書評と主にマリア様がみてるの二次創作(旧:よしのXブレード)

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【マリみてSS(景×聖)】二人のカケヒキ <後編>

更新日:

~ 二人のカケヒキ ~
<後編>

 

 景は落ち着かない日々を過ごしていた。週末は逃げるように外出して、聖と顔を合わせないようにしていた。
 しかし週が明けてしまえば、いやでも大学で顔を合わせることになる。一体、どのような顔をして聖と話をすればよいのだろう。

 そもそも、自分は何をこんなにうろたえているのだろうかと考える。
 いや分かっている、聖のことだ。聖のことが思い浮かんで心の中から消えてくれない。他のことを考えようとしても、すぐに聖の人をくったような笑顔が浮かび上がってきてしまうのだ。
 これじゃまるで、恋煩いではないか。
 はたとその考えが思いついて、慄然とする。
 まさか自分は、聖に対して恋心を抱いてしまったとでもいうのか。相手は同じ女性だというのに。
 しかし思い出される、聖の風呂上りで上気した肌、柔らかそうな胸の膨らみ、すらりと伸びた足、少し湿り気を帯びたピンク色の唇、それらの全てが景の心を震わせ、鼓動を激しくさせるのだ。

「おはよー」
 耳に届いたその声を聞いて、自然と胸が弾んだ。
 だが、極力精神を落ち着かせて、いつもどおりの表情を作って振り返った。
「おはよう、佐藤さ……」
 手を上げかけて、体が硬直する。
 目に入ってきたのは、間違うことなく聖の姿だったけれど、彼女が挨拶をして微笑みを投げかけているのは景ではなく、他の学科の女の子だった。
 小柄で笑顔の可愛らしい女の子は、彫刻のように整った顔立ちの聖に話しかけられて、戸惑い、恥らっていた。
「いつも可愛いね、もう、食べちゃいたいくらい」
 脳みそが腐っているかのような台詞を吐き出す聖。聞いていて、胸がむかむかしてくる。相手の女の子も、そんな言葉を真に受けて赤くなること無いのにと、苛々してくる。
「うーん、髪の毛もさらさらでいい香り」
 少し茶色い髪の毛に顔を寄せてうっとりとする。
 ぎりりと、拳を握る手に力が入る。
「やらかいねー。高校のときの後輩に抱き心地が似ているー」
 とうとう、背後から抱きついた。女の子は、わたわたとしながらも満更ではないような表情をしているように見えて。
 脳内で、何かがスパークした。
 しばらくして、ようやく相手の女の子を解放した聖が、少し離れた場所に立っている景の姿に気が付いて弾むような足取りで近づいてきた。
「あれ、カトーさんいつのまに来ていたの?そういや昨日どこか出かけていたの?何回か電話したんだけどさー」
「―――ちょっと、父のところに」
 嘘だった。
 本当は、街をぶらぶらしていただけ。
「ふーん。ね、今日さ、カトーさんとこに泊まってってもいい?」
 何の脈絡も無く、聞いてくる。
 いつもだったら、ため息でもつきながら「駄目っていっても、来るんでしょう?」とか言って結局、受け入れてしまうのだけれど。
「ごめんなさい。悪いけれどしばらく、私の家には来ないでくれる?」
「……へ?」
 全く予想もしていなかったのだろう、聖はぽかんと口を開け、呆然とした顔をして景の横顔を見つめていた。
「ど、どうしてカトーさん。私、悪いことした?それなら改めるから」
「そういうわけじゃないのよ」
「じゃ、じゃあなんでいきなり?」
 聖は詰め寄ろうとするが、景は距離を取る。声を荒げずに接しているが、このままでいるとそれもいつまでもつか分からなかった。
「とにかく、そういうことだから」
 有無を言わさず、景は立ち去った。
 聖はただ、わけもわからず立ち尽くすのであった。

 

 この後も、ことあるごとに景は聖に対して距離を置くような対応を取った。
 講義のときはわざと他の学友たちの近くに席を取り、聖があまり近くに来られないよう、話しかけて来られないようにする。食事のときも同様に他の学友たちと学食に赴く。聖に話しかけられても、すぐに話を切り上げるようにして、逃げるように場所を変える。
 どうしたら良いのか、景とて分からなかったのだ。時間が空けば、考えるのは聖のことばかり。近くに寄られたら何をするか、何を言うか分からないので遠ざけるようなことをしていた。
 しかし気分を変えようと街に出て、帰宅して気づいたら手にしていた本は、

『同性愛者のための本』

『女性同士のSEXマニュアル』

「なんじゃこりゃー?!私は、何がしたいの?!」
 と、一人で叫び暴れる始末。
 聖と距離をあけたのはいいけれど、触れ合う時間、機会が減少していることに、自分自身が段々と辛くなっているのに気が付く。
 やっぱり自分は、聖のことが好きなのだろうかと自問する。
「…………」
 考える。
 さらに一晩考えた。
 で、出た結論は、認めたくはないけれど、きっとそうなのだろうということ。聖と一緒にいるうちに、いつの間にか独特の魅力に取り付かれ、惹かれていた。それは、立派に恋愛感情と呼べるもの。この前、他の女の子と仲良くしている聖を見て胸に湧き起こってきた感情は、嫉妬だったのだ。でも、絶対に自分の方から先に、聖に対して言いたくはない。恋愛は、先に「好き」と言った方が負けなのだから。これから先、ずっと弱みを見せていくことになるのだから。
 結論を出してからさらに一週間、景は聖に対して素っ気無い態度を貫き通した。しかし、徐々にそれも景自身が辛くなってくる。だけど親しくすれば、自分がどのような行動に出てしまうか自分でも分からなかったから。

 そうして日曜日。
 景が悶々としているところに、彼女はやってきた。

 控えめなノックの音とともに、扉越しに声が聞こえてきた。
『カトーさん、いる?』
 立ち上がる。狼狽するが、幸いなことに扉一枚隔てているために表情を見られることはない。動揺しながらもドアに近寄り、声の調子を抑えて口を開く。
「さ、佐藤さん?な、なんでここに……」
『お願いだから、中に入れて……いや、ここでもいいから、話を聞いて』
「しばらく来ないでって、言ったでしょう」
 扉越しの会話。
 聖の声が、いつになく真剣なものに感じられる。
『しばらく前から、なんで、私を避けているの?』
「避けているわけじゃないわよ。話だってしているじゃない」
『嘘、避けているよ。話だって、カトーさんほとんどまとも聞いてくれないじゃない』
「そんなこと……」
 ドアに背中をもたれかけて、俯く。
 言われなくても、分かっている。
『お願い、せめて理由を聞かせてよ。いきなり嫌われたなんて、納得いかないよ』
「嫌ってなんか……いないわよ」
『だったら、なんで?』
 景には答えられない。
 一言、自分から折れてしまえば楽になれるのに、生まれついての性格はそうも変えられなく、ただ口をとざす。
『答えてくれないんだ……でも、これだけは聞いて欲しい』
 思わず、唾を飲み込む。
 聖は一体、何を言おうとしているのだろうか。扉の向こうで、一つ、深呼吸をするような気配が感じられた。

『私……景さんのことが好きなの』

 耳に伝わってきたその言葉に、景は思わず顔を上げた。
『ここのところ、ずっと景さんと一緒にいられなくなって、本当の自分の気持ちにようやく気づいたというか……友達としてじゃなく、一人の人として景さんのことが好き』
 いつもふざけた口調で、飄々としている聖の同じ口から出たとは思えないような言葉の重みだった。
 冗談でも、悪ふざけでもなく、真剣な告白であることが景にも分かった。たとえ扉一枚を隔てていても、確かに伝わってくるものはあるのだ。
『…………』
「…………」
 言葉が途切れる。
 でも、気配は消えない。
 景は、逸る鼓動を抑えながら、ゆっくりと扉を開けた。
「あ……」
 聖が顔を上げる。どこか表情は硬く、らしくなく上目遣いで景の機嫌をうかがうかのように見つめてくる。
 仏頂面で聖の顔を見据えながら、ちょっと視線をずらして景は口を開く。
「―――で?」
「―――え?」
 無言で、顎をしゃくるようにして先を促す景に対し、聖は戸惑ったような表情で、おろおろとする。
「え?じゃないわよ。私のことが好きだって告白して、それでおしまい?もう、続きはないのかしら?」
 腕を組み、わざと視線を厳しくして聖を睨むようにして見つめる。
 聖は慌てふためきながらも、ぴんと姿勢をただし。
「あ、あの」
 緊張した表情で。
「景さんのことが好きです。よかったら、付き合ってくれませんか?」
 と、深々とお辞儀をした。
 三十秒ほどして頭を上げると、景は変わらぬ表情と体勢でいたが。
 やがて、大きく息を吐き出した。
「……あなたみたいな人、私がいてあげないと、どうしようもないものね」
「え、じゃ、じゃあ」
「……仕方ないわね、とりあえず、OKしてあげるわ」
 と、景は顔をそらし、手で口元を隠すようにして答えた。頬がほんのりと、赤く染まっている。
 聖はといえば、みるみるうちに表情が明るくなり、まるで子供のように無邪気な喜びようを示す。
「や、やったー!」
「でも」
 景は目を細めたまま、聖を見つめる。
 聖の動きがぴたりと止まる。
「で、でも?」
「あー、そのー、だから……」
 横を向き、髪の毛をかきあげながら一つ咳払いをして。
「付き合うからには、他の女の子に手を出したりしたら承知しないわよ」
「―――へ?」
「だから、他の女の子を口説いたり、胸触ったり、抱きついたりしたら承知しないって言っているのよ」
 言いながら、顔が熱くなってくるのが分かった。
 そんな景を見て、聖はにんまりと笑う。
「あー、何、カトーさんって意外と独占欲、強い?嫉妬深い?」
「ちっ……がうわよ!そんなんじゃないわ」
「じゃあ、なんなの?ねえ、教えてよ」
「う、うるさいわね。何よ、ほんのさっきまで捨てられた子猫のような顔して、情けない声で私にすがり付いて来ていたくせに」
「そ、そんなことないでしょ」
「あるわよ。『カトーさんがいないと、私、生きていけない』とか言って」
「いや言ってないからそんなこと!大体、カトーさんだってさっきは」
「ちょっと、どさくさに紛れて胸さわらないでよ!」
「あー、この感触、やっぱりカトーさんのが一番だぁ」
「って、誰と比べているのかしら?やっぱり、他の女の子に対しても無節操にヤっているのね」
「ちちちちがう違う、いや、違わなくも無いけど、無節操ってほどしているわけじゃ」
「これからは、私のしか触っちゃダメだからね」
「そそ、そんな……って、カトーさんのは、いいの?」
「よ……くはないけど、だ、だって仕方ないじゃない。他の子の触られるよりはマシよ」
「……本当は、触られたいとか?」
「んなわけないでしょ」
「そ、そう。でも分かった。これからは、カトーさん以外の子は触らない」
「……本当に?」
「誓います」
「…………」
「……と、いうことで早速」
「きゃあっ、ちょ、ちょっと佐藤さん?!」
「うーん、景さんの柔らかな感触、久しぶり~」
「離れなさいってばこのアンポンタン!あ、ば、ばかっ……その気色悪い指の動きを止めなさい」
 言いながらも景は。
 内心を悟られないようにするのに、精一杯で。

 

 結局のところ、どっちが勝ったのか、どっちが負けたのかも分からなくて。

「景さん~」

 

 ―――まあ、どっちでもいいか。

 

 甘えてくる聖の声を聞きながら風に思い、肩の力を抜く。
 そんな風に考えてしまうのも、きっと聖の魅力なのだろうなと思いながら。

 

おしまい

 

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