【作品情報】
作品名:神薙虚無最後の事件
著者:紺野 天龍
ページ数:384
ジャンル:ミステリー
出版社:講談社
おススメ度 : ★★★★★★★☆☆☆
本格ロジック度 : ★★★★★★★★☆☆
こういう人におススメ! : なかなか優れた多重推理ものが読みたい
大学二年生の白兎(はくと)は、アパートの隣に住む一つ年下の後輩・志希(しき)に淡い恋心を抱いていた。
二人が自宅に向かう路上、体調を崩し倒れこむ女性、唯(ゆい)と出会う。
彼女が手にしていたのは、唯の父、御剣大(みつるぎ・まさる)が著した20年前のベストセラー『神薙虚無(かんなぎうろむ)最後の事件』だった。
「神薙虚無」シリーズは、実在した名探偵・神薙の活躍を記したミステリで、シリーズ最終巻では解かれるべき謎を残したまま完結となり、ミステリ好事家の間では伝説となっているという。
白兎と志希は、唯の依頼で大学の「名探偵倶楽部」に所属する金剛寺らとともに、作品に秘められた謎を解こうとするのだがーー。
過去と現在、物語の中と外、謎が繋がり、パンドラの箱が開くとき、目にするのは希望か絶望か!?
初読みの作家さん。
キャラクターとか物語展開とかがラノベっぽいなと思ったら、もともとはラノベ作家さん、なのですかね。
作中作である「神薙虚無最後の事件」。
未解決のまま終わった過去のこの事件を、複数人で推理合戦を行い何が真実だったのかを考える。
作中でも言われているが、「毒入りチョコレ―ト事件」、あるいは「黒後家蜘蛛の会」的な作品。
実際に推理するのは大学生たちで、皆こんな推理できるのか!
という突っ込みはおいておいて。
作中作を読んでヒントを得て、それらの情報からありえそうな推理を披露していくのだが、各推理はそれぞれなかなかのもの。
事件から何年も経過しており、あくまで情報は本の中からしか得られないので、隙間は自分たちで埋めていく。
そんな中で全ての整合性をとり、謎を解決していくというのもなかなか大変。
探偵役たちが推理を披露しあうが、そもそも謎解きを依頼してきた依頼人にとって一番良いと思える物語の結末は何なのか。
ただ真実を伝えれば良いというものではない。
そんなことも一つのテーマとして描いている。
前の推理を覆すような新たな論理。
信じられないけれど、絶対にないとはいえないロジック。
証拠がないからこそ、こういうこともあるのではないか? そう仮定し、想像する推理。
皆、想像力が豊かでないと出来ないです。
そのような中で最後に出てくる推理と展開は、フェアとアンフェアの間をうまくついてきているともいえる。
推理のネタ自体はどれも目新しいという感じではないが、見せ方、組み合わせ方がうまく成功している。
ラノベっぽいキャラクターややり取りも、本作ならあっていると思える。
記録係でもある主人公と、コンビを組んでいるような感じの女の子のコンビも、まずまず。
本作が好評なら続編も出そうな設定です。
キャラクターの設定やノリがラノベ的なので、そういうのが苦手だと少し入りづらいかも?