【作品情報】
作品名:兇人邸の殺人
著者:今村昌弘
ページ数:368
ジャンル:ミステリー
出版社:東京創元社
おススメ度 : ★★★★★★★★☆☆
トンデモ設定度 : ★★★★★★★☆☆☆
こういう人におススメ! : 特殊設定ミステリー&パニックホラー系も好き
神紅大学ミステリ愛好会の葉村譲と剣崎比留子が突然の依頼で連れて行かれた先は、“生ける廃墟"として人気を博す地方テーマパーク。
園内にそびえる異様な建物「兇人邸」に、比留子たちが追う班目機関の研究成果が隠されているという。
深夜、依頼主たちとともに兇人邸に潜入した二人を、“異形の存在"による無慈悲な殺戮が待ち受けていた。
シリーズ第三弾!
ということでシリーズの3作目です。
今回は、廃墟のテーマパークを舞台に繰り広げられますが、うん、このシリーズはこういうのを待っていた感じ!
1作目の『屍人荘の殺人』が、ぶっとんだ作品設定で楽しませてくました。
そして前作、『魔眼の匣の殺人』だったのですが、こちらはどちらかというとこじんまりとした印象。
まあ、班目機関について少し詳しく触れ始めたところで、そういう撒き餌的な部分もあったのかもしれませんが。
そこから今回の『兇人邸の殺人』では、またまたなかなかの設定で読ませてくれます。
特殊なクローズドサークル。
奇怪な邸で発生する事件。
単なる殺人事件ではない、班目機関が関与しているわけですからね。。。
何が良いって、物語中盤まではミステリーよりかはパニックホラーの展開なところです。
そこが『屍人荘の殺人』と似ているところ。
邸の中で発生する事態に、登場人物たちは翻弄され、次々と犠牲者が出ていく。
この辺はパニックホラーとして勢いのある展開で楽しませてくれる。
誰が生き残るのか?
誰が次の犠牲者になるのか?
殺人犯ではない、班目機関の作り出した人智を超えたものによる惨劇がスピーディに繰り広げられます。
ただもちろん、パニックホラーでは終わらせない。
怪物による犠牲だけでなく、人による殺人も同時に発生しており、このような状況でなぜ、だれが!?
そしてどのように?
怪物の魔の手からも逃れつつ、殺人を犯さなければならないとか。
葉村も、怪物の手から逃れつつ推理したり、比留子を助けようとしたり。
そういうのがうまく組み合わされた謎が展開されている。
また今回、比留子がちょっと特殊な状況になることで、推理の仕方もちょっと異なるというか、推理に対するスタンスがまたちょっと面白いというか。
比留子はなぜ、推理をするのか。
また、推理をする必要がないと考えるのか。
単なる探偵役ではない比留子の存在がまた面白い。
そしてラスト。
うーん、さっさと班目機関の謎を教えて下さい。
邸の構造が複雑で理解するのが大変!
こんな構造の邸なんてないだろう、というのは本格ミステリーで言ってはいけないことかもしれないけれど。
ただ、邸の構造あってこその展開でありミステリーでもあるので、見取り図を何度も見ながら物語を読み進めるしかない。
パズルみたい、といわれるとそうかもしれない。