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エンタメ 書評

【ブックレビュー】北海タイムス物語(著:増田俊也)

更新日:

【作品情報】
 作品名:北海タイムス物語
 著者:増田俊也
 ページ数:429
 ジャンル:エンタメ
 出版社:新潮社

 おススメ度 : ★★★★★★★☆☆☆
 青春お仕事小説度 : ★★★★★★★☆☆☆
 こういう人におススメ! : 仕事に対する熱い男達を見たい

 

■作品について

時は平成2年、北海道の名門紙・北海タイムスに入社した野々村巡洋。
全国紙に全て落ち、全国紙に転職するまでの腰かけと考えて入社したものの、配属されたのは記者としてではなく「整理部」という新聞を作る側の地味な部署。
長時間労働、低賃金、やる気もゼロどころかマイナスになる一方の野々村。
果たして彼の新聞社における生活はどうなっていくのか・・・・?

■良かった点

熱血青春お仕事小説!
というのを期待して読んだのだけど、かなり肩透かしを食らう部分もあった。
もちろん、最終的には仕事に打ち込んでいくことになるのだけど・・・・
前半から中盤、いや、ほぼ最終盤まで主人公の野々村はクソ野郎だ。

確かに、自分の思う仕事が出来ない、願っていた部署に配属されずやる気が起きない。
まー、気持ちは分からなくも・・・・ないかといわれると微妙。
会社に入社したら、どこに配属されるかなんてわからないわけで。
自分のやりたい仕事が出来ないからやる気が出ないって、うーん、まあ、やる気は出ないとしても仕事で給料もらっているんだから働こうぜ!
っていう気を持ってしまう。
今の時世だと、若くても起業していろいろできるし、若いからこそ中年や年寄りに出来ないことも出来るってのは沢山あるだろうけれど、それでもやりたい気持ちだけで仕事が出来るわけもない。

やる気なし、勉強もせず、質問もせず、言われることだけやろうとしても出来ずに怒られ続け。
小さなプライドにしがみついている主人公の姿に入れ込むことは難しいなぁ。
それでも読み進められるのは、彼の周囲にいる新聞社の人間たちが熱く、新聞を作るという気概に溢れているから。

そして後半。
主人公の教育係である権藤が、ある事情から会社を辞めることになった。

そこからの反転が、この作品の魅せるところだろう。

最後の決して長くはない中で、新聞製作に関する向き合い方、野々村の成長が一気に描かれのぼりつめていくところは、やっぱり読んでいて胸が熱くなる。
とにかく最後のために書かれた作品だと思う。

どれだけ給料が安くても、厳しい労働環境でも、新聞を愛している男たちの物語。
華やかな記者の部分ではなく、

「取材や整理の記者職だけが新聞人の誇りを持っているなんて大きな勘違いだ。工場や輪転の人間はそれ以上に誇り高い。」

という部分に光をあてたのも興味深く読めた。

■ここが改善できるともっとよかったかも?

主人公のうじうじ、駄目さ加減が感情移入をはばむ。
あと、主人公はその後に借金で破滅したとしか思えないのだが、どうなんだろう。

 

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