【作品情報】
作品名:紙の梟
著者:貫井徳郎
ページ数:376
ジャンル:ミステリ―
出版社:文藝春秋
おススメ度 : ★★★★★★★☆☆☆
考えさせられる度 : ★★★★★★★★☆☆
こういう人におススメ! : 死刑制度など社会テーマに興味あり
恐ろしくて歪んだ世界に五つの物語が私たちを導く。
被害者のデザイナーは目と指と舌を失っていた。彼はなぜこんな酷い目に遭ったのか?――「見ざる、書かざる、言わざる」
孤絶した山間の別荘で起こった殺人。しかし、論理的に考えると犯人はこの中にいないことになる――「籠の中の鳥たち」
頻発するいじめ。だが、ある日いじめの首謀者の中学生が殺害される。驚くべき犯人の動機は?――「レミングの群れ」
俺はあいつを許さない。姉を殺した犯人は死をもって裁かれるべきだからだ――「猫は忘れない」
ある日恋人が殺害されたことを知る。しかし、その恋人は存在しない人間だった――「紙の梟」
死刑制度に関する作品。
もし、人を一人殺したら、その人は必ず死刑になるという制度になったら、という社会を描いている。
情状酌量とかそういうのはなし。
望まぬ殺人とか、正当防衛とか、そういうのもなく、シンプルに人を殺したら死刑になる。
そうすれば殺人も少なくなるのではないかと導入された世界。
ある意味で、非常に分かりわけでもある。
現実の世界でも、一人を殺しても死刑にはそうそうならず、二人、三人となったところで死刑になることが多い。
その差はなんなのか、そう考える人もいるだろう。
また、どんな事情があろうとも人を殺したのであれば同じ報いを受けるべきだという考えもあろう。
じゃあ実際にそういう世界になったら、というのを描いた作品。5つの短篇で様々な側面から描かれる。
殺したら死刑になる、では死なない程度の行為なら良いのか。
一人殺せば必ず死刑になる、だからこそ発生してしまう殺人事件。
正当防衛した友人に自首するなと諭す。
一つ一つの物語は、読んでいって気持ちの良い結末ではない。
まあ、貫井さんが描いているんだから、それはある程度想定できますけれど。
どういう制度にすれば人に対する抑止になるのだろうか。
そう考えることもあるし、どんな制度を定めたとしても殺人をする人はするのかもしれないし。
何が正しいか分からないですが、そういうことを考えることが良いのでしょうね。
なんてことを考えさせられる。
決して気持ちのよくなる作品ではないですよ(笑)