書評と主にマリア様がみてるの二次創作(旧:よしのXブレード)

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【マリみてSS(乃梨子×菜々)】つるりん

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~ つるりん ~

 

 

「――それで、貴女は一体何者で何が目的なの?」
「有馬奈々、中等部の三年生です。目的は……乃梨子さまと愛を紡ぎ合うこと?」
「…………」
 目の前でシェイクをちゅうちゅう吸っている少女の回答に、乃梨子は思わず頭を抱えたくなってくる。
 道場での一件があった後、そのまま菜々を帰すわけもいかず、こうして寄り道をして問いただしているわけだが、菜々は校則違反の寄り道や高等部の先輩からの詰問に表情を変えるわけでもなく、平然としたままである。
「あなた、菜々……菜々でいいわよね。菜々はなんで、あんな場所にいたの」
 一つ一つ確認していくしかない、乃梨子は自分を落ち着けるためカフェラテを一口啜る。
「乃梨子さまにお会いしたくて――」
「本当のことを言いなさい」
 いつまでも年下に舐められたままではいられない、乃梨子は少し口調を強くした。
「本当のところは、黄薔薇様をお探ししていたのです」
「黄薔薇様……令様を?」
 令であるならば剣道場の周囲を探していたのも理解できるが、では何故、令を探していたのだろうか。
「支倉令さまと一度、お手合わせをしてみたいなぁと、まあそう思いまして。でも私、実際に支倉令様の剣道をこの目で見たこと無かったので、まずは偵察にと思ったのですが、これがなかなか支倉令様が部活動にいるタイミングにあわず」
 山百合会の活動もあるし、令も今年は三年生だから部活への参加が少し減っているのかもしれない。
「ということは菜々、あなたも剣道をやっているの?」
「まあ、そういうことになります」
「……だったら、素直にそう言えばいいじゃない。他校ならともかく、同じリリアンの中等部なんだし」
「でも、実績も何もない私がいきなり申し込んだところで、受けてもらえるとは思えません」
「そりゃまあ、そうか……」
 菜々の個人的な願いをきくだけなら簡単かもしれないが、一人を相手にしたならば他の希望者の相手もしなければ公平ではない。令は単なる剣道部の一部員ではない、生徒の憧れである黄薔薇様であり、ミスターリリアンとも呼ばれ女子からは大きな人気を誇っているのだ。
 個人的な知り合いであればお願いできるかもしれないが、全く見知らぬ相手となれば簡単にはいかないだろう。とはいえ、だからといって高等部の敷地に忍び込み、道場の周囲をうろうろするのもどうかとは思う。剣道部の野島部長の口ぶりだと、既に何度か同じことをしているようで、度胸と行動力はたいしたものだが。

「だからって、それに巻き込まれた私はなんなのよ、まったく……」
「えー、いいじゃないですか。お蔭で、こんな可愛い彼女ができたんですから」
 にぱーっと笑って見せる菜々だったが、乃梨子の心はどんよりと沈む。
「女同士なのよ、ふざけてないで。あの場は逃れられたんだから、もういいでしょう」
「駄目ですよ、だって乃梨子さまは白薔薇の妹じゃないですか。ということは、黄薔薇様と接する機会も多いですよね」
「何よ……令さまとの試合の仲立ちをしろっていうの? 無理よ、そんなの」
 生徒会長として山百合会の活動、剣道部副部長、さらに受験生と三つのものを背負っている令に、さらにわけのわからない子のために剣道手ほどきの時間を取ってくれとは、一年生の乃梨子の口からは言い出せない。令は優しいからお願いすれば頷いてくれるかもしれないが、だからこそ躊躇われた。
「……それに、姑もうるさそうだし」
「なんですか?」
「あー、なんでもない、ない」
 令にべったり、というか実のところは令の方がべったりなのだが、なんだかんだと令のことになると感情的になるお下げの先輩の姿を思い浮かべてしまったのだ。
「とにかく、今日限りにしてちょうだい。幸い、他の人には知られていないわけだし」
 誤解されているのは剣道部部長の野島だけであり、野島もわざわざ他人に吹聴するような性格ではないだろう。黙っておけば、乃梨子と菜々が付き合っているなんて変な噂が学園内に流れることもないはずだ。
「ええ~? でもじゃあ、せめて今くらいは付き合っていることにしてくれませんか?」
 と、菜々が席を立ってテーブルを回り込み、乃梨子の隣に腰を下ろして身を寄せてきた。
「ちょ、ちょっと、何よ」
「乃梨子さまを尊敬しているのは本当です。外部から入られたのに、一年生で白薔薇の蕾になられて、とても凄いと思います」
「そんなたいしたものじゃないけど……」
 本心ではあるが、褒められれば決して嫌な気はしないのが人というもの。
「だから、今日一日くらい、駄目ですか」
「……ま、まあ、それで終わるなら」
「やたっ! じゃあ、ちゅーしてください」
「なんでいきなりっ。極端すぎるのよっ」
「ちぇーっ。じゃあ、頭なでなででいいです」
「なんなの一体……」
「それも駄目ですか?」
 上目づかいで見つめられ、うっとなる。
「わ……わかったわよ、それくらいなら」
 菜々の攻勢、テンションに疲れてきた乃梨子は、頭を撫でるくらいで菜々の気が済むならば良いかと思い、手を伸ばしてサラサラの髪の毛にそっと触れた。
「えへへーっ、くすぐったいです」
「これでいいの?」
「もうちょっと、お願いします」
 頭の形が良いのか、撫でている乃梨子もなんとなく気持ちが良くなってくる。生意気だけれども可愛い子猫といった感じだろうか。
 そんな風に思っていたところで、ふと、何か視線のようなものを感じて目をそちらに向けてみると。

「――あ」
「――――あ、やばっ、見つかった」
 少し離れた席から、観葉植物に隠れるようにして乃梨子たちの方を見ていた人物がガタガタと慌ただしく席から離れた。
「ちょ……三奈子さまっ!?」
「ふふふっ、いい絵が撮れたわ。白薔薇の蕾に年下の恋人発覚! 頭なでなでスゥイートタイムを満喫、って感じかしら」
 新聞部のゴシップ記者……もとい、部長の三奈子だった。彼女には山百合会も何度か痛い目にあったと聞いていたが、まさか自分が目を付けられていたとは思いもしなかった。
「乃梨子さん、これ記事にしてもいいわよね?」
 そそくさと逃げながら、いけしゃあしゃあとそんなことを尋ねてくる三奈子。
「い、いいわけがっ」
「オッケーです、あ、でも周囲の背景は加工願います。寄り道がばれちゃいますから」
「了解、任せておいてっ」
 ビシッと親指を立ててみせる三奈子に、菜々も同様のポーズをとって返す。
「え、ちょ、ちょっとっ」
 そして乃梨子が戸惑っている間に三奈子は去って行ってしまった。
「な、なんてこと言うのよこの子はっ。これで明日はもう、大変なことになるじゃん!」
「えへへーっ、一躍有名人ですかね、コメント用意しておきましょうか」
「何、暢気なこと言って……って菜々、もしかして貴女、三奈子さまがいることに気が付いていたでしょう?」
「えー? でも私、中等部ですから、高等部三年の築山三奈子さまなんて存じ上げず……」
「今フルネームで言ったじゃない! ああぁ、またも謀られた……」
 がっくりと肩を落とす乃梨子に、菜々が「よしよし」と慰めるように頭を撫でてくる。
「って、なんで私が菜々に慰められなきゃならないのよ」
 頭の上の手を振り払い、横目でねめつけるが、やはりケロッとした顔のまま。
「菜々もね、いくらあの場を誤魔化したいとか、令さまとの縁を持ちたいとかあるにしても、あんまり適当なことを口にしないの」
「テキトーなことって、なんですか?」
 はて、という感じで首を傾げる菜々に、乃梨子はため息を吐き出す。
「だから、私と恋人とかそーゆーこと。女同士だし、好きでもない相手に……」
「失礼ですね、見損なわないでくださいよ」
「ん?」
「私、好きでもない人、その気もない人に対してそんなこと言わないですよ?」
「今日、初めて会ったっていうのに、調子が良いんだから」
「会った瞬間、びびってきたんです。それだけじゃ、信じてもらえませんか?」
 下から覗き上げるような目で菜々が見つめてくる。密着しているわけでもない、さりとて離れ過ぎているわけでもない、ちょっと体を動かせば触れてしまうような距離感、菜々からは柑橘系の良い匂いが感じられ、思わず少しだけドキッとする。
「信じられるわけないでしょう。ほら、そっちに戻って」
「ちぇーっ、乃梨子さまのいけずぅ」
 口を尖らせて文句を言いつつ、素直に元の席に戻る。離れてホッとしたのも束の間、正面から真っ直ぐに見つめられると、それはそれでちょっと困る。目をそらすこと無く、くりっとした黒目で人を射ぬくような視線は、とても年下のものとは思えなかった。
 誤魔化すようにカフェラテを取って一口喉に流し入れ、目をそらす。
 とりあえず今日はここまで、心配なのは明日のことで、きっと朝から号外でも出ていることだろうからどのように応じるか考えておかないといけない。

 菜々は単なる後輩、とはいえ高等部から入学した乃梨子に中等部の知り合いがいたというのは不自然だから、どのような理由をつけたらよいものか。下手な作り話で言い訳しても後でボロが出そうだから、やはり無言でやり過ごすのが最も賢明だろう。人の噂も七十五日、乃梨子が何も反応しなければすぐに皆も飽きるだろうし、菜々は中等部だから普段は高等部にいられず、となれば次第に忘れられるだろう。
 素早く思考を巡らせていると、正面から菜々が楽しそうな顔をして見ていた。
「……どうしたの、にこにこしちゃって」
「いえ。真剣に考え事をしている乃梨子さまは、素敵だなと思いまして」
「へ……変なこと言わないでよね」
「本当のことなのにー」
 どうも、この菜々という子の相手をしているとペースが崩される。今まで乃梨子の周囲にいなかったタイプだ。
「とにかく、明日からは」
「あ、そうだ乃梨子さま、メアド交換しましょう」
「もう……ほら、メール登録したら帰るわよ」
「はーいっ」
 元気良い返事に、乃梨子は肩をすくめる。本当に、わけのわからない子だ。

 お店を出ると既に夕方、陽が沈みかかっていて薄暗くなり始めている。駅前の賑やかで人の多い場所を避けたから、少し歩いて駅まで行かなければならない。
「うをう、春一番っ?」
 少し強めの風が吹いて髪の毛を揺らし、菜々は何が楽しいのかスキップを踏むようにして乃梨子の少し先を歩く。
 希望しない高校に入り、なぜか知らないけれど生徒会に入ることになって、それだけでも色々と大変な高校一年の始まりだというのに、更に変な中等部女子と知り合いになって、これから先の学園生活を考えると気が重くなる。平穏で波乱のない三年間を過ごそうと思っていたのに、スタートからこんなことになるなんて。
 菜々も、口では色々と言っていたがどこまでが本気なのか底が読めない。見た目は確かに可愛らしいけれど、可愛い後輩というにはちょっと生意気だし物怖じしなさすぎる。
「まったく、参ったなぁ……」
 頭をぽりぽりかきながら歩を進めていると、いつの間にかかなり先に進んでいた菜々が待ちきれなくなったのかUターンして戻ってきた。
「乃梨子さま、遅いですよ~」
「別に先に行っていていいんだけど」
「またそんな冷たいこと言って、私と乃梨子さまの仲じゃないですかぁ」
「どんな仲よ。言っておくけれど、この先、私と菜々は一先輩後輩以上でも以下でも――」
 そこまで言いかけたところで、先ほどよりも遥かに強い横殴りの風が吹いた。丁度ビルの隙間から強い風が吹くポイントだったのだ。
「うわっ!?」
 慌ててスカートを手で抑えてどうにか悲劇を防いだ乃梨子だったが、菜々は間に合わなかった。リリアンのスカートは膝下丈で裾が長いが、それをものともせずに風がまくり上げる。
「うわおっ?」
「っっ!?」
 驚きの声をあげる菜々。
「ああ、びっくりした。えっちな風ですね、乃梨子さま以外に人がいなくて良かったぁ」
 ふぅ、と息を吐き出してスカートの乱れを直す菜々だったが。
 乃梨子は、今しがた目に入った光景に度肝を抜かれて固まっていた。

(つ、つっ、つるつるーーーーーーーーっ!?)

 内心で絶叫する。
 その後、どうやってマンションまで帰って来たのか記憶がおぼろげだった。強烈に覚えているのは、目に、脳裏に焼き付いてしまった菜々の――
「…………つ、つるつる……」
 顔が熱くなる。
 風が吹き、髪の毛が横に流れ、豪快にスカートが捲れて露わになる菜々の下半身、その一瞬はなぜか美しく、綺麗な一枚の絵画のように感じられて、しかも菜々は。
「お、落ち着け私っ」
 額から汗が流れ落ちてくるのをハンカチで拭う。
「…………ん?」
 レモンイエローが目に入り、こんな色のハンカチを持っていただろうかと首を傾げた直後、手にしていたものがハンカチではないことに気が付いた。今日、学園の道場前で拾ったパンツだった。
 そのパンツで乃梨子は顔面を覆うようにして拭いていた。
「え……ぱんつ…………」
 そして思い浮かべる、菜々のつるつる。
「も、もしかしてこのぱんつ、菜々のつるつるを――――」
 脳裏に夕方の菜々の姿が浮かび、顔が熱くなる。
「って、なんなのよあの子、まさか自分の履いていたぱんつを、てゆうか私、思い切り顔拭いちゃったんだけど!?」
 一人、わめきつつも。
 パンツとも相まって、余計に菜々の"つるつる"が脳裏に刻みつけられてしまった乃梨子なのであった。

 

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