波のプールの波打ち際に、見なれたお下げを見かけて近寄っていくと、すかさず由乃の方も祐麒の姿を認めて、わざとらしくしかめ面をしてみせる。
「何よ、エッチな人は近づかないでくださいな」
しっしと、手を振る。
隣にいる蔦子は苦笑いをしている。
「なんだよ、いつまでも」
「きゃー、何されるか分からないわ、逃げよう蔦子」
「あ、ちょっと由乃」
きゃあきゃあと、笑っているんだか悲鳴をあげているんだかよく分からないが、由乃と蔦子の二人は波に向かって逃げてゆく。ここは追いかけるべきだろうと、祐麒もすぐに後を追いかける。
波に逆らうようにして進んでいく。足首くらいの深さからすぐに脛まで水につかり、膝の高さ、腿までと水位はあがっていく。ただでさえ水の抵抗があるし、加えて波が正面から沸き起こってくるので、そうそうスピードが出るわけもない。祐麒自身も本気の力で追いかけているわけではないので、すぐには二人との距離は縮まらない。
「あはは、こっちまでおいでー、だ」
由乃が笑いながら、手で水をはねかけてくる。飛び散る水しぶきは太陽の光を受けて、宝石のようにキラキラと輝いている。蔦子もならったように水を盛大にかけてきて、二人からの攻撃と、プールが巻き起こす波にもまれ、進むこともままならない。
「こら、いい加減にしろっ」
負けずと両手で水をかきあげると、二人はまた黄色い声をあげて逃げ出す。さすがに奥の方までやってくると水の抵抗も大きく、女の子二人はなかなか前に進まなくなり、すぐ後ろにまで追いついたところで。
「きゃあっ!?」
悲鳴があがった。
単に、波にのまれたとかだろうと思ったが、次の瞬間、祐麒は体に衝撃を受けた。