書評と主にマリア様がみてるの二次創作(旧:よしのXブレード)

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【マリみてSS(笙子×克美×乃梨子)】ちょっと近づいて

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~ ちょっと近づいて ~

 

「笙子さん、凄いじゃん。今日は予習も宿題もちゃんとやってきていて」
「ふふん、そーでしょー?」
 日出実ちゃんに褒められて調子に乗ったあたしは、偉そうに胸の前で腕を組んでちょっと反り返ってみた。
 日出実ちゃんの言う通り、宿題は忘れずにきっちりやって提出できているし、予習もばっちりで授業中に先生にさされたけれど、ちゃんと答えることができて、先生にだって褒められたのだ。
「誰かさんの力を借りなくても、これくらいは出来るんだから」
 と、得意げに言いながらちらりと視線を横に向ける。そこには、この前あたしの必死のお願いを冷たく拒絶した乃梨子ちゃんがいる。乃梨子ちゃんの力を頼らなくたってこれくらいできるんだ、どうだ、ふふふ、そんな気持ちを込めて見ると。
 あたしの視線を感じたのか、乃梨子ちゃんはそれまで目を落としていた文庫本を閉じてカバンの中にしまい、瞳だけ動かしてこちらをちらと見て。
「…………はぁ」
 と、ため息をついた。
 さらに。
「それくらい当たり前のことだし、できるんだったら最初からそうすれば良いのに」
 そんなことをぼそっと呟いて、次の授業の準備を始めた。
「っっっ! な、何よ、今のはーっ。き、聞いた、日出実ちゃんっ!?」
「お、落ち着いて、笙子さん。それに、乃梨子さんの言うことももっとも……」
「ええっ、ひ、日出実ちゃんの裏切者っ! ひどいーーーっ」
 せっかく昨日、お姉ちゃんにさんざん教えてもらって苦労してやってきた宿題と予習だというのに、当たり前の一言で済まされてしまうなんて。いや、そりゃあ宿題はあたりまえかもしれないけれど、予習は褒められてしかるべきじゃないだろうか。それだけではない、このところは毎日、とまではいかないけれどお姉ちゃんに勉強を教えてもらっているのだ。うーん、我ながら偉いぞ。
「ほら笙子さん、先生そろそろ来るよ」
 だけど、そんなあたしの陰の努力も知らず、日出実ちゃんもそっけなくそんなことを言うのであった。
 いいもんね、そのうち乃梨子さんをギャフンといわせてみせるんだから。

 

 四時間目は体育である。運動は決して得意というわけではないので、正直なところ、積極的に受けたいというほどではない。それでもサボるわけにはいかないから真面目に授業には出るのだけど、四時間目が体育って、お腹が空いていて余計にやる気がわきおこらない。おまけに、着替える前に日出実ちゃんに生理がやってきちゃって、日出実ちゃんは重めなので保健室まで連れて行っていたら出遅れてしまった。
「……その結果が、これなのよね」
「何か不満でも?」
 目の前では体操服姿でストレッチをしている日本人形、もとい乃梨子ちゃん。ペアで準備体操をするのだけれど、日出実ちゃんがお休みになって、なおかつ出遅れたあたしは同じように一人だった乃梨子ちゃんと組まざるをえなかった。
「仕方ない、ぼっちの乃梨子ちゃんと組むかー」
「失礼ね、別にぼっちじゃないし……ほら、やるわよ」
「わ、わっ、いきなり押さないで……って、痛い痛い、裂け、裂けちゃう~~っ!?」
 地面に座って足を開いての前屈、後ろから乃梨子ちゃんがぐいぐいと背中を押してきて、ちょ、やばい、これやばいって。
「体が硬いなぁ」
「う、う、うるさいなぁっ、って、ぐぇぇっ、し、死んじゃうっ!!」
「これくらいじゃあ死なないって、ほら、もうちょっといけるから」
 あたしが悲鳴を上げているのにもお構いなし、乃梨子ちゃんはさらに体重をかけてくる。あ、なんか意識が遠のいてきたかも……
「――はい、それじゃあ交代して」
 そんなあたしを助けたのは、先生の掛け声だった。押していた力が緩み、ようやく体を起こして一息つく。
「ふ……ふふふ、さあ、それじゃあ次は乃梨子さんの番だよ~~?」
「わかっているから、その手つきやめなさい」
 役割をチェンジして、今度はあたしが乃梨子ちゃんの前屈をサポートする番になる。地面に座った乃梨子ちゃんを見下ろし、さて、先ほどの復讐にどれだけ力を入れてあげようかと指をワキワキと動かす。
「真面目にやってよ」
「はーい」
 素直に返事をして肩に手を置く。
 最初からいきなり全力でいってはつまらない、ここはじわじわと力を込めていくことにしよう決め、押していく。
「ぐっ……」
「なんだ、乃梨子さんも結構、硬いじゃん」
「う、うるさいわね……」
 はっきりいって、あたしよりも硬いのではないだろうか。まださほど力を入れているわけでもなく、体だってそこまで前に倒れているわけではないのに、随分と苦しそうな声を出している。
 あたしは先ほどのお返しと、徐々に力をかけていく。
「くぅっ……っ……」
「ほら乃梨子さん、我慢しないで声をあげてもいいよ? どうしてもってお願いするなら、これ以上は力を入れないであげるから」
「………………っ」
「強情だなぁ」
 根を上げない乃梨子ちゃんに対し、あたしはまた少し力を加えて肩を押してゆく。我慢強いのか負けず嫌いなのか、明らかに苦しそうなのに弱音も泣き言も漏らさない乃梨子ちゃん。そこまで無理しなくともと思うのだが、こうなってはあたしだってここで力を緩めるわけにはいかない。
 前のめりに体重をかけ、さらに乃梨子ちゃんの体が前に倒れて――
「…………っ!?」
 その時、あたしの目に入ってきたのは。
 前屈みになって空いた体操服の胸元の下のおっぱいの膨らみ。大きいわけじゃないけれども体勢のせいか迫力があるように見える。しかもその谷間、膨らみにうっすらと汗が浮かんで肌がわずかに光って見え、なんとも艶めかしい。
 って、な、なんで女の子の胸を見てこんなに動揺しなくちゃならないのか。ずっと女子校育ちで、別にこれくらい見慣れているはずなのに。
「……はぁっ、んっ……」
 だから、そんな色っぽい喘ぎ声を漏らさないでほしい。痛いんだったら我慢せずに痛いと言えばいいのに、これじゃあいつまでも力を緩められず、そうすると胸だってずっと見えたままで。
 なぜか、あたしの方がドキドキして手に汗をかいてくる。このままではなんかマズイ、さっさと終わらせてしまうべく、一気に力を入れて乃梨子ちゃんにギブアップしてもらおうとする。だけど焦っていたのと手に汗があったのとあわさって手が滑った。
「うわっ!?」
「ちょっ!?」
 結果。
 こ、こ、この掌に収まっているのは、乃梨子ちゃんのおっぱい!!
 背後から抱き着いて、おっぱいを掴む格好になってしまった。
「ご、ご、ごめん、乃梨子さん」
「いいから、離れてくれる?」
 ちょうどそのタイミングで教師から声がかかったこともあり、慌てて手を離す。乃梨子ちゃんは乱れた体操服を直しながら立ち上がり、あたしの方に顔を向ける。冷たい目で見られて、ビクッとする。
「ご、ごめんね乃梨子さん、わ、わざとじゃ」
「ほら、次に行きましょう」
「あ……う、うん」
 いつもと変わらぬ様子の乃梨子ちゃんに、ちょっと拍子が抜ける。気にしているのはあたしだけで、乃梨子ちゃんは気にもしていないのだろうか。
 体育の時間の間、なんだか無駄にそんなことばかり考えてしまった。

 授業が終わり、カラーコーンの片付けを先生に頼まれてしまった。しかも。
「……乃梨子さんと一緒、か」
「仕方ないでしょう、"内藤"、"二条"と名前順なんだから」
 二人でカラーコーンを抱えて体育倉庫へと持ち運んでゆく。
 体育の授業もさんざんだったし、後片付けは面倒くさいし、しかも仏頂面の乃梨子ちゃんとずっと一緒だし、なんでこうついていないんだろうと思わずため息が出てしまう。
「まったく、ため息をつきたいのはこっちよ」
「へっ?」
「今日で、二回目」
「え、何が?」
「あなたに、胸を揉まれたのが」
 その言葉に顔がカァッと熱くなる。体育倉庫内が暗くて顔色がわかりづらくて助かった。
「わざとじゃないし、それに、触っただけで揉んでないし!」
「揉んでいたわよ、特にさっきの授業中は」
「わ……わかったわよ、ほら」
 カラーコーンを置いたあたしは、乃梨子ちゃんの前に立って無防備な姿をさらした。
「………………何が?」
「だからぁ、乃梨子ちゃんも私の胸、揉んでいいよ。それでチャラにしよ」
「はっ? いや別に私は揉みたくないし」
「何よー、さっきは恨みがましく言っていたくせに。どーせこの先も言ってくるんだろうから、これでお相子にしようっての」
「そういう趣味ないし、いいから」
 本当に嫌そうな顔をされて、ちょっと頭にきた。
 そりゃあ、あたしだって別に乃梨子ちゃんに揉まれたいわけじゃないけれど、これでも胸の大きさと柔らかさには自信があるのだ。中学生の時、同じクラスの友達に『笙子さんの胸の触り心地に勝るものは、生まれてこの方経験がありませんわ!』と絶賛されたくらいなのだから。
 まあ、その時に色々と触られてからは嫌になって、友達にも揉ませることなくなったのだけど、そんな胸を触らせてあげようというのに。
「戻るわよ、お昼だし」
「あ、ちょっと待ってよ!」
 ここで無視されたら間抜けすぎる。あたしは素早く回り込んで入口の前に立つ。
「逃げようったって、そうはいかないんだから」
「逃げるって……」
 なんか、可愛そうなものでもみるような目つきの乃梨子ちゃん。ううっ、あたしだって分かっている、自分がわけのわからないことを口にしているって。それでも、悔しくて止められないのだ。
「ああもう、分かったわよ」
「……へ?」
 髪の毛を?いたのち、無造作に乃梨子ちゃんの手が伸びてきて。
 むにっ
「ふにゃっ!?」
 あたしのおっぱいを、無造作に掴んだ。
「――――これで、いい?」
 掴んだおっぱいごと体を押されて、入口の脇にどかされる。乃梨子ちゃんはそのまま体育倉庫から出て行ってしまった。あたしの視界から消えるまで、一度もあたしのことを振り返ることなく。
「な、な、な…………」
 ぷるぷると震えて。
「何よ、今のはーーーーーっ!?」
 揉まれた胸を腕で抱きしめるようにして、あたしは叫んだのであった。

 

 体育倉庫での後片付けのせいで着替えが遅れ、そのせいでお昼ご飯に入るのも出遅れてしまった。おまけに今日は日出実ちゃんもアレのせいで具合が悪くて一緒に食べられないし、せめて気分を変えようかとお弁当を持って教室を出てみたものの、天気が良いこともあっていい場所はどこも他の子達にとられてしまっていた。
 とぼとぼと歩いていると、木陰のベンチが空いているのを見つけたので歩いていくと。
「げぇ……また、乃梨子さん…………って」
 空いていると思ったベンチだったけれど、一端に一人の生徒が座っていてそれがなんと乃梨子ちゃんだった。「げぇ」なんて口走ってしまったのは失敗だったけど、どうやら聞こえていないようなので安堵する。なぜって、既にお弁当を食べ終えたのか、乃梨子ちゃんはベンチに腰掛けたまま居眠りをしていたから。
 どうしようかと思ったけれど、お昼休みの時間もあんまり残っていないし、乃梨子ちゃんは寝ているし、このベンチで食べることにした。
「さてと、時間もないし、いっただきまーす」
 黙々と食べる。
 お母さんの作ってくれるお弁当は美味しいけれど、一人で食べているとなんとなく味気ない。
 横を見れば、相変わらず目を閉じたままの乃梨子ちゃん。相手が乃梨子ちゃんでも、話し相手になってくれればお弁当もずっと美味しいのになぁと、自分勝手に思う。あんなことをしたのだ、乃梨子ちゃんが素直に話し相手になってくれるはずもないのに。
 話すこともなく一人で食べていたら、あっという間に終わってしまった。時間がないからと急いだけれど、思いのほか時間があまってしまった。
「乃梨子さん……は、まだ寝ているのか。そんなに疲れているのかしら」
 まあ、体育の後にお昼ご飯を食べてお腹いっぱいになったら、そりゃあ眠くもなるというものだろうけれど。
「こうして寝顔だけなら綺麗なのにね」
 ところが、起きているときはクールな表情で、つれないことばかり言ってくる。
「本当、黙っていればね……」
 乃梨子ちゃんの方に軽く身を乗り出し、横顔をじっと見る。白くてすべすべした肌、意外と長い睫毛、さらさらとした黒髪、同じ女の子だけれどもなんだかドキドキしてしまう。
「……って、何を言っているんだか、あたしったら~~っ」
 てへっ、と軽く拳で自分の頭を叩くと。
「う…………ん……」
「わ、と」
 騒いだせいで目が覚めたのかと思って慌てて口を閉じる。乃梨子ちゃんは起きたわけではなく、軽く身じろぎしただけでまだ軽い寝息を立てている。
 が、身じろぎしたことで顔があたしの方に向けられた。
 目を閉じ、軽く上を向いた形で、わずかに唇が開いていて。それはまるで、キスを求めているポーズにも見えて。
「あ……」
 胸のドキドキが早くなる。少しずつ、視界の中の乃梨子ちゃんの姿が大きくなってくる。錯覚かと思ったけれどそうではない、あたしが少しずつ近づいているからだ。
 え、やだ、あたしったら何をしようとしているのだろう。寝ている相手になんて、そんなのずるい、っていうか相手は女の子だし、そもそも乃梨子ちゃんだし……
「…………あの」
 ぎゅっ、と目をつむってしまった私の耳に届いてきたのは、いつものクールな声。
 目をおそるおそる開いてみると、間近に乃梨子ちゃんのクールな顔。
「え、あ、あああああの、こ、これはっ」
「――――3回目」
「別に変なことをしようとしていたわけじゃなく、そろそろお昼休み終わるから起こした方がいいかなって思っ……え?」
「…………胸」
 乃梨子ちゃんの視線が動き、それにつられて見てみると、いつの間にかあたしの手は乃梨子ちゃんのおっぱいを触っていた。
「ごごごごめんっ、こ、これもわざとじゃなくって、あのっ」
 両手をあげてバンザイすると、乃梨子ちゃんは制服の胸元とタイを直し、お弁当の入った巾着袋を持って立ち上がる。
「まったく、油断も隙もあったものじゃないんだから」
「だっ――だから、別に好きで触ったわけじゃないもんっ、勘違いしないでよねっ」
「どっちでもいいけれど、この借りはいずれ、返してもらおうかな」
「え、そ、それってどうやって」
 何か、とても無茶なことでも言われるのかと身構える。
 しまった、乃梨子ちゃんに弱みを握られるとは、なんたる失態。あたしのおっぱいを揉むだけで許してくれないかな、なんて思っていると。
「そうねぇ、考えておく。とりあえず、教室に戻ろうか」
 素っ気なく踵を返す乃梨子ちゃんに拍子抜ける。
 だけど、よくよく考えると何されるかわからないまま待たなければいけないわけで、その方がむしろ生殺しみたいで嫌だった。
「乃梨子さん、何かするなら早く決めてよぉ」
 自分のお弁当を手に、乃梨子ちゃんを追いかけながらそう言うと。
 軽く振り返って、乃梨子ちゃんは。
「だめ、そのうち、ね」
 と、言って。
「…………っ」
 また、教室に向かって歩を進める。
 その背中を追いながら、あたしはびっくりしていた。
 だって、悪戯っぽく言ったさっきの乃梨子ちゃん。あんな、笑顔も見せることがあるんだと知ったから。
「あん、待ってよ、乃梨子さん」
 我ながら単純だけど、それだけで実は乃梨子ちゃんもクールなだけでなく普通の女の子で、もっと親しくなって仲良くなれるんじゃないかと思い、元気が出てきた。
「何……って、腕を掴まないでよ」
「いいじゃん、これくらい」
「歩きにくいじゃん、これじゃ」
「へー、乃梨子さんも『じゃん』とか言うんだ」
「人の話、聞いている?」
 予冷の音を耳に、あたしと乃梨子ちゃんはそんなことを話しながら教室へと向かって一緒に歩いていくのであった。

 

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