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SF 書評

【ブックレビュー】失われた過去と未来の犯罪(著:小林泰三)

更新日:

【作品情報】
 作品名:失われた過去と未来の犯罪
 著者:小林 泰三
 ページ数:308ページ
 ジャンル:SF
 出版社:KADOKAWA

 おススメ度 : ★★★★★★★☆☆☆
 ブラック度 : ★★★★★★☆☆☆☆
 こういう人におススメ! : 魂とはなんぞ? とか考えてみたい

 

■作品について

全人類が記憶障害に陥り、外部記憶装置に頼るようになった世界。
そんな中で、いくつもの人生を覚えている「わたし」
これは誰かの記憶なのか。それとも自分のモノなのか。
やがて判明する真実とは。

著者、小林 泰三らしいブラックなSFミステリー!

■良かった点

なんというか、こういう設定をまず考える小林さんが凄いですね。
気が付いたら記憶を長期間保持できなくなっていることに気が付いた。
あわててパソコンに文章を打ち込むも、そのことすらすぐに忘れて・・・・自分だけではない、他の人達もみんな、記憶を長期間保持できなくなっている。
記憶に関する作品だと、他にも
『記憶破断者』
を小林さんは書いていますね。
あちらとは違い、こちらはSFですが。

全人類が長期記憶を保持できなくなった「大忘却」を経て、人類は外部記憶装置を使って記憶を保持するようになるわけです。
自分の体にソケットを設置してメモリを差し込んで記憶していく。

そうなると、新たに生まれた人達は当然ながら外部記憶による記憶が自然であり、当然のものになる。
メモリの紛失、間違い、入れ替わり。
そんなことが起こりうる世界。

即ち、「人の魂とはどこに宿っているのか?」というテーマにつながっていくわけだ。
記憶に宿るというならば、この世界において人の魂は外部記憶装置であるメモリになるということなのか。
誰の体にでも、メモリさえ挿せば乗り換えることができる。

作品の第一部は「大忘却」に至るまで。
第二部は「大忘却」以降について短編連作の形で綴られていくのだが、それらが全て繋がった最後で、またとんでもない展開というかオチとなる。
おーう、これぞまさにSFの醍醐味か。

もしも自分がこの状態に陥ったら、うーん、きっとどうにもならないだろうなぁ(笑)
いやはや、不思議な物語。

■ここが改善できるともっとよかったかも?

小林泰三さんのグロさはありません。
そこを期待していると肩透かし喰らいますよ!?

 

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