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【マリみてSS(祐麒・色々)】乙女はマリアさまに恋してる 第一話③

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~ 乙女はマリアさまに恋してる ~
<第一話 ③>

 

 授業を受け、お昼ご飯を食べ、放課後になった。桂はテニス部に既に入部届を出しており、部活動にさっそく参加するということで行ってしまったので、祐麒は一人で帰りの支度をして教室を後にする。しかし、教室を出た祐麒が向かった先は正門ではなかった。なぜかといえば実は今日この後、祥子と会う約束をしていて、約束の場所に向かうからである。
 リリアンに通うようになってから慌ただしく、祥子とは顔を合わせることが出来ていなかったので、祐麒としても楽しみだった。祐麒のことを本物の女の子と勘違いしているとはいえ、本当に妹のように優しく接してくれた祥子のことが祐麒はもちろん好きだった。まあ、いまだに祥子を前にすると緊張してしまうのは止められないが。
「えーっと、どっちだっけか」
 うろうろと校内を歩く。何しろ、入学して数日であり、リリアンの敷地内でも行ったことがない場所ばかりでよく分からない。
 いつしか人気の少ない場所に出てしまい、こんな所じゃないよなと思いながら踵を返そうとしたところで、声をかけられた。
「こっちよ祐紀、遅かったわね」
 そこにいたのは間違いなく祥子。ということは、偶然にも指定された場所に辿り着いたというわけか。
「す、すみません、遅れて。校内で迷ってしまって」
「まあ……ごめんなさいね、貴女はまだ慣れていなかったものね。もう少し分かりやすい場所にすれば良かったかしら」
「ああいえ、大丈夫です! むしろ、学校内を色々と歩いて色々と知ることが出来たので、良かったですよ!」
 祥子が申し訳なさそうな表情をするので、慌てて言い繕う。
「そう。ありがとう、祐紀は優しい子ね」
 微笑む祥子。
 しかし、何度見ても驚かされる。かつての世界で祐麒が見てきた祥子は、そりゃあ美人で、笑うことだってあったけれど、こんなにも無防備で慈愛のこもった笑みなど簡単に見せる女性ではなかった。というか、祐麒は見たことがない。
 祥子はさらに何かに気付いたのか、腕をあげて祐麒の胸元へと伸ばしてきた。
「あ、あの、祥子お……姉さま?」
「タイが曲がっていてよ」
 細くしなやかな指が少し傾いていたタイを直す。
「あ……ありがとうございます。えと、それで今日、呼び出された理由って」
 祐麒が口にすると、途端に祥子は悲しそうな顔をした。
「理由って……祐紀に会いたいのに理由なんているの? 私、ずっと心配していたのよ。入学式でのことや、その次の日のことも新聞で見て。会いに行きたかったのだけれど、私の方もちょっとごたごたしていて……ごめんなさいね」
「な、なんで祥子お姉さまが謝るんですか? むしろ、そんな風に思っていただいてありがたいくらいです」
「ううっ……祐紀、可愛い子」
 なぜか鼻と口元を手で抑えて俯く祥子。
 良く分からないが、とにかくただ祐麒に会いたくて呼び出されたようで、妹としてとはいえそれほどまでに祥子に思われて嬉しくないわけがない。
「――そうそう。本当は一つ、重要な用事があったのよ」
「なんですか?」
 すると祥子は、そっと自らのロザリオを広げてみせる。
「これを、受け取って欲しくて」
「え……えぇっ!?」
「どうしたの、そんなに驚いて。もしかして、嫌、とか……」
「そっ、そんなんじゃないですっ! え、でも、そんな、えーと、私なんかがいただいて良いものでしょうか」
「当たり前じゃない。貴女以外の誰が、私のロザリオを受け取って……妹になってくれるというの?」
 不思議そうな顔をする祥子だが、祐麒は内心で思い悩む。
 本来なら祥子の妹になるのは祐巳のはずであって、祐麒がそのポジションにおさまってしまって良いものだろうか。いくら前の世界と異なるとはいえ、なるべく違わないようにした方が良いのではなかろうかと思うのが人の性。ここで祐麒がロザリオを受け取ってしまったら、祐巳はどうなるのか。
 そこまで考えて、そういえばこの世界では祐巳を始め福沢家の人間は存在していないことを思い出した。
 となれば、特に気にする必要もないのか。
 悩みはしたもののそう結論づけ、更に言うならば祥子を悲しませたくないので、結局答えは最初から決まっていたのだ。
「改めてお願いするけれど……祐紀、私の妹になってちょうだい」
「は……はい」
 頷くと、祥子自らロザリオを首にかけてくれた。
 ひんやりとしたチェーンの感触が伝わってくる。
「ありがとう、祐紀」
「いえ……」
 こうして祥子と祐紀は『姉妹』となった。

「…………って、何素直に受け取って、『姉妹』となったことを喜んでいるんだ、俺は…………っ!」
 寮の部屋に戻って改めて考えて、かなり染まりつつある自分を発見して頭を抱えることになる祐麒なのであった。

「――何々、祐紀ちゃん誰の妹になったの??」
 そして、興味津々の三奈子に色々と聞かれて答えさせられ、『りりあんかわら版』を賑わせることになるのも毎度のことなのであった。

「――お世話係?」
 リリアンに入って初めての週末、ようやくのんびりできると思ったら、桂にそんなことを言われた。
 なんでも、寮住まいの三年生のお姉さま方のお世話係として一年生がつくのが毎年の恒例になっているとのこと。リリアンの『姉妹制度』とはまた別に、寮内での特殊な姉妹制度のようなものか。
 特に決まりがあるわけではなく、三年生のお姉さま方がそれぞれ話し合って、どの一年生をお世話係にするか決めるらしい。三年生は二人部屋を使用するので、一部屋に二人の一年生がつくのが基本で、一年生も同じ部屋の二人が一緒になることが通例だ。年によっては三年生と一年生で人数に差が出ることもあり、その際はどこかを四人にしたり、逆に減らしたり、調整をするらしい。今年は三年生が二十三人、一年生が二十四人と、人数こそ一人差があるが、組み合わせとしては丁度良くなる。三年生のうち誰かが一人になるだけで、全員が均等になる。
 この制度は、一年生と三年生の交流も目的としている。学生時代の二学年の差は思いのほか大きく、部活動でも一緒でない限りなかなか打ち解けることも難しい。そこで、せっかく同じ寮ということもあって始まったとのこと。
 お世話係といっても大したことをするわけではなく、三年生の希望に従ってお茶やお菓子を差し入れたり、話し相手になったりするくらいで、堅苦しいものはない。それだけでも、交流を目的としたものだということが分かる。
「あぁもう、どのお姉さま方のお世話係になるか、ドキドキしちゃうね」
 誰のお世話係になるのかが、今日に発表されるらしく、桂は朝からドキドキワクワクしているということだ。
 ちなみに選び方は公正にくじ引きで決められるらしい。以前は三年生の意思で決めていたらしいが、色々と問題があってくじ引きが暗黙の了解になっている。
 まあ、薔薇様がいれば選ばれた子達は羨望と嫉妬が送られるだろうし、そうでなくても誰に選ばれた、選ばれないという思いが渦巻くだろうから仕方ないだろう。
「よっし、祐麒ちゃん、行こっ」
 桂に手を握られ、一緒に部屋を出てラウンジに向かう。
「うわっ、みんな集まっているねー」
 ラウンジには既に多くの一年生、そして二年生もちらほらと集まっていた。それだけ皆、注目しているということだろう。
 発表された後は、それぞれお世話係となった三年生の部屋に行き、挨拶を兼ねたお茶会をそれぞれで行うことになっていた。
「うぅ、初めてのお仕事、緊張するっ」
「まだ発表もされていないよ」
 二人でお喋りをしていると、他の一年生の子も会話に交じってきて、やがて皆で色々と話し始める。
「はい一年生、静かにねー。お待ちかねの発表の時間です」
 前方に登場してきたのは三奈子である。三年生は各自、部屋で待機しているため三奈子が発表するようだ。
「では、早速ですが発表します。発表された子達からお姉さま方の部屋に向かってね。お茶とお茶菓子は、ちゃんと用意しましたね? それじゃあ、いっくよ~~」
 お茶とお茶菓子は一年生がそれぞれで用意する。とはいっても、肝心の三年生が誰だか分かっていないため、無難なものに落ち着きがちではある。
「えー、101号室の田中幸枝さん、各務原一美さん。302号室です」
「は、はいっ」
「い、行ってきます!」
 三奈子の発表に二人の女の子が緊張した様子でキッチンへと向かって行く。
「うむうむ、初々しいねぇ。ではでは、続けていきますよ~」
 そうして発表は続き、祐麒と桂についても決まった。二人はキッチンで紅茶とお茶菓子をトレイに乗せ、僅かに緊張した足取りで部屋へと向かっていた。
「310号室か……桂ちゃん、分かる?」
「さすがにまだ、三年生のお姉さま方の部屋全部は覚えていないから。うぅ、怖くなってきちゃった。あたし、おっちょこちょいだから、粗相したらどうしよう」
「桂ちゃんみたいに可愛い子だったら、絶対に気に入られるって」
「それは祐紀ちゃんだよう。祐紀ちゃんみたいに有名人で素敵な子だったら、どんなお姉さまでも自慢にするよきっと。あ、そう考えるとあたしなんかオマケみたいなもんじゃん。なんか、気楽になってきた」
「絶対にそんなことないと思うんだけどなぁ」
 これは本気でそう思う。桂はどんな人が相手だとしても、大抵は好かれる女の子だと思うのだが。
 そうこうしているうちに、310号室の前に辿り着いた。
「そ、それじゃ、ノックするね」
「うん、よろしく」
 桂は一度深呼吸をした後、扉をノックする。
『――――はい』
 ゆっくりと扉が開き、姿を見せたのは。
「……あ」
「あら、あなた達は……」
 腰まで届く滑らかな栗色の髪の毛は窓から差し込む陽の光を受けて輝くようであり。優しげな大きな瞳、艶やかな唇、全体から溢れ出る穏やかなオーラ。どこからどう見ても美少女。
「み、瑞穂さま」
「あら、覚えていてくれたの、嬉しいわ。あ、と、立ち話もなんだものね、中に入って頂戴」
「は、はい」
「失礼しますっ」
 室内に入ると、良い匂いがする。アロマか何かであろうか。
 部屋は全体的にお姫様チックな感じでまとめられており、非常に可愛らしい。
「こ、これは私の趣味ではなくて、母の趣味だから。乙女すぎるわよね」
「そんなことないです、瑞穂さまにとってもお似合いで素敵ですっ」
 桂が、「ふわぁ」と感嘆の目で見ていたが、あまりに見ていると失礼だと思ったのか、きょろきょろするのやめた。
「……あれ、お一人、ですか?」
 室内には瑞穂一人しか姿が見えなかった。
「ええ。三年生は奇数でしょう、私は一人部屋なの」
「お一人では、寂しくないですか?」
「私は三年からの編入で、それまではずっと一人部屋だったから、むしろ慣れていて落ち着くから大丈夫。あ、いつまでも立たせてごめんなさい、座って頂戴」
 勧められたクッションに腰を下ろし、テーブルに持ってきた紅茶とお茶菓子を置く。ここまで運んでくる間に、紅茶もほどよい熱さになっているはずだった。
 紅茶を淹れ、自己紹介をして、お喋りタイムに入る。
「――そう、桂ちゃんに祐紀ちゃんね。ふふ、でもこんな可愛い子を二人も独占出来ちゃうなんて、一人部屋で得をしたかも」
「そ、そんな、可愛いのは祐紀ちゃんだけで、私なんかっ」
「あらどうして? 桂ちゃんは物凄く可愛いわよ」
 にっこりと瑞穂に微笑みかけられると、桂は真っ赤になって目をぱちくりさせた。そんな桂を見ていると微笑ましくなってくるが。
 次に瑞穂に目を向けられると、飲もうと持ち上げた紅茶のカップが途中で止まり、魅入られたように固まってしまう。
「もちろん、祐紀ちゃんも同じくらい可愛いわ」
 そう、笑いかけられると。
 一気に熱が上昇してきて顔が熱く、赤くなるのが分かった。
 祥子と暮らすことで美少女に対してはそれなりに耐性が出来たと思っていたが、甘かったようだ。
「あ、あの、瑞穂お姉さまは何か格闘技でも習っているのですか? 痴漢をやっつけたとき、凄かったです」
「ああ、あれは、ちょっと護身術をね」
 護身術というにはレベルが高すぎるような気もするが、それだけ瑞穂のスペックが高いということなのだろう。素直に祐麒は感心して瑞穂を見つめる。そして、あまりに呆けすぎて、紅茶のカップをテーブルに戻す際にうっかり倒してしまった。
「う、うわっ、しまった!?」
「祐紀ちゃん!?」
「大丈夫っ!?」
 幸い、紅茶は既に温くなっていたので、実際のところさほど熱くはなかったが、思い込みもあって大げさなリアクションをとってしまった。心配する桂と瑞穂を安心させようと顔をあげたら、至近距離に瑞穂の顔があった。
「大変、すぐに冷やさないと」
「え、あ、うっ」
 秀麗な眉目を間近に、祐麒の動きは止まる。
 しかし次の瞬間、ヤバいことに気が付く。
「ほら祐紀ちゃん、火傷しないうちに、脱いで」
「――ほえっ? て、わ、だ、駄目ですっ!」
 瑞穂は心配をして言ってくれているのだろうが、脱げるわけがない。しかし瑞穂も譲らず、手を伸ばしてくる。
「っ! ああああのっ、もう紅茶冷めていたんで熱くはないんです、驚いただけで本当に大丈夫ですから」
「本当に?」
「はい、そりゃもう本当に」
 言いながら、早いところ離れてくれと内心で焦る。
 なぜかって、心配した瑞穂の繊細な指が、キュロットパンツを通してとはいえ太腿の付け根のあたりを触ってきていたから。やさしい手触りが伝わってきて、おまけに瑞穂の綺麗な顔は目の前でいい匂いがして、どうにも堪らなくて下半身が反応してしまったのだ。
 チュニックの裾を掴んで伸ばし股間を隠すようにしているが、これ以上はまずい。
「そお? でも、お洋服に染みが付いちゃうから、早く処理した方がいいわね」
「そ、そうですね。それじゃあそろそろ失礼して……って、あ、それより部屋の方汚してしまって、すみません! クッションも」
 当たり前だがカーペットやクッションにも紅茶は零れ落ち、染みになってしまっていた。
「何を言っているの。そんなことより、祐紀ちゃんの体の方が大切なんだから、気にしなくていいの」
 しかし瑞穂はそんなこと気にした様子もなく、祐麒の身を案じて頭を撫でてくれた。心地よいが、それで余計にいきり立ってしまい、もはやどうにもならなくなってしまった。
「どうしたの祐紀ちゃん、そんなモジモジしちゃって。やっぱり、足が痛いんじゃ」
 足を閉じ、手で股間をおさえ猫背になっているのは隠すためであるが、もはや限界である。
「ご、ごめんなさい、失礼しますっ!」
 祐麒はチュニックを引っ張ったまま立ち上がって頭を下げると、ダッシュで部屋から逃げ出した。
「え、あ、ゆ、祐紀ちゃん!?」
 残された桂がおろおろとするが。
「大丈夫よ、桂ちゃん。それより祐紀ちゃんを追いかけてあげて、心配だもの」
「――――は、はい、分かりました。瑞穂お姉さま、申し訳ありませんが、失礼します」
 深々とお辞儀をして、桂も部屋を飛び出す。

 祐麒と桂が出て行くのを見送り、部屋の鍵を閉めたところで。
 瑞穂はがっくりと床に両手両膝をついて、『orz』状態になった。
「ああぁ、ぼ、僕はなんであんな……」
 自らの行為に打ち震える。

"もちろん、祐紀ちゃんも同じくらい可愛いわ"

 どんな女たらしか。いや、それ以外にも色々と反省というか、落ち込むべき言動を随所に行ってしまった。
「うぅ、しようがないとはいえ、どんどん染まっていく自分が怖い」
 瑞穂は項垂れるが、気を取り直してお世話係に決まった二人の下級生のことを考える。
 初めにお世話係なんて聞いた時、正体がバレる危険性が高まるわけでとんでもないことだと思った。
 だが、この寮のルールである以上、瑞穂一人だけが例外でいるわけにもいかない。ただでさえ、一人部屋の権利を裏で色々と動いてもらって獲得したのだ、余計な不審を周囲に抱かせるわけにはいかない。
 そんなわけで不安いっぱいで下級生が来るのを待っていたわけだが、どうにかやっていけるのではないかという第一印象を受けた。あまりにスキンシップを求めてきたり、馴れ馴れしい子だったりしたら困るところだったが、そうでもなさそうで一安心。
 桂はいまどきの女の子という感じで噂話なんか好きそうだが、先輩後輩のラインはきちんと守ることのできる子だと思ったし、素直で上級生に対し敬意を払っているから瑞穂が嫌がるようなことはしないだろう。
『祐紀』はあまり話す子ではないようで大人しかったが、真面目そうだった。むしろ恥ずかしがり屋なのか、瑞穂と近づくと逆に逃げるようだった。
「でも、福沢祐紀ちゃんか……可愛かったな……って、何を考えているんだ僕は!」
 ぶんぶんと頭を振る。
 実は人知れず悩みの深い瑞穂なのであった。

「祐紀ちゃん、ちょっと待ってよーーー」
 桂が追いかけてくるのは分かったが、桂にも見られるわけにはいかない。結局、トイレの個室に逃げ込んで鎮静するのを待つしかなかった。扉を隔てて桂がいるので、一人で処理するわけにもいかなかったのだ。
 どうにか収まった後で部屋に戻り、着替えたところでようやく一息つく。
「急にどぉしちゃったの、祐紀ちゃん? やっぱり足、痛いんじゃないの?」
「だ、大丈夫! なんか、瑞穂さまの美貌にあてられちゃって、粗相したことも恥ずかしくなって逃げてきちゃっただけだから」
「そうなの? でも、分かるかも。瑞穂お姉さま、すっごい綺麗だもんねぇ」
「う、うん」
 瑞穂のことを思い出すと、またしても下半身が疼き出しそうになり、慌てて膝を立てる。ロングスカートに着替えたので、膝を立てた格好で座れば、ふんわりとした生地のお蔭で股間がうまいことカモフラージュできるのだ。
「でもでも、あたし達良かったかもね。瑞穂お姉さまみたいな方のお世話係になれて」
「そ、そうだね」
 嬉しいことに相違ないが、困ってしまうことも確かで、どうにか対策をしないとまずいかもしれない。不埒なことを考えなければ良いことだが、思春期の男子としてなかなか難しいことなのだ。
「あ、そうか。桂ちゃんたち瑞穂さまの担当になったんだっけ?」
 桂と話しているところに入り込んできたのは三奈子だった。
「三奈子さま、ご存じなんですか? 瑞穂さま、今年から編入されたと聞きましたけど」
「だからこそ、じゃない。三年生から編入なんて珍しいのに、それに加えて容姿端麗、成績優秀、嫋やかな振る舞い。一か月足らずで既に注目を浴びつつあるんだから。ねえねえ、何かいい話無かった? 『りりあんかわら版』で特集記事を組みたいと思っているんだけど」
 すり寄ってくる三奈子だが、今日は世間話的な感じでネタになりそうなものはないし、あったとしても勝手に売るようなことをするつもりはない。
「ちぇー、口が堅いのね。まあ、こういうのは自分で突撃するのも楽しみの一つだからいいけれど」
 全く懲りた様子の無い三奈子には苦笑するしかない。考えてみれば祐麒も被害者の一人ではあるのだが、何か憎めないのだ。
「まあいいわ、まだまだ謎に包まれているから楽しみでもあるし、読者の興味も引くってもんよね。祐紀ちゃんにアンリさんに瑞穂さま、今年は楽しみな人が多くてわくわくしちゃう! この調子ならエルダー選挙もどうなるかわからないしね、うん、なんだか今から燃えてきちゃった。それじゃあ、また何かあれば教えてね」
 一人で言うだけ言うと、三奈子は満足したように自分の机にと戻り、何やら猛烈な勢いでPCのキーボードを叩き出した。
「三奈子さまって、なんか凄いねぇ」
「そ、そうだね……」
 関わると大変なことになりそうだが、同部屋だけに仲良くしないわけにはいかない。
「ねぇ祐紀ちゃん、一緒にお買い物に行かない? 瑞穂お姉さまのために、新しい紅茶やお菓子を見に行こうよ」
「あ、う、うん。いいよ」
 桂に誘われて頷く。ロングスカートに着替えてしまい、その格好で街に行くのもどうかと思うものの、桂とデートだと思えば楽しみでもある。大変な一週間だったが、週末くらい楽しいことがあってもいいだろうと思う。
 気の抜けた祐麒は、一週間は終わったわけでなく、まだ待ち受けているものがあるなんてこの時は思っていなかった。

 

 

第一話 ④につづく

 

 

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