【作品情報】
作品名:スティグマータ
著者:近藤 史恵
ページ数:310ページ
ジャンル:エンタメ
出版社:新潮社
おススメ度 : ★★★★★★★★★☆
人間のドラマと歴史 : ★★★★★★★★☆☆
こういう人におススメ! : スポーツとサスペンスが好き
「サクリファイス」、「エデン」、「サヴァイヴ」、そして「キアズマ」と続いたシリーズ第5弾。
正確には、「キアズマ」は別の舞台、主人公なので「サクリファイス」のシリーズというなら4作目といったほうがしっくりくるだろう。
<関連レビュー>
■サクリファイス
■エデン
■サヴァイヴ
■キアズマ
主人公は白石誓に戻る。
誓も既に30となり、選手としての先を見据えるようになる。
最後になるかもしれないと思いながら参戦するツール・ド・フランス。
そこには日本での仲間でありヨーロッパに渡ってきた伊庭、かつての仲間であるミッコ、今のチームのエースである二コラ、そしてドーピングで表舞台から消えていたが大会で復活してきたかつての英雄、メネンコ。
誓と接触してきたメネンコは、他の選手の恨みを買っており身の危険を感じていることを誓に告げる。不穏な状態で始まるレース。
その行方は・・・・
スポーツ×ミステリー。
ミステリーの比重が大きすぎず、レースと人間ドラマをきちっと描きつつ、それでも「なぜ?」という気持ちを抱かせるバランスがとても良い。
読みやすさは変わらず、内容の面白さと相まって一気読みしてしまう。
登場人物たちも、シリーズを重ねたことによって過去作品に出ていた顔なじみの人物たちが出てくるので、そういった人たちと誓との関係性や、過去との違いが読んでいた面白い。
今も昔も変わらない人、年齢を重ね選手としてベテランとなり考えの変わる人、プレッシャーを背負い走り続ける人。
昔と同じじゃいられない、でも走ることはやめられない。
そんな選手たちの気持ちの揺れは読んでいる方も身につまされる、というのはおこがましいか。
また、なんといっても誓の姿勢が熱い。
本人は内向的で感情を派手に出さないのだが、どんな状況下でもエースのためアシストに徹する姿は、「熱い」としか言いようがない。特に今作品での終盤、二コラのためにアシストとして放つ言葉。
自分が同じ立場だったらこれ、言えないですよ。
誓の選手としての時間は限られてきているのだけれど、それがどんな終わりを迎えるのか。
それを見届けるまでは、読み続けないわけにはいかない。
そう、思わせてくれる。
メネンコはちょっと最低ですね。
いや、それによって作品が落ちるとかではなく、必要に応じてそういう人物として描いているのは分かりますけれど。
誓にも良い人がいても良い、というかいないのも不自然。ヒルダがそうなのか、濁されているので次回にちゃんと続いて!
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