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SF ミステリー 書評

【ブックレビュー】時空旅行者の砂時計(著:方丈 貴恵)

更新日:

【作品情報】
 作品名:時空旅行者の砂時計
 著者:方丈 貴恵
 ページ数:313
 ジャンル:ミステリー
 出版社:東京創元社

 おススメ度 : ★★★★★★★☆☆☆
 ひねった設定度 : ★★★★★★★☆☆☆
 こういう人におススメ! : ちょっと設定の変わった本格ミステリとか読んでみたい

 

■作品について

病により瀕死の状態の妻。
もとをただせば、その呪われた家系、過去にあるという。
呪いを断つためには過去に遡って忌まわしい事件を解決しなければならない。
妻の祖先・竜泉家の人々が殺害された「死野の惨劇」の真相を解明するため過去にタイムトラベルした加茂を待ち受けていた真実とは?

タイムトラベルとミステリーをかけあわせた一作。

■良かった点

タイムトラベルはSF設定だが、SF要素はおまけであり、主はあくまでも本格ミステリーである。
時代は1960年、いわゆるクローズド・サークルで発生した一家惨殺事件。
主人公の加茂はタイムトラベルして、その事件の真相をといて犯人を見つけ出し、呪われた血脈をどうにかすべく奮闘する。
そんな加茂をサポートするのは、屋鋪にいた中学生の少女・文香。
事件の内容、被害者の殺され方などは陰惨なものなのだが、それを感じさせないのは筆致のせいか、少女のおかげか。

本作のうまさは、ミステリーの謎解きの中にSF設定をうまいこと取り込んでいるところだろう。
単なる犯罪ではなく、タイムトラベルに課された制約やその設定を使うことで可能となる犯罪。
もちろん、タイムトラベル出来るからなんでも出来る無双ではない。
そうなった時点で、本格ミステリーとしては反則ですからね。
あくまでも制約のある中で情報が提供され、それらをもとに解決するものである。
読者への挑戦状がはさまれるのも本格作品ゆえですね。

また、過去に戻って過去に干渉するがゆえに発生する未来の改変。
主人公が未来、というか本人にとっての現実に戻った後の展開。
これが後味良いので、読み終えた後で良かったねと思える。

全般的に読みやすく、SFもあくまで設定でSFファンである必要もない。
人におススメしやすい一作。

■ここが改善できるともっとよかったかも?

うまいこと綺麗にまとまっている。
尖っている部分はないから、そういう意味ではちょっと薄味に感じる部分もある。
閉ざされた別荘内で謎の殺人鬼がいるのに、緊迫感が伝わってこないところがちょっと。
あと、タイムトラベルが登場人物にあまりにあっさり信じられているのは・・・まあ、いいか。

 

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