【作品情報】
作品名:ヒポクラテスの試練
著者:中山七里
ページ数:312
ジャンル:ミステリー
出版社:祥伝社
おススメ度 : ★★★★★★★☆☆☆
パンデミック度 : ★★★★★★☆☆☆☆
こういう人におススメ! : 法医学ミステリーと聞いて興味惹かれる
偏屈だが解剖の腕は超一流の光崎藤次郎教授が率いる浦和医大法医学教室に、城都大附属病院の内科医・南条がやって来た。
前日に搬送され急死した前都議会議員・権藤の死に疑問があるという。
肝臓がんが死因とみられたが、九カ月前に受けた健康診断では問題がなかった。
捜査に駆り出された埼玉県警の古手川は、権藤の甥が事故米を使って毒殺を目論んだ証拠を掴む。
しかし、光崎が司法解剖から導き出した答えは恐るべき感染症だった。
直後、権藤の周囲で新たな不審死が判明。
感染源特定に挑む新米助教・栂野真琴が辿り着いた驚愕の真実とは?
法医学ミステリー「ヒポクラテス」シリーズ待望の第三弾です。
意外とまだ第三作までだったのですね。
今回取り扱うのはパンデミック!?
いつも通り、「死体は嘘をつかない」ということで、遺体解剖から事件の真相を探り当てていく光崎教授。
しかし今回持ち込まれたのは、本来なら事件性がないと思われる肝臓がん。
ただし、数カ月前の定期検診では何の異常もなく、急に肝臓がんを発症し死に至るのはおかしいということで持ち込まれた案件である。
肝心の遺体を解剖すると、思いがけない事実が発覚する。
肝臓がんだと思っていたが、実はそこには寄生虫がいて、感染症による死だと判明した。
となると感染源がいるはずで、そこを特定しない限りは同様の事象が他にもあるかもしれない。
ということで今作では今までのシリーズと少し様相が変わった長編の作りになっています。
更に感染症の特定のため、真琴はアメリカに飛ぶ!
相変わらず読み応えのある作品で、今回はパンデミックに話しを広げています。
もしかしたら本当にこういうこともあるかもしれない?
そう思わせてくれる部分とフィクションの部分の融合が上手い感じに展開されている。
光崎教授のキャラクターが立っているのはもちろんだし、その手足となって動く真琴、古手川、キャシーといったところもそれぞれ性格、役割が異なるので面白い。
事件を追い、感染経路を追う。
その中で分かってくることと分からない事。
同じ感染症の疑いのある人間たちが、自分の命がかかっているのに、頑なまでに事実を隠そうとする事件の裏。
人間の汚さというものも見せてくれる。
シリーズが好きな人なら、問題なく楽しめると思われます。
一つの大きな話になるのは、それはそれで面白い。
でもこのシリーズは、個人的には短編積み重ねの方が好きな気がした。
結局、本作では解剖によって分かる事実は一つだけなので、それが物足りないのかも。