた。
「あ、あの、すみません」
 腕をつかむと、その女性が振り向く。
 当たり前だが、コンパニオンをしているだけあって綺麗な女性だった。ブルーを基調とした、まるで水着みたいに胸を強調した衣装で、やっぱりおへそは丸出しのショートパンツ。長い髪の毛を後ろで束ねた、切れ長の瞳をした大人っぽい女性だった。
「え、な、何かしら?」
「あ、あの、一緒にお手洗いに……行きませんか?」
 下腹部の痛みに体をもじもじとさせ、お腹を手でおさえて少し前かがみの格好になりながら、見上げるようにして懇願する。
「え、えっと、あの、でも」
 女性も困惑しているようだった。当たり前だろう、いきなり、見知らぬ人間からそんなことを言われたら。
「と、突然そんなことを言われても、私も仕事があるし」
「お、お願いします。私、もう我慢ができなくて……」
 恥ずかしさに、顔が赤くなるのがわかる。だけどそれ以上に、お腹がやばい。
「――わ、わかったわ。そ、そこまで言うのなら……」
 頬を朱に染め、横を向く女性。
 察してくれたのだろう、気を遣わせてしまったか。
「す、すみません、すぐに、済みますから」
「えっ。せ、せっかくだから、そんな焦らなくても。少しくらいなら遅れても、私も大丈夫だと思うから」
 よく分からないことをいいながら、景を先導していく女性。蒔絵さんという名前の彼女は、推定スリーサイズ87・60・88のナイスバディ。年齢は22、3というところだろうか。
「……あれ、なんか、会場を出ちゃってますけれど」
「ああ、会場のトイレはダメよ、人が多くてとても」
「なるほど」
 確かに、言われるとおりだろう。特に女子用のお手洗いは混雑する。これで、長蛇の列ができていたりしたら、失神してしまうかもしれない。しかし、どこまでいくのか。あまり遠い場所でも困る。
「あなたさえよければ、他の場所でもいいけれど」
「ええっ!? ほ、他の場所なんてダメですっ! お願いですからお手洗いに」
 慌てて首を振る。
 というか、他の場所って、どこだ。まさか草むらとか、そんなわけでもあるまいし。
「そ、そう、なかなかマニアックなのね……確かに、燃えるかもしれないけれど」
 何やらつぶやくが、またも腹痛の波が襲ってきて景はそれどころではない。体が小刻みに痙攣するように震える。
「ま、まだですか?」
「大丈夫、もう、ついたわ」
 そこは人気のない、はずれにあるお手洗いだった。順番待ちもなさそうだし、景はようやく安堵感を得た。
「"清掃中"の看板を出しておけば、他に人が来る心配もないわ。さ」
 なんと心配りのできる人だろう。景はありがたく手洗いの中に足を踏み入れた。震える足で、個室の扉を開く。
 するとなぜか、蒔絵が追いかけるようにして中に入ってきた。
「え、あの、蒔絵さん?」
 振り返ろうとしたら、不意に後ろから抱き締められた。
「はあっ……素敵なカラダ……」
「え、ええっ!?」
「あんな官能的に誘われたら、断われないじゃない」
「いいいいっ、ちが、違うからっ。そんなんじゃ……ひぃぃっ」
 景の言葉など耳に入っていないのか、積極的に胸やお尻をまさぐってくる蒔絵。開いた部分から手を差し入れ、胸を直接に揉む。快感が、送られてくる。
「やっ、あ……ううぅぅ!」
 しかし同時に、激痛が下腹部から襲ってきて身をよじらせる。それを、景が感じていると受け取ったのか、蒔絵はさらに積極性を増す。耳たぶを噛み、舌を這わせながらミニスカートの中に手をすべり込ませてくる。
「だ、ダメダメ! ちょ、お願いやめて、でで、出ちゃう!」
 力を入れて我慢するが、蒔絵が送ってくる快感に、油断すると力が緩みそうになる。
「――え、あ、ひょっとして」
 お腹をおさえ、がくがく震える景の姿を見て、ようやく蒔絵も景に襲いかかっている事態を察したようだった。
 しかし。
「まさか、そっち系のプレイだったなんて……だ、大丈夫、景さんだったらあたし、何でもイケそうだから」
「うぎえええええええっ!!」
 蒔絵の手がお腹に触れ、押してきた。
「馬鹿馬鹿、やめやめっ、く、うーっ!」
 泣きそうになったその時。
「何やっているの、こんなところで!」
 トイレの中に、大きな声が響いた。
「え、清掃中にしておいたのに何で……って、古都ちん!」
「まっきー! あなた、何しているのよ!」
 現れたのは、景と同じブースでコンパニオンをしていた古都だった。どうやら二人は知り合いのようだが、そんなことはどうでもいい。とにかく助かったと、蒔絵から体を離す。
「景さんの様子が変だったから、探してみたら、まっきーと二人で会場を出て。そしたら何、こんなところで」
「いや、古都ちん、これは」
「言い訳は無用よ。景さんには、私の方が先に誘われているんだからっ!」
「――へ?」
 いきなりの宣言に、景の方が目を丸くする。
 古都は赤くなった頬を手で挟むようにしながら、潤んだ瞳を向けてくる。
「午前中のあの抱擁、景さん、私のお尻を撫でて誘ってきたじゃない。あれは、今日のアフターは私と……って合図だったでしょう」
「ち、ちがう……」
「甘いわ古都ちん。現実に私の方がいま、具体的にお手洗いでしましょうって、誘われたんだし。それにお手洗いでという具体的な場所の指定からして、どのようなプレイが行われるか、想像つく?」
「え……?」
 と、見る見るうちに古都の表情が変わる。
「――そう、そんなマニアックなプレイに、かわいこぶりっこの古都ちんは耐えられないでしょう? ほら、景さんなんか今にも限界がきそうなのよ。いい子ちゃんはさっさと帰った方がいいんじゃない?」
 挑発的な蒔絵の言葉に、身体を震わせる古都。泣きそうな顔をして、そのまま逃げるかと思いきや。
「わ、私だって、景さんだったら……大丈夫だもん!」
「なにがじゃーーーーっ!?」
 何かの決意を固めたかのように、古都は景たちがいる個室に入ってきて、そのまま景に抱きつく。衝撃に、景の意識が白みかける。
 前からは古都が、後ろからは蒔絵が攻めてきて、景の我慢の堤防が突破されそうになる。しかし最後の力を景は、振り絞る。
 古都に唇を重ね、瞬間的に力を奪う。体を回転させるようにして蒔絵の背後にまわり、耳の中に舌を差し込む。
「んあぁっ」
 弛緩した蒔絵の体を押すと、古都に抱きつく格好となった。古都の膝が折れ、便座に座るようにして腰が落ち、その上にまた蒔絵が座る。景は蒔絵の後ろから胸に手を差し入れ、さらにもう片方の手で古都の胸に触れる。
「や、あ、古都ちぃん……」
「ふわ、あ、まっきー、ん……」
 蒔絵と古都の目がとろんとして、二人はむさぼりあうようにしてお互いの唇を重ね、唾液を吸い合う。こぼれた涎が口から滴り落ちる。
 景は二人の衣裳のトップスをまくりあげ、たわわな果実を外に出し、蒔絵の後ろから圧迫して胸を押し付け合わせる。
「あ、あ、まっき、ん、あ」
「んん、気持いい、よ、あぁ、古都ちんン」
「私も、やぁん、こんなの、だ、ダメなのにぃ」
 すぐに二人は夢中になってお互いを刺激し合う。柔らかな胸が揺れて、秒ごとに形をかえる。
「お幸せにっ!」
 もう大丈夫だと判断した景は、身を翻し個室を出て、トイレを後にする。

 

「ううぅ、ひどいめにあった……」
 あのあと、なんとか別のトイレに駆け込んで事なきを得て、今はスッキリ爽快な気分になっている。
「ちょっと景さん、どこ行っていたのよ。大変なんだからこっち」
「ごめんなさい、ちょっと」
 と、戻りかけたところで、弾丸ロケットの勢いで誰かが突っ込んできた。
「おっ、ねえさまーーーーーーーんっ!!」
「うわぁっ! って、あ、アルバイトちゃん? って、あはは、くすぐったい」
 抱きついて胸に顔を埋めてすりすりしてきたのは、前に喫茶店でアルバイトしていた女の子。頭にカチューシャをつけてどこかメイドさんっぽいけれど、やっぱりへそ出し、胸元強調、ミニスカふりふり、愛らしいことこの上ない。
「やっぱりおねえさまでした。会えて嬉しいです。その衣装も素敵ですっ」
「あ、ありがと。あなたも可愛いわよ……でも、お腹冷えない? 大丈夫?」
「えへへ、おねえさま、あたためてくれますぅ?」
 甘えるように上目づかいで、お腹をすりよせてくる。景のお腹と触れ合い、くすぐったくなる。
「もう、甘えん坊さんね……って」
 じゃれ合っていると、周囲からの視線を強く感じた。そうだった、まだ仕事中なのだったと横を見れば。
 会場に来ている女の子たちが、目を輝かせ、息も荒く、涎をたらさんばかりに景たちのことを見つめている。
 一般の観客だけではない、他のブースのコンパニオンギャルも中に混じっている。
「激写、激写!」
 両の鼻の穴にティッシュを詰めた、変態カメラ小娘の姿も見える。
「あんな下品なカメラに、お姉様の素敵な姿を写させるわけにはいきません……うわっ」
「ちょっとあなた、景さまになれなれしすぎるんじゃない?」
 カメラから景の体を隠すようにしていた女の子だったが、蔦子に肩をつかまれ引きはがされそうになり、慌てて景のスカートを掴み。
「きゃああっ!?」
 お約束のように景のスカートをずり下ろす。しかも、下着も巻き込まれるようにしてずれて、お尻半分のところまで落ちてしまった。
「おおおおおおおおねえさまのぱぱぱぱぱんつっ!」
 真っ赤な顔をして、興奮のあまりかそのまま昏倒するアルバイトの女の子。新たな出血によりティッシュも落ち、流血の海に沈む蔦子。
 周囲の人垣からも黄色い歓声、悲鳴があがる。
「ちょ、や、離してアルバイトちゃん」
 しかし、がっしりとスカートを掴んでいて離してくれない。
「もう、仕方ないわねぇ」
 鳥居さんが歩いてくる。助けてくれるのかと思いきや。倒れている蔦子の手にあるカメラを拾い上げ、レンズを向けて。
「ハンターチャンス、きました!」
「うぎゃああああああっ! やめて、撮らないでよ、ちょっと」
「と、鳥居さん、その写真、買った!」
「あたしもっ!」
 同じブースで働いていた宮城圭子さん(24)、推定スリーサイズは80・57・83のスレンダーボディ。長い髪にウェイブをかけている。花園亜衣さん(20)、推定スリーサイズは85・58・87の素敵なカラダ。茶髪にボブがよく似合うキュートな女性。その二人が間をおかずに挙手した。二人に続くように、次々と手が挙がる。
「ああ、加東さんの割れ目……」
「指でなぞるなぁっ!!」
 いつの間にか戻ってきていたのか、蒔絵がうっとりとした目をしながら手をお尻に伸ばしてきた。
「加東さん、きょ、今日の夜のことは、三人でとか、どうかしら?」
「どうかしら、じゃねえええええっ!」
 子犬のような瞳で見つめてくる古都は、蒔絵と腕を組んでいる。
「わ、わたしもいきます、お姉様っ! か……かわいがってくださいね」
「じゃ、じゃあ私はカメラマンとして」
 と、連続してゾンビのように蘇ってきたアルバイトちゃんと蔦子。
「じゃあ私は脚本兼監督として」
「わ、私達も、出演してもよいけれど」
 さらに江利子、圭子と亜衣も続く。
「ってゆうか、いったい何を考えているのっ!?」
「さあ、ナニかしら」
「なんでしょう?」
「なんで、こんなことになるのよーっ!!」
 やっぱり、頭を抱えることになってしまう。
「お姉様、大丈夫です。私はお姉様について離れませんカラっ」
「アルバイトちゃん……ってかむしろ離して、あなたが掴んでいるからスカートが上げられないんだからっ」
「あ……お姉様の太腿柔らかい……キュウゥ」
 景の太腿に頬ずりした後、興奮のあまりか幸せそうな顔をしてまたも気を失う女の子。

 天国なんだか地獄なんだかよく分からない景の受難は、続く。

 

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