【作品情報】
作品名:あれは子どものための歌
著者:明神しじま
ページ数:281
ジャンル:ミステリ―、ファンタジー
出版社:東京創元社
おススメ度 : ★★★★★★★☆☆☆
ファンタジーの世界観の良さ度 : ★★★★★★☆☆☆☆
こういう人におススメ! :ファンタジー世界でのミステリ―に興味あり
料理人のキドウは異国の地で、8年前に飢饉に苦しむ祖国を揺るがした、ある事件で出会った因縁の相手・カルマと再会する。
彼らが口にするのは、事件解決の際に奇策を弄した、行商人・フェイとの思い出話。
しかし、新たな疑問がキドウの中に生まれる。
「あのとき祖国で、本当は何が起こっていたのか?」。
真実を知ろうとするキドウに、カルマは奇妙な寓話を語り出す。
「不思議なナイフで自らの”影”を切り離した男の物語」だ。
物語の幕が下りるとき、8年前の事件の驚愕の真実が浮かび上がる
架空の国で繰り広げられる、短編連作。
ミステリ―要素もあるけれど、ファンタジー色も強い。
とはいえ、ファンタジー要素で謎を解決とかではなく、ミステリーはあくまで論理で見せてくれている。
ただ、そのミステリーが主かというとそんな感じでもない。
各短篇の中で繰り広げられるのは、この世の理に背く願いを叶える者ワジによって与えられた能力と失ったもの。
それらに翻弄されるように生きていく人の姿を描いている。
力を得るためには、大事なものを失う必要がある。
それでも、その力が必要なのか。
そして代償とともに得られた力が、果たしてその人を幸せにするのか。
得られる能力は、必ず賭けに勝てる力とか、若返りの能力とか、まさにこの世の理に背く願いばかり。
その能力を軸にしたミステリーはなかなかに楽しめる。
どうしてそうなったのか。
その能力を活用して、どうなったのか。
別にミステリーとして考えなくても、話しとしても楽しめる。
中世ヨーロッパ的な世界を思わせる物語の中、好きな話も出てくるのでは。
個人的には表題作が一番楽しめたかな。
ファンタジーの世界というのは、その世界観を理解し馴染むまでに時間を要するモノ。
それでいてミステリ―というのは、ミステリー好きの人だと意外と相容れづらかったり、逆にファンタジー好きの人からすればファンタジー色が物足りなかったり、そういうのが出てくるかもしれない。