【作品情報】
作品名:白昼夢の森の少女
著者:恒川光太郎
ページ数:288
ジャンル:SF、ファンタジー
出版社:KADOKAWA
おススメ度 : ★★★★★★★☆☆☆
恒川さんの世界に浸れる度 : ★★★★★★★★☆☆
こういう人におススメ! : ダークなファンタジーを楽しみたい
人間の身体を侵食していく植物が町を覆い尽くす。
その植物に身をとらわれた少女は何を思うのか。
独特の世界観で読者を魅了してきた恒川光太郎氏。
その恒川さんの、今まで未収録だった作品を集めて一冊に仕立て上げた短編集。
SF、ホラー、ファンタジー。
そのどれでもあり、どれでもないような、そんな不思議な一冊。
未収録だった作品を集めたということで、ジャンルや雰囲気も種々多様で、色々な方向で楽しめる。
短い作品は本当にほんの数ページだったりで、そういった意味でもバラエティに富んでいる。
基本的には空想の翼を広げていったファンタジーに、どこかダークな雰囲気を混ぜ合わせたもの。
■白昼夢の森の少女
表題作。
謎の植物によっておおわれてしまった町。
そこにいた人々もかなりの割合でその植物にとらわれて植物と同化してしまう。
植物に同化した人たちはそれぞれ意識を共有して生き続けることが出来る。
そんな世界で少女が経験することは?
■銀の船
小さな島ほどもある、空を飛ぶ船。
その船に乗ることが出来るのは限られた人だけ。でも、一度乗ると人ではない存在になり、元いた世界に戻ることはできない。
老いず、食欲も性欲も無く、様々な時代と場所を飛び続けるその船に乗った一人の少女。
船の上で何を感じ、何を思い、どのような結論を出すのか。
自分だったら船に乗っただろうか。
乗ったらその後、どうしただろうか。
そういうことを考えずにはいられない。
■傀儡の路地
都市伝説めいたホラー系。
謎の女が口にしたこと、それを聞くと必ずその内容に従った行動を取ってしまう。
それがゆえに心休まらない日々。
でも実は、心の奥底で自分が思っていることなのかもしれない・・・・?
どの作品も、どこか物悲しさというか、切なさを思い起こさせる。
読みやすく、さくさくと読み進めていくことが出来る一冊。
初期の作品が好きだという人にとっては、物足りないと感じてしまうかもしれない。
実はかくいう私もその分類に入る。
なんというか、各作品に物語の奥深さを感じないというか。
気軽に楽しめるといえばよいですが。