【作品情報】
作品名:真夜中のたずねびと
著者:恒川光太郎
ページ数:269
ジャンル:エンタメ
出版社:新潮社
おススメ度 : ★★★★★★☆☆☆☆
不思議な世界度 : ★★★★★☆☆☆☆☆
こういう人におススメ! : いつもと違った恒川ワールドを読んでみたい
次々と語られる、闇に遭遇した者たちの怪異譚。
ゲストハウスでほんの一時関わっただけの男から送られてくる、罪の告白。
その内容は驚くべきもので…。(「さまよえる絵描きが、森へ」)。
弟が殺人事件を起こし、一家は離散。
隠れ住む姉をつけ狙う悪意は、一体、誰のものなのか。(「やがて夕暮れが夜に」)。
等、全五篇の短編集。
恒川さんといえばダークファンタジーのイメージが強いが、本作はちょっと違う。
ファンタジー要素が皆無というわけではないが、現代を舞台に、不思議な犯罪に絡んだお話。
5つの短編はそれぞれ別の話ではあるが、ちょっとずつ絡んで繋がっている。
そして登場する人物は誰もが皆、色々なことに巻き込まれたりしている。
震災孤児の少女。
裏社会で生きる両親のもとで育児放棄され逃げ出した少年。
殺人事件の加害者の家族。
事故を起こしてしまった男。
とんでもない事件を起こした女と知り合ってしまったレンタル民家の経営者。
どこかでちょっと歯車がずれてしまったというか。
人は本当にささいなことで人生が狂っていく。
そんな現実と狂気の間の世界を描いたような作品。
淡々としていながら、その裏にあるものを考えると、なんともいえない気持ちになる。
作者の他の作品と異なり、読み手に近い世界だから想像もしやすくなる。
もしかしたら現実にこういう人がいるのかもしれない。
そうんな想像をさせるような本。
恒川さんが描く独自の不思議な世界を期待していると、これは違う。
読んだ後になんともいえない余韻を残すのが恒川さんの作品なのだが、これは読んだらそれで終わり、みたいな感じ。
私もやっぱり恒川さんはダークファンタジーがいいな!